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平成十九年五月十日提出
質問第二一八号

国際協力銀行が二〇〇五年三月三十一日にマレーシアのパハン・セランゴール導水事業に対し行った円借款融資に関する質問主意書

提出者  前田雄吉




国際協力銀行が二〇〇五年三月三十一日にマレーシアのパハン・セランゴール導水事業に対し行った円借款融資に関する質問主意書


 標記事業に係る円借款融資について、以下政府に対し質問する。

一 同事業に関する融資の実施状況について
 (ア) 二〇〇五年三月三十一日に融資を決定しているが、それ以降国際協力銀行は二年間融資を実施していない。これまで同事業に対し融資を実施していない理由は何か。
 (イ) 近々、国際協力銀行が同事業に関する最初の融資を実施する予定であるとの情報があるが、それは事実か。
 (ウ) (イ)が事実であれば、何月何日を予定しているのか。また、その予定融資額はいくらか。
 (エ) (イ)が事実であれば、それはエンジニアリングサービスへの融資か。エンジニアリングサービスであるならば、エンジニアリングサービスの内容を明らかにせよ。
二 入札に関して
 (ア) 国際協力銀行は、同事業の入札に関して、入札の透明性を確保するために第三者委員会を設立したか。設立したとすれば、その委員会の委員は誰か。また、その委員会の役割、権限を示せ。
 (イ) (ア)で述べた委員会の設立は、国際協力銀行とマレーシア政府との同事業の融資契約の条件に含まれているか。
 (ウ) 第三者委員会は、エンジニアリングサービスの入札作業に関してどのようにその入札が適切に行われていることを確認したのか。その方法を示せ。
三 事業の規模縮小に関する事実の確認
 (ア) 同事業のうち、ケラウダムに関しては当初その最大供給レベルが九十立方メートルであったが、現在は八十五立方メートルに規模が縮小されたと理解しているが、その理解で良いか。また、規模が縮小されたとすれば、その理由は何か。
 (イ) (ア)において、規模が縮小されたことが事実ならば、それによって同事業の総事業費も減少したはずであるが、現在の総事業費はいくらか。また、規模縮小前との総事業費の差額はいくらか。
 (ウ) その他、事業規模縮小に伴い変化したことは何か。
四 現地での反対運動に関して
 (ア) 二〇〇七年二月三日、マレーシアのベントンにて、Lakum Forest Reserve Rehabilitation Action Committee が主催し、同事業に関する反対集会が開催され、五百人もの事業用地付近の住民が集まった。集会では、水没予定地であるラクム森林保護地域の動植物への影響、その影響緩和策、同事業による洪水の危険性の増大に関する懸念が挙げられた。さらに、ケラウダムの建設の非合理性やそれに変わる代替案の検討が主張され、ケラウダムの建設を中止すべきであるとした。国際協力銀行は、マレーシア政府が同集会で挙げられた必要性及び環境影響に関する懸念に対し適切かつ十分に住民へ説明し、さらに住民が納得したことを確認してからでないと、融資の実施をするべきではない。二月三日以降、マレーシア政府が同集会の主催者及び参加者に対して、前記の懸念についてなんらかの説明を実施したことを、国際協力銀行は確認しているのか。確認したとすれば、マレーシア政府が説明を実施した日時、場所、説明の方法、説明の内容を述べよ。
 (イ) 二〇〇七年三月、(ア)で述べた懸念とほぼ同様の趣旨の書簡が、約五千人もの署名と共に在マレーシア日本大使館に提出されたと理解しているが、四月十九日現在、日本政府として未だその書簡に返信していないことを署名提出者に確認した。同書簡に対し、真摯に返答し、署名した約五千人ものマレーシア国民への説明責任を果たすべきであるが、いかがか。
五 先住民族の移転問題
