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平成二十年五月二十六日提出
質問第四二四号

後期高齢者医療制度における保険料総額に関する質問主意書

提出者  山井和則




後期高齢者医療制度における保険料総額に関する質問主意書


 厚生労働省のホームページでは後期高齢者医療制度について、「高齢者ご自身の保険料は、制度全体にかかる費用の一割をまかなうものですが、これは、従来と同水準です」との広報がなされている。しかしながら、この制度の根幹に関わる「保険料総額は従来と同じ」との広報が、事実であるのかどうかに疑いをいだかせる厚生労働省作成の資料が存在する。そこで、後期高齢者医療制度における保険料総額について、以下質問する。

一 平成二十年度予算を見ると、後期高齢者医療制度については、平成二十年四月から平成二十一年二月までの十一ヶ月間において、医療給付費は九・九兆円であり、高齢者の負担する保険料は一・〇兆円で、確かに給付費の十%となっている。この給付費の十%をまかなう保険料は、低所得者に対する軽減措置前で一人あたり年額約八・四万円である。さらに、軽減措置後の保険料は一人あたり年額約七・二万円であり、軽減後の保険料によって給付費の約八・六%がまかなわれる。以上の理解に間違いはないか。もし間違いがあれば、教えていただきたい。
二 平成十五年二月三日に行われた全国老人医療担当課(部)長国民健康保険主管課(部)長会議に提出された厚生労働省保険局総務課資料(以下「総務課資料」とよぶ)を見ると、二十六頁に現在の後期高齢者医療制度の原案となったB案の財政試算の前提が記載されている。この記載には、B案すなわち後期高齢者に着目した保険制度を創設する案の試算の前提として、「保険料:給付費の十%、公費:給付費の五十%、各制度からの支援:給付費の四十%」とある。この試算の前提の内容は、現在の後期高齢者医療制度の制度の在り方と全く同じであると理解できるが、その理解に間違いないか。
三 総務課資料の二十九頁を見ると、B案の財政影響(平成十九年度満年度)との試算があり、現行制度では七十五歳以上の高齢者の負担する一人あたり保険料は六・三万円であり、高齢者医療制度創設後は八・七万円となって、一人あたり保険料は二・四万円引き上げられるとの結果が明記されている。また高齢者が負担する所要保険料総額は、現行制度では〇・八兆円であり、高齢者医療制度創設後は一・一兆円となり、〇・三兆円引き上げとなると明記されている。この事実に、間違いはないか。
四 政府は、三で述べた財政試算を、制度設計段階に作られた資料として基本的に妥当なものであると考えるか、それとも資料として利用価値のない杜撰なものであると考えるか。
五 三で述べた財政試算が正しいとすると、制度設計段階での計画では、後期高齢者医療制度の導入によって、所要保険料総額は〇・三兆円の引き上げとなるとされており、「保険料総額は従来と同じ」との広報は事実に反することとなる。そこで、四の答弁に応じて、次の@とAのいずれかに答弁いただきたい。
 @ 四の答弁において、三で述べた財政試算が制度設計段階に作られた資料として基本的に妥当なものであると答弁された場合には、七十五歳以上の高齢者が負担する保険料総額が〇・三兆円引き上げを意図した制度設計が行われていたことと、「保険料総額は従来と同じ」という広報とが、どう整合するかを、分かりやすく説明していただきたい。
 A 四の答弁において、三で述べた財政試算が資料として利用価値のない杜撰なものであると答弁された場合には、厚生労働省がなにゆえに、そのように杜撰な推計を全国老人医療担当課(部)長国民健康保険主管課(部)長会議に提出したのかを説明していただきたい。さらに、この財政試算のどこに間違いがあったかを明らかにするとともに、制度設計ないしは平成十八年の法案審議に当たって作成した正しい財政試算とその過程を、再検証可能な形で、提示していただきたい。
六 平成十七年五月二十五日に行われた第十五回社会保障審議会医療保険部会に提出された厚生労働省作成の「高齢者医療制度について」と題する資料(以下「医療保険部会資料」とよぶ。)の二十六頁を見ると、平成十九年度における七十五歳以上の国民健康保険被保険者の保険料負担は一人あたり七・三万円と推計されている。もしこの推計が、国民健康保険の低所得者に対する軽減後のものであれば、この推計と、現在の後期高齢者医療制度の一人あたり保険料七・二万円という水準は、ほぼ一致する。このことからすると、社会保障審議会における「現行制度における高齢者の負担水準を勘案して医療費の十%とすべき」との提言や、平成十七年十月十九日付の医療制度改革試案における「平均的には保険料水準は現行制度とほぼ同じで、年間七万円程度となる」との提案の内容は、後期高齢者医療制度の保険料を従来の国民健康保険の水準と同等にするとの意味であったとも理解できる。もしそうであれば、従来保険料を負担していなかった被用者保険被扶養者も含めた保険料総額の水準を従来と同等にするという政府広報とは異なり、被用者保険被扶養者が保険料を新規に負担した分だけ保険料総額が増加するように思えるが、政府の見解はいかがか。
