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平成十九年六月十九日提出
質問第四〇二号

ITの本格的活用に対する政府の考えに関する質問主意書

提出者  滝  実




ITの本格的活用に対する政府の考えに関する質問主意書


 六月十二日に発表された基本方針二〇〇七(原案)(以下「基本方針」という)には、政府はIT革新として「ITの本格的活用のため、社会横断的なIT基盤を整える」とある。日本が得意とするITを様々な分野で本格的に活用することにより、日本経済は大きく発展する可能性を秘めている。これに関連して質問する。

一 これまでITは、人間の生活を豊かにしてきたし、今後も更に豊かにしてくれるものと期待できる。したがって、国を豊かにし、国民を幸福にするためには、政府も民間もできるだけ多くの分野で積極的にITを活用していくべきだとの考えに政府は異存がないであろう。
 そこで、建築業におけるITの利用を例として問題提起してみよう。耐震構造をシミュレーションによって分析できるようになったからこそ、高層ビルの建設が可能になったのである。確かに耐震構造モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものである。このため、現実のビルの建設を行うにあたっては、計算結果を参考としつつも、その時々の状況を十分に踏まえて総合的に判断する、つまり状況によっては耐震基準に違反するようなビルの建設も許されると考えているのか。
二 耐震構造のシミュレーションも、経済財政のシミュレーションも、事情は全く同じである。経済財政シミュレーションの結果、「経済成長を阻害し、デフレを悪化させ、財政を悪化させる」という結論が出たような政策は、採用するべきではないが、どう考えるか。
三 耐震構造のシミュレーションもそうであるように、経済財政のシミュレーションも、多くの専門家の間で、見解の相違が生じる場合もある。そういった場合は、あらゆる専門家に十分な発言の場を与え、感情論を排し、専門家同士でシミュレーションの詳細を公開し、徹底的に議論し、現在の日本において採用すべき最良の財政金融政策は何かについて、コンセンサスに到達するための努力をすべきであり、そういった場を提供するのが政府の役割だと考えるがどうか。
四 科学のあらゆる分野でも同様であるが、経済学における結論は誤差を伴っている。しかし、IT活用で、その誤差の幅も計算可能である。「試算には誤差を伴うため、状況によっては政府はその結論を無視できる」という考えは経済学もIT活用も全面的に否定する極めて危険な考えであり国の経済を衰退に導く恐れがあるが、どう考えるか。
五 例えば「基本方針」の二六頁においては、二〇一一年度における基礎的財政収支の黒字化や、二〇一〇年代半ばにかけての債務残高GDP比の安定的な引き下げについて言及している。これは内閣府の経済モデルの試算結果であるから、結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものであるという注釈を出さねばならないのに、それを意図的に行っていない。年金の将来見通しに関するシミュレーションでも同様である。国民は誤差については聞かされていない。政府自身の発表するモデル計算の結果の誤差は隠し続け、自らのモデル計算や、その解釈の問題点に関して追求を受けると誤差を持ち出して逃げる。こういった態度をとる限り、経済学とITを最大限活用して国の経済を発展させることはできないと考えるがどうか。
六 内閣府の試算「進路と戦略」で使われているモデルは長期の数値計算モデルと結合させた時系列モデルであり、特定の人たちが独自に定めた長期ビジョンに収束するようにしたものであるから、そのビジョンそのものが妥当なものであるかを議論する必要があるが、どう考えるか。
七 内閣府は平成十八年十二月二十日の経済財政諮問会議の配付資料として「平成十九年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(以下「基本的態度」という)を発表している。この結果と「進路と戦略」とは整合性がとれるようにしてあるのか。「進路と戦略」の方程式や乗数等は公開されているのだから、「基本的態度」の方程式や乗数も公開すべきではないか。
八 日本で、最もITの活用が遅れている分野は、政府の経済財政運営である。ITを活用し、国を最大限発展させ、国の借金を返す方法を本格的に経済モデルで分析し、それに従って経済財政運営が行われれば、数兆円あるいはそれ以上の膨大な利益を国にもたらすことができる。他のどの個別の分野でも、ITの活用で、そのように大きな経済効果が見込めることはあり得ない。経済財政諮問会議は、多くは経済分析理論の専門的知識を持たない非専属の人たちの集まりで、経済モデルに本格的に取り組むには全く不十分と言わざるを得ないし、諸外国に比べてもあまりにも貧弱である。政府は、内閣府の経済モデルの詳細な内容を公開し、それに対する外部の経済分析専門家の批判を真摯に受け止め、より信頼性の高い、誤差の少ないモデルにしていくための努力をすべきであって、密室のシミュレーションは国の経済を疲弊させてしまう恐れがあるが、どう考えるか。

 右質問する。



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