 (ア) 同事業によって予定されている先住民族の住民移転者数は、二〇〇〇年八月の同事業の環境影響評価報告書では六十一世帯、三百二十五人であるとされていた。しかし、二〇〇六年四月十三日にマレーシアのベントンで開催された会合において、マレーシア国政府の先住民問題担当局(JHEOA)はテムアン八十五世帯、チェウォン十一世帯の、合計で九十六世帯(五百二十人)が移転対象となっていると発表している。二〇〇七年四月現在の先住民族の住民移転世帯数、移転者数を示せ。またテムアンとチェウォンの内訳それぞれを示せ。また、そのうち移転同意書に署名したのは何世帯か。
 (イ) 移転世帯数が(ア)のように増加している要因は何か。増加要因の一つは、チェウォンの居住区が当時は含まれていなかったことが挙げられると理解しているが、その理解で良いか、また、それ以外の理由があれば、それらの要因も示せ。
 (ウ) テムアンの居住区は海抜百二十四メートルにあると理解しているが、正しいか。もしも、この数字が正しくなければ、国際協力銀行が把握している数字を示せ。
 (エ) チェウォンの居住区は海抜二百十三メートルにあると理解しているが、正しいか。もしも、この数字が正しくなければ、国際協力銀行が把握している数字を示せ。
 (オ) 現在のダムの最大供給レベルが八十五立方メートルであるから、(ウ)及び(エ)の数字が右記の通りならば、オランアスリが移転する必要はないと考えるが、いかがか。先住民族チェウォンとテムアンの居住区は、同事業によって水没はしないが、移転の対象となっている。しかし、テムアンの居住区の近くにあり、海抜二〇三メートルの所にある Felda Lembah Kelau の住民は移転の対象となっていない。Felda Lembah Kelau の住民が移転する必要がない理由を示せ。
 (カ) テムアンの居住区とケラウダムとの水平距離、チェウォンの居住区とケラウダムとの水平距離、また、Felda Lembah Kelau とケラウダムとの水平距離をそれぞれ示せ。
 (キ) 先住民族の移転対象者の大多数は、数年前に移転同意書に署名したと理解しているが、それは、マレーシア政府に移転を強要され続けた要因が主にあり、同事業やその影響、さらに補償に関する情報を適切かつ十分に理解した上での自発的同意ではないとの、マレーシアの非政府組織オランアスリ問題センターのコリン・ニコラス博士の指摘がある。また、先住民族の移転対象者は自らが署名した同意書の複写版を所持しておらず、これは遺憾なことである。マレーシアの法律がどのようなものであろうとも、国際協力銀行が支援する事業に関連して発生する移転であれば、その移転同意書に署名した者は複写を受け取る権利があると考えるがいかがか。
 (ク) 国際協力銀行は、マレーシア政府が移転対象者の同意書への署名を取得するにあたり、移転対象者に、いつ、どのような情報を、どのような形式で提供したことを確認しているのか。
 (ケ) 国際協力銀行は、二〇〇五年三月二十五日及び二〇〇五年四月十四日付けのオランアスリ問題センターのコリン・ニコラス博士への書簡において、「オランアスリは移転の有無を選択できる権利がある」と述べている。一方、二〇〇七年四月十八日及び十九日の聞き取り調査の結果等によると、チェウォンの住民、またテムアンの住民にも署名はしてしまったものの移転を望んでいない住民がおり、またそれらの住民は、移転に関する選択権があることを現在も知らされていない。国際協力銀行として、二〇〇五年三月以降、マレーシア政府がこれらの先住民族に対し「移転の有無を選択できる権利がある」ことを適切に説明したことを確認すべきであるが、いかがか。万が一確認できたならば、いつ、誰が、どこで、どのような方法でマレーシア政府は「移転の有無の選択権が先住民族にある」ことを先住民族に対し説明したのか示せ。
 (コ) 先住民族の移転の有無を選択できる権利が確保されない限り、国際協力銀行は融資を開始すべきではないと考えるがいかがか。
六 補遺版環境影響評価に関して
 (ア) 同事業に関しては、環境影響評価書では調査不十分とされた植物相、動物相、川に生息する魚類に関し、二〇〇三年に補遺版環境影響評価が出ている。しかしながら、補遺版の環境影響評価に関してはマレーシア国民からの意見を受け付けていないと理解しているが、その理解で良いか。
