答弁本文情報
平成十九年五月十八日受領答弁第二一八号
内閣衆質一六六第二一八号
平成十九年五月十八日
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員前田雄吉君提出国際協力銀行が二〇〇五年三月三十一日にマレーシアのパハン・セランゴール導水事業に対し行った円借款融資に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員前田雄吉君提出国際協力銀行が二〇〇五年三月三十一日にマレーシアのパハン・セランゴール導水事業に対し行った円借款融資に関する質問に対する答弁書
一の(ア)について
国際協力銀行は、二千五年三月三十一日にマレーシア政府との間で「パハン・スランゴール導水計画」(以下「本計画」という。)に係る借款契約に調印した。その後、同借款契約の発効に係る手続及びマレーシア政府によるコンサルタントの選定作業が行われてきており、現在まで貸付けを実行するには至っていない。
現在、マレーシア政府がコンサルティング・サービスに係るコンサルタントの選定作業を行っているところであり、貸付け時期及び貸付け金額については確定していない。また、コンサルティング・サービスの内容は、本計画の詳細設計及び施工監理等となっている。
御指摘のような第三者委員会は設置されていない。コンサルタントの雇用は、国際協力銀行のコンサルタント雇用ガイドラインに従って実施されることになっており、マレーシア政府が選定を行った後、国際協力銀行が選定の妥当性について確認することとしている。
マレーシア政府の決定により、水没地域を減少させるため、ダム堤の高度を海抜九十メートルから海抜八十五メートルに引き下げたと承知している。当初の総事業費は千百五十五億円となる見込みであったが、この変更に伴い、ダム関連工事費及び用地取得費が約五十五億円減額となった。他方、鋼材価格が上昇したため、総事業費は約千百七十一億円となったと承知している。これは規模縮小前と比べ約十六億円の増額となっている。また、ダム堤の高度の変更により、水没地域が減少したため、フェルダ・ケラウの住民は移転の必要がなくなったと承知している。
二千七年二月、御指摘の団体が本計画に関する反対集会を開催し、また、在マレーシア日本国大使館に書簡及び署名を提出したことは承知している。国際協力銀行では、マレーシア政府が同集会の主催者及び参加者に対して何らかの説明を行ったか否かについては承知していない。
本計画を検討するに当たっては、本計画の必要性及び環境面等の影響について十分考慮しなければならないと考えているが、本計画はマレーシアの水需要を満たし、もってマレーシアの経済社会開発を促進する上で必要なものであると考えている。また、環境面等の影響に関しても、マレーシア政府が環境影響評価を適切に実施し、我が国政府及び国際協力銀行の職員の出席を得たモニタリング会合を通じて住民に対して説明しており、マレーシア国民に対する説明責任は適切に果たされていると考えている。
二千七年四月現在、移転の意向の有無を問われている世帯数は、テムアンにおいて八十五世帯及びチェウォンにおいて十一世帯であり、そのうち、移転同意書に署名したのはテムアンにおける八十二世帯であると承知している。
移転世帯数が増加した理由は、当初、チェウォンの居住区が含まれていなかったことに加え、結婚による分家、同居住区への転入であると承知している。
国際協力銀行では、テムアンの居住区は平均海抜九十二メートルにあると承知している。
国際協力銀行では、お尋ねの情報について承知していない。
ダム堤の高度が海抜九十メートルから海抜八十五メートルに引き下げられたことに伴い、フェルダ・ケラウの居住区は水没しないこととなったため、移転する必要がなくなったものと承知している。他方、オランアスリは居住区の水没いかんにかかわらず、生活基盤となる耕作地の一部が水没するため、移転を希望する住民が存在するものと承知している。
テムアンの居住区とケラウダムとの水平距離は約十キロメートル、チェウォンの居住区とケラウダムとの水平距離は約十二キロメートル及びフェルダ・ケラウの居住区とケラウダムとの水平距離は約十三キロメートルであると承知している。
本計画を検討するに当たっては、影響を受ける住民の権利が十分配慮されなければならないと考えているが、自らが署名した移転同意書の複写版を所持する権利については、マレーシアの国内制度に係るものであり、お答えすることは差し控えたい。
国際協力銀行は、マレーシア政府が住民に対して累次説明を行い、二千四年六月二十四日にテムアンのオランアスリの八十四世帯のうち、八十二世帯が移転同意書に署名したと承知している。また、同銀行は、マレーシア政府がオランアスリに対し、冠水面積、ダム堤の高度の変更及び移転計画の概要を説明したほか、署名前には移転の有無を選択できる権利があることを説明したと承知している。
マレーシア政府が二千三年八月にクアラルンプールにおいて、ワークショップを開催し、補遺版の環境影響評価に関するマレーシア国民との意見交換を行ったと承知している。
本計画は、マレーシア政府から円借款を供与するよう要請があったもので、マレーシアの水需要を満たし、もってマレーシアの経済社会開発を促進する上で必要なものであり、環境面等の影響も考慮し、また、我が国とマレーシアとの関係の一層の緊密化の必要性等を勘案した結果、円借款の供与を決定したものである。また、マレーシア政府は、本計画に加え、地下水の開発、漏水対策の実施、他の地域からの導水等の代替案を検討した結果、水資源量、コスト等の面から本計画が最善であるとの結論に至ったものと考えている。なお、この検討のための文書のうち、環境影響評価報告書は、一般公開されたと承知している。
マレーシア政府が住民、NGO、事業関係者等の参加を得て開催するモニタリング会合に我が国政府及び国際協力銀行の職員が参加しており、マレーシア国民の声を直接聴く機会は設けられていると考えている。
また、マレーシアにおいて、我が国が供与する円借款を理由として報道の自由が規制されているとは承知していない。
国際協力銀行が借款契約調印時に本計画の必要性、妥当性、成果の目標、環境社会配慮面での審査結果等を記載した「事業事前評価表」を公表する等しており、説明責任が果たされるよう努めている。