衆議院

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平成十九年九月二十八日提出
質問第六四号

国際海上コンテナの陸上輸送における安全対策に関する質問主意書

提出者  前原誠司




国際海上コンテナの陸上輸送における安全対策に関する質問主意書


 一九六六年に我が国に導入された国際海上コンテナは、毎年着実に取扱量が増え二〇〇六年には取扱量が、一、六六二万TEU(二〇フィートコンテナ換算)となり我が国は勿論、国際物流の主流になっている。
 国際海上コンテナ輸送は、戸口から戸口までの輸送を目的とした国際複合一貫輸送体制で、海上・港湾・鉄道・陸上輸送が一体となって運営される。発地で国際海上コンテナに積み込まれた貨物はドアをシールで封印するために、着地で国際海上コンテナから取り出されるまでの間、外部から直接貨物の種類と形状、積み付け状態を確認できない仕組みになっており、国際海上コンテナ後部にしかドアがなく後端でしか荷役が行えない。これが、国際海上コンテナ輸送の特徴である。
 この国際海上コンテナの安全輸送問題について、二〇〇一年六月に衆議院の国土交通委員会で質問した。その後、同年九月より関係省庁間で意見交換が行われ、二〇〇四年六月二十九日付で国土交通省自動車交通局長、海事局長、政策統括官の連名にて関係団体に対し、「国際海上コンテナの安全輸送に関する要請について」の指導文書が提出された。
 このことをふまえて、国土交通省自動車交通局は二〇〇五年一月から二月に、この要請内容がドライバーにどの程度浸透しているか、国際海上コンテナ輸送時にコンテナの内容物等をドライバーが知ることができない現状であり、積み付けの不備が原因となる片荷に気づいた経験等を把握することを目的に、国際海上コンテナを輸送するドライバーに対してのインタビュー調査が実施された。調査の結果、調査した四一八人中一二四人(二十九.七%)にしか要請文の内容が浸透していないことが明らかになった。
 さらには、内容物が分からず運送した六十九.四%、片荷に気づいた六十六.五%、重量超過に気づいた五十三.六%、荷崩れを経験した三十四.七%、コンテナを受け取った時にはじめて危険物と知った三十三%という実態も判明した。加えて、安全が十分に確保されないまま輸送した五十二.二%、ゆっくり気をつけて輸送したが五%と驚くべき事実が明らかになっている。また、国土交通省が公表した二〇〇一年から二〇〇四年までの四年間におけるコンテナ車輌の転覆・転落事故の割合は、国際海上コンテナが四十.七%で一般トラック全体の八.七%と比較して四.七倍になっている。
 このような実態が明らかになったため、国土交通省は、関係省庁、関係団体がそれぞれ取り組むことが望ましい具体的措置について、二〇〇五年十二月に「国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドライン」を提出した。
 しかし、この「ガイドライン」が提出された後も、国際海上コンテナ輸送における国民の生命・財産が奪われる重大な事故が連続して五件も発生したため、国土交通省自動車交通局は、二〇〇七年三月二十日付で「国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドライン」の徹底について通達を提出した。
 こうした、関係行政、民間関係者の努力の一方で、なお、国際海上コンテナ輸送の安全を確保するためには、現行法令(諸規制)などとの矛盾を早急に解消していくことが必要であり、コンプライアンスの徹底による、国際海上コンテナの安全輸送の確保についての社会要請も益々強まっており、政府としての緊急な対策の必要性が生まれている。
 よって、次の事項について質問する。