七 医療保険部会資料の二十頁を見ると、平成十九年度における七十五歳以上の者の保険料による負担は、医療給付費の七・三%となるとある。この推計は、低所得者に対する軽減措置後の保険料に係る推計であるのか、軽減前の保険料に係る推計であるのか教えていただきたい。
八 七で述べた推計の結果は、私が十二に示した方法で行った平成十四年度の七十五歳以上の高齢者の保険料負担率の推計と一致しており、妥当なものではないかと考えられるが、政府は、七で述べた推計を、基本的に妥当なものであると考えるか、それとも資料として利用価値のない杜撰なものであると考えるか。
九 七で述べた推計が、仮に軽減後の保険料に係るもので正しいものであるとすると、後期高齢者医療制度の導入によって、七十五歳以上の高齢者の保険料による負担は、軽減後において医療給付費の七・三%から八・六%に引き上げられ、約一・三%の負担増が生じる。その結果、平成二十年度予算に従い後期高齢者に対する医療給付費を十・九兆円と仮定すると、七十五歳以上の高齢者の負担する保険料総額は、約千四百億円増加し、「保険料総額は従来と同じ」との広報は事実に反することとなる。そこで、八の答弁に応じて、次の@とAのいずれかに答弁いただきたい。
 @ 八の答弁において、七で述べた推計が基本的に妥当なものであると答弁された場合には、七十五歳以上の高齢者が負担する軽減後の保険料が、医療給付費の七・三%から八・六%に引き上げられることと、「保険料総額は従来と同じ」という広報とが、どう整合するかを、分かりやすく説明していただきたい。
 A 八の答弁において、七で述べた推計が資料として利用価値のない杜撰なものであると答弁された場合には、厚生労働省がなにゆえに、そのように杜撰な推計を社会保障審議会に提出したのかを説明していただきたい。さらに、この推計過程のどこに間違いがあったかを明らかにするとともに、正しい推計過程と推計結果を、再検証可能な形で、提示していただきたい。
十 「保険料総額は従来と同じ」という、制度の根幹に関わる政府広報の真実性についてわずかでも疑いが生じた以上、政府はその広報の根拠を、分かりやすく国民に提示する義務がある。そこで、平成二十年度において仮に後期高齢者医療制度が導入されなかった場合の老人保健制度の対象者について、被用者保険本人と被用者保険被扶養者と国民健康保険被保険者に分けて、制度別の人数推計を示していただくとともに、制度別の保険料総額および一人あたり保険料の推計、および全制度を通じた保険料総額と一人あたり保険料の推計を示していただきたい。また、国民健康保険については、低所得者に対する軽減措置前と軽減措置後に分けた保険料総額の推計も示していただきたい。さらに、以上の推計の根拠について、基礎となる資料の件名および概要を明示し、推計の過程を、十二で示すように再検証可能な形で、分かりやすく説明していただきたい。もし、以上の説明が困難であれば、政府広報は虚偽であると断定せざるを得ない。なお、平成二十年についての試算を行っていない場合には、制度設計時ないしは平成十八年の法案審議段階での推計で、政府広報が真実であることを示すものを教示していただいても差し支えない。その場合も、基礎資料・推計過程については、分かりやすく示していただきたい。
十一 後期高齢者医療制度の保険料については、年金からの天引きを原則とする徴収が行われている。こうした強制的徴収を行う負担額の根拠として、「保険料総額は従来と同じ」との広報が行われているにもかかわらず、それが事実に反するならば、とうてい国民の理解は得られない。もし、「保険料総額は従来と同じ」との広報が虚偽であるならば、制度そのものの撤回を避けることは出来ないと考えるが、政府の見解はいかがか。
十二 七で述べた医療保険部会資料二十頁の推計方法は、以下の方法で行ったと理解して間違いないか。もし、方法や採用した数値が異なっている場合や、私の用いた方法や数値に間違いがある場合には、正しい方法や数値を分かりやすく丁寧に教えていただきたい。
 @ 平成十四年度健康保険被保険者実態調査第一表から、七十五歳以上の被保険者は、政府管掌保険では十九万一千人で、その平均標準報酬月額は二十七万三千円。組合健康保険では二万六千五百人で、平均標準報酬月額は四十五万五千円である。平成十四年度の保険料率を八・五%として、保険料総額を推計すると、六百五十五億円となった。
 A 審議会資料二十九頁に、平成十四年度の市町村国保の一人あたり保険料負担額は、六・二万円とある。
 B 平成十四年度の七十五歳以上人口は、総務省統計局資料によれば一千四万三千人とある。平成十四年度の国民健康保険実態調査によれば、七十歳以上の国保加入率は七七・六六%とあり、七十五歳以上の国保加入者数は、七百七十九万七千人と推計される。これに一人あたり六・二万円を乗じると、保険料総額は、四千八百三十六億円となる。
 C 以上から、被用者保険本人保険料と国保保険料の合計は、五千四百九十億円となる。
 D 平成十四年度の国民医療費によれば、七十五歳以上の一人あたり医療費は八十一・九一万円。平成十五年度老人医療事業報告表十七によれば、平成十四年度の患者負担率は八・六七%。ここから、医療給付費は、七兆五千百三十億円となる。
 E 五千四百九十億円を七兆五千百三十億円で除すると、七・三%となった。

 右質問する。



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