 (イ) (ア)に関し、もしも受け付けたならば、いつ、どこで、どのように公開したのか。
七 事業の必要性と日本政府の説明責任に関して
 (ア) マレーシアでは、四で述べた住民による同事業への反対運動のみならず、テレビ、新聞などでも同事業の必要性に関する懸念が多く報道されている。例えば、同事業や国際協力銀行の問題を六回にもわたり放映したニュース番組「Bulletin UTAMA」では、二〇〇七年二月十七日に、「国際協力銀行が計画した事業である同事業は費用が高い上、環境への影響が大きすぎるため、他の代替案を探すべきである」という、大学教授のインタビューがある。また、三月二日の同番組では、複数のマレーシアのコンサルタントが、国際協力銀行が計画した同事業よりも安価に目的を達成できる事業があるということや、不必要な事業をどうして進めなければいけないのかということを主張している。これらのことからも読み取れるように、同事業は国際協力銀行が半ばマレーシア政府の意図を鑑みずに進めているという印象まで、マレーシア国内にはある。同事業に対し円借款を供与することによって、マレーシアにおける日本の印象を悪くし、ひいては日本の国益をも損なうことになると考えるが、いかがか。また、日本の国益を確保するためにも同事業の代替案の検討を再度実施するべきではないか。
 (イ) (ア)のように、現地では同事業の代替案の検討を求める強い声があるにも関わらず、その後、同番組のある担当者はケラウダムに批判的な報道をすることをマレーシアの国家より禁止されてしまい、今後はケラウダムに関する報道を一切できなくなった。このように表現の自由が制限され、民主主義が確立されていない国家における事業に対して国際協力銀行が融資する際には、国際協力銀行はマレーシア政府だけではなく、マレーシア国民からの意見を直接聞き、それを事業実施に反映する必要があると考えるがいかがか。
 (ウ) (イ)のように、日本政府が供与する円借款を原因として、報道の自由が規制されるようなことがあってはならない。日本政府は、マレーシア国政府に対し、ケラウダムに関する報道規制を解くように主張するべきではないか。
 (エ) 民間人のみならず、マレーシア国ペレック州政府もセランゴール州政府に対して、同事業と同等の水供給が可能で、建設費七億リンギットという低コストで、かつ、環境への影響が同事業よりも小さい代替案を提供していると理解している。マレーシア国政府がペレック州提案の代替案を始めとした同事業の代替案の検討を実施したことを、国際協力銀行は確認したのか。代替案の検討を実施したことを確認したのであれば、その方法、文書があれば文書名、検討時期、その検討方法、検討内容、マレーシア国内における検討内容の一般公開状況に関して示せ。
 (オ) 右記のように、円借款を供与するにあたり、同じ目的を果たす、より安価な代替案がマレーシア国内の官民から出ている。国際協力銀行として、同事業への融資を中止し、再度一から代替案を検討することをマレーシア政府に求める、また、その猶予を与えることが必要であると考えるがいかがか。
 (カ) マレーシアにおいて必要性及び代替案の検討に関する議論がありながら、マレーシア政府は同事業の必要性を検証した「国家水資源調査」を非常に制限された形でのみ公開しており、日本政府もその必要性を検証した「案件形成促進調査」を公開していない。このように我が国の政府開発援助に関しマレーシア国民より事業に関する強い懸念が挙げられていながら、日本政府また国際協力銀行がその必要性に関して十分な説明責任が果たせないならば、同事業に対する融資を中止すべきであるが、いかがか。
 (キ) 同事業の必要性及び代替案を、マレーシア国民の参加及び透明性を確保した形で再度調査、議論し、その上で同事業が必要であるという結論が出た場合のみ、国際協力銀行は同事業に対して融資すべきではないのか。

 右質問する。



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