一 先にも示したように、国土交通省の調査で、国際海上コンテナの安全輸送に関する要請が徹底されていないことが明らかで、今日において一向に改善されていない。したがって、国際海上コンテナ陸上輸送の安全を確保するための「ガイドライン」の実効性を高める措置が必要である。一編の通達に終わらせることなく、具体的な措置を講ずる必要がある。
 荷主、船社、海貨事業者、海上コンテナ運送事業者、ドライバーにガイドラインの周知・徹底と遵守をはかる具体的措置、とりわけ、海上コンテナ運送事業者及びドライバーへの情報開示が重要と考えるが、政府としての見解を求める。
二 法令違反を放置することは、絶対にあってはならないことであり、貨物情報を持たないドライバーにその責任を課すべきではない。したがって、片荷、過積載などの不具合のある国際海上コンテナを公道に出さない措置が必要である。その措置として、コンテナターミナルゲート(アウト・イン各々)に偏載監視付重量計を設置し、未然に片荷・過積載を防ぐとともに、片荷・過積載コンテナを発見した場合は、コンテナターミナル事業者に権限を与え、コンテナターミナルで積み替えさせる措置を講ずるべきと考えるが、政府の見解を求める。
 仮にコンテナ内蔵貨物の積み替えが出来ないとすれば、法令違反を政府は認めることになるが、このことについての政府の見解を求める。
三 国際海上コンテナの安全は、交通運輸の分野だけの努力で対応できるものではない。なぜなら、物流にとって荷主の存在が絶対的であり、コスト圧力、限られたスペースに可能な限り多くの貨物を積んで輸送することを荷主は追求するわけで、その地位を利用して、要請に応じない事業者を変更するなどが事業者に強い圧力となることが必至である。こうしたことを背景として荷主が違反(過積載や片荷積み付け)の強要を行わないよう徹底することが必要である。そのために、荷主を監督する経済産業省が、ガイドラインの徹底を荷主に行うことが重要である。政府としてどのように考えているか、見解を求める。
四 国際海上コンテナ輸送は、文字通り国際複合一貫輸送がポイントであるがゆえに、日本の努力だけでは、その安全輸送が担保されない。政府として、国際機関に働きかけ「国際海上コンテナ安全輸送対策/強制力のある基準」を作る必要があると考えるが、政府はその認識を持っているか、そうであるならば、具体的にどのような措置を講じるのか政府の見解を求める。
 以上、いま政府が進めている対策をより具体化して、コンプライアンス、国民の生命・財産・安全の確保を推進することを強く求める。
五 さらには、国際海上コンテナにおけるISO基準と国際海上コンテナの国内輸送の問題について質問する。
 一九九八年に日本政府は、ISOフル積載での国内走行を認めた。具体的には、四〇fコンテナで、三〇.四八t、二〇fコンテナでは、当初の二四tから二〇〇三年一月二十四日には三〇.四八tに緩和した。このコンテナを牽引輸送する場合、それまでの現行二軸シャーシでは対応できないため、三軸シャーシでの輸送に変更になったが、関係団体からの要請により、政府は二〇fコンテナの二軸シャーシでの輸送を暫定的に二〇〇八年三月まで認める措置をとった。これは、シャーシの買い替え費用が莫大になるため、事業者の負担を軽減する措置である。
 ところが、一九九八年以降は、規制緩和による参入事業者の進出で過当競争に拍車がかかり、これに不況と荷主の物流コスト削減の要請も重なり、運送料金は低迷の一途をたどった。また、軽油価格の高騰や港湾地区の道路混雑、Nox(窒素酸化物)・PM(粒子状物資)法にもとづくトラクターの代替による負担等で、海上コンテナ輸送事業者はシャーシを買い替えるだけの体力がない状態であり、規制緩和の措置が正しい行政指導なのか見解を求める。
六 全日本トラック協会の調査では、二〇〇六年度で、トラクター一三、三一七台のうち、ISOフル積載対応のトラクターは四、八四八台(三十六.四%)、シャーシについては、三四、三三五台のうちISOフル積載対応シャーシは、三、一七一台(九.二%)しか導入されていない。このまま推移すれば、二〇〇八年三月以降は、ISOフル積載コンテナは、わずか三、一七一台(九.二%)で対応するか、違法なトラクター及び、シャーシで公道を走らざるを得なくなる。走らなければ、日本経済に多大な支障をきたすことは間違いない。このようなISOフル積載対応の国際海上コンテナ専用トラクター及びシャーシの長さと積載重量別台数の実態を政府は把握しているか、把握している内容を明らかにされたい。また、政府で把握している実態にもとづいてどのような対策を講じようとしているか、政府の見解を求める。
 政府は、この一〇年間暫定措置を行い、その間に買い替えを指導してきたが、先にも指摘したとおり、国際海上コンテナ運送業界の厳しい経営実態にあっては、そう簡単に設備投資ができる状況ではなかったし、むしろ、政府が一方的に政策変更してきたことに起因する問題であることを考慮すれば、政府の責任で違法状態が放置されることをなくしていくことが緊急に求められると考える。
