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平成十九年七月三日提出
質問第四五三号

日本・フィリピン経済連携協定等に関する質問主意書

提出者  保坂展人




日本・フィリピン経済連携協定等に関する質問主意書


 日本とアジア諸国の間では、二国間の経済連携協定あるいは自由貿易協定の締結が次々と進められている。日本・フィリピン経済連携協定は、二〇〇六年九月九日に署名され、日本では一二月六日に国会承認された。
 経済連携協定は、関税引き下げで貿易拡大を図る自由貿易協定を軸に、投資拡大、行政手続きの簡略化など包括的な取り決めであるが、日本・フィリピン経済連携協定が貿易の自由化対象としている物品リストには、医療廃棄物や都市ごみ焼却灰など有害廃棄物や放射性廃棄物も掲載されている。有害廃棄物の越境移動により主として途上国で甚大なる環境破壊や健康被害が引き起こされてきた経験から、国際社会が一九八九年に採択したバーゼル条約に我が国も加盟している。それにもかかわらず、同経済連携協定ではバーゼル条約の対象となる有害廃棄物や放射性廃棄物の貿易の自由化対象としていることで、途上国への有害廃棄物の新たな押しつけに道を開く危険性が高いと懸念される。一方、医療廃棄物や焼却灰などの有害廃棄物や放射性廃棄物については日本の輸入自由化項目にも含まれているが、日本は現在でさえ国内で廃棄物の不法投棄や処分場残余年数低下の問題を抱え、また国内で発生する放射性廃棄物は長期的な処理の見通しの不確かなまま毎年増加しているため、これらを敢えて輸入自由化項目に入れることは国内の現状と著しい不整合を来している。ついては、内閣としての答弁を求める。

一 有害廃棄物ならびに放射性廃棄物は、フィリピン側の輸入イニシャルオファーのリストに掲載されていたのか。イニシャルオファーのリストにはどのような項目があるのか明らかにした上で、個々の品目について説明されたい。
二 イニシャルオファーのリスト、修正オファーのリスト等交渉経過を示す資料に関する、市民団体による情報公開請求を却下した理由を、政府は情報公開法第五条第三号に該当するとしているが、日本・タイ経済連携協定においてはタイ側の公聴会で交渉中のリストが公開されている。このことによって、今までに、我が国が行っている他国もしくは国際機関との同種の交渉において、日本が交渉上の不利益を被ったといえる事実はあるか。
三 経済連携協定においてどのような物品が貿易自由化されるかは、きわめて近い将来の市場のあり方、ひいては国民の生活や企業活動をも大きく左右する問題であるにもかかわらず、自由化リストが、交渉開始に先立って、国会で説明されなかったのはなぜか。
四 有害廃棄物や放射性廃棄物が自由化リストに掲載された理由について、外務省は、“経済連携協定締結のためには両国の貿易する物品の「九〇%以上の自由化」が必要との考えから、他の自由化を回避したい品目を守るために、廃棄物も自由化品目に入れた”とこれまで説明している。しかし、経済産業省によれば「九〇%」を計算する際は、通常「最新の一年分の実績」を用いることになっており、最新の一年分の総貿易額を分母にして、自由化品目を積み上げ、過去実績額が九〇%以上の数値に達することを目安とすると説明されている。しかし、自由化品目リストに掲げられている有害廃棄物については貿易実績の無い(〇円)ものがほとんどであり、分子にあたる過去実績額にこれらを加算する意味はない。すなわち、九〇%を達成する為に有害廃棄物を自由化リストに入れたという政府の説明は、理由として成立していない。よって改めて論理的説明を求める。
五 北米自由貿易協定(NAFTA)では、バーゼル条約対象の有害廃棄物は自由化リストには掲載されていないというのは事実か。事実であれば、なぜ日本・フィリピン経済連携協定では有害廃棄物が外せないのか。
六 経済連携協定以前より、ほとんどの有害廃棄物には関税が課されていないが、今回自由化品目とされたことによって、貿易手続き上どのような簡略化が可能になるか、全て説明されたい。
七 日本・フィリピン経済連携協定の発効後には、バーゼル条約の対象となる廃棄物の定義や輸出入の手続きについて変更が生じるか、あるとしたらそれはどのようなことか。
八 医療廃棄物や焼却灰などの有害廃棄物や放射性廃棄物を日本の輸入自由化項目にも含めた理由を説明されたい。
九 自由化リストの見直しが行われる際には、そのプロセスは国民あるいは国会に公開するか。
十 フィリピンは、ここ数年日本からの中古のテレビについて香港に次いで第二の輸出市場であることが経済産業省資料等から示されている。が、再使用可能な中古品であって廃棄物ではないことを確認するために一台一台について性能テストは行っているか。
十一 行っていないとすれば、再使用可能性をどのような方法で担保しているのか。
十二 使用不可能であることが現地で確認された場合には、引き取り(日本への再輸入)を行うか。
十三 テレビを解体してブラウン管や部品などの使える部品を取り出して組み立て直す等がフィリピンで行われている場合はバーゼル条約の対象となる廃棄物であると政府は認識しているか。
十四 使用済みテレビの現地での使用寿命はおよそ何年か。
十五 十から十四に関して、使用済みパソコンについてはどうか。
十六 経済産業省は、平成一八年度「循環資源の輸出入のための二国間・多数国間協定等の現状及び課題に関する調査委託事業」に係る委託先を公募し、二〇〇六年九月二九日付けで神鋼リサーチ株式会社が受注した。
 その公募要領の中で、調査事業の目的として、下記のように述べている。
 ・・・これらの廃棄物の多くは、バーゼル条約の対象の有害廃棄物等に該当すると考えられるが、バーゼル条約締約国間での移動については、それぞれ各国の国内法で廃棄物の範囲が必ずしも同じでないこと、政府間での通告・回答に一定の時間を要することなどから、円滑に進まない場合がある。また、そもそもバーゼル条約締約国と非締約国との間では有害廃棄物の移動が禁止されている。このような問題の解決策として、他の国ではバーゼル条約第一一条に規定する二国間、多数国間若しくは地域的な協定又は取決めの締結を活用している・・・
 調査事業目的に関する上記の記述は、二国間協定による有害廃棄物貿易の推進とバーゼル条約崩しが国の意図であることを明確に示している。このことについて説明願いたい。
十七 国会での日本・フィリピン経済連携協定承認審議のためには、最終合意文書をもって国会で審議することが当然の手続きであるが、提示された一連の日本語文書にフィリピン側の輸入自由化リストが含められていなかったのはなぜか。
十八 日本が、バーゼル条約の改定条項を批准しない理由は何か。

 右質問する。



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