 同様の事態が、一九七八年から一九八三年に起きた。長さ二〇f高さ八.六fのコンテナ(車輌全高三.九m)が全高規制三.八mを超えるため、海上コンテナ運送事業者はグースネックシャーシへの買い替えを余儀なくされ、政府の援助もないまま、六、五〇〇台、一二億円の投資で、海上コンテナ運送事業者にとっては大きな負担となった。また、一九八五年には、長さ四〇f、高さ九.六f(車輌全高四.一m)が導入された。四〇fコンテナ対応シャーシでは、技術的にグースネックシャーシにすることはできないと判断され、政府は、車輌全高規制を四.一mに緩和した。一九七八年に緩和されていれば、グースネックシャーシ買い替えへの負担は必要なかった。このように、国際海上コンテナ輸送では国際規格や国内の法規制が変わる度に車輌への設備投資が求められた。こうした、事例を充分に踏まえた施策の実現に向けて政府の見解を求める。
七 先にも述べたように、現状では、二〇〇八年三月末までに二〇fシャーシは勿論、ISO対応トラクター及びシャーシに買い替えることは中小零細事業者が多数を占める海上コンテナ業者では極めて困難であり、対策がとられなければ運送できないことにより日本経済に混乱を招くことになる。また、違反車輌での輸送が横行し現状以上に国民の生命・財産が奪われる重大事故が発生する可能性があり、したがって、違法状態を解消するために既存二軸シャーシを廃棄させ、政府が助成措置を講じISOフル積載対応トラクター・シャーシを購入させることが必要ではないか。政府としての見解を求める。
八 全日本トラック協会の調査では、二〇fの三軸二四t対応で合計七〇八台あるが、殆どが二四tのカウンターウェイト付シャーシである。また、三〇.四八t対応シャーシは殆どがタンクコンテナ専用でドライコンテナ用シャーシは五八台である。二〇f・四〇f兼用の三軸シャーシでは二〇fコンテナの三〇.四八tの輸送は出来るが、二〇f三〇.四八tも含め国際海上コンテナの特性である後端荷役はできない。荷役を行うには大型クレーンか大型リフトでコンテナをシャーシから降ろして荷役することになり、このように、二〇fでの三〇.四八tの輸送ができるように二〇〇三年に緩和したことは、大型クレーンなどを持つ特定の大荷主のためのものと考えざるを得ない。政府の閣議決定の内容だけが国内外の荷主によって身勝手な解釈をされることにより、二〇fでの三〇.四八tの海上コンテナが通常のシャーシで輸送されるという違法状態が横行している。このことは公共性の高い国際海上コンテナ輸送のあり方と国土交通省が提出した「国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドライン」の徹底に関する通達をも否定するものとなっている。こうした政府の措置と輸送実態の矛盾をどのように認識し、問題解消に努めようとするのか、政府の見解を求める。
九 七項の質問における助成措置が講じられたとしても、ISO対応車輌の生産が間に合わず、短期日のうちに違法車輌からの買い替えが実現できないという問題が発生する。したがって、現在の猶予期間を二年程度延長する措置を講じて、その間に、買い替えを進めていくべきではないか。政府の見解を求める。
十 次に、国際海上コンテナ輸送の環境整備問題である。先ごろ、アメリカで高速道路の橋が崩落する大惨事が起きた。これは、建設後の長い期間の車輌走行による疲労損傷が蓄積し、強度に限界がきたからだと報道された。日本の高速道路も同様のことが考えられ、今から四十三年前の東京オリンピックを機に建設がはじまったが、当時は今日のようなISOフル積載の国際海上コンテナ輸送はまったく想定されなかった。
 わが国における国際海上コンテナの道路輸送は、道路の交差点における旋回時の安全確保や橋の強度の事情から、事前に各道路管理者に道路通行許可申請を行い、許可された道路しか通行できない。ISOフル積載の国際海上コンテナは一般にいわれる高規格道路しか通行できない。走行予定道路から外れる場合、政府は「積み替え」を要請しているが、国際海上コンテナの特性(戸口から戸口までの国際複合一貫輸送で、関税法にもとづきコンテナのドアが封印され、税関の許可のない開封は違法行為)から、積み替えは不可能な実態がある。港湾から内陸部の工場等に国際海上コンテナを陸上輸送する場合、港湾から高規格幹線道路ネットワークを通行し工場の近くまで運べるが、荷受先道路が高規格道路でない場合は本来通行できない。海上コンテナ輸送業者とドライバーは荷主の要請により「特殊車輌通行許可違反」と知りながらも内陸部の荷主に国際海上コンテナを運んでいるが、このような実態について政府の見解を求める。
十一 前項の状況を踏まえ、「特殊車輌通行許可違反」とならないよう政府は荷主に対し、輸送ルートや適用トラクター・シャーシなどを指定して輸送依頼するよう指導すべきであり、同時に「特殊車輌通行許可違反」となった場合も荷主の責任として罰則を科す等の措置を定めて対応すべきと考えるが、政府としての見解を求める。
十二 ISOフル積載での国内走行可能な道路やインフラの環境整備が緊急に必要であり、具体的には、コンテナターミナルと荷受け地・荷出し地(例えば、荷主の輸出入貨物の保管倉庫)までの道路を高規格道路に整備することである。こうした、問題をただちに解消すべく、政府として具体的な施策、環境整備について見解を求める。

 右質問する。



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