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平成二十八年二月二十四日提出
質問第一四九号

海上自衛隊による民間船舶借り上げ及び民間船員の予備自衛官任用に関する質問主意書

提出者  照屋寛徳




海上自衛隊による民間船舶借り上げ及び民間船員の予備自衛官任用に関する質問主意書


 日本は海洋国家であり、私の暮らす沖縄県は周囲が海に囲まれた島嶼県である。
 我が国が海洋国家として繁栄していくためには、海運業の発展が欠かせない。海運業は、海洋国家日本の未来を拓く重要産業である、と断じても差支えないだろう。
 また、島嶼県沖縄にとって、海は「命の母」である。それ故、「隔ての海」ではなく「結びの海」として、諸外国との共存共栄の道を模索していかねばならない。
 海運産業の発展が海洋国家日本の命運を握る中、船員をはじめとする海運労働者らの労働条件の向上及び安全・安心な職場環境の確保・拡充は不可欠である。
 政府は、民間船舶船員(以下、民間船員という)を海上自衛隊の予備自衛官補として採用し、教育訓練を経た上で予備自衛官として任用するための費用等を平成二十八年度予算案に計上している。
 かかる政府方針に対し、全日本海員組合が平成二十八年一月二十九日付で「民間船員を予備自衛官補とすることに断固反対する声明」を発出し、次のように求めている。
 「政府が当事者の声を全く聞くことなく、民間人である船員を予備自衛官補として活用できる制度を創設することは、『事実上の徴用』につながるものと言わざるを得ない。このような政府の姿勢は、戦後われわれが『戦争の被害者にも加害者にもならない』を合言葉に海員不戦の誓いを立て、希求してきた恒久的平和を否定するものであり、断じて許されるものではない。」
 私は、全日本海員組合の右声明を強く支持するものである。
 民間船員を予備自衛官として任用することは、先の太平洋戦争において民間船舶の多くが徴用され、多数の船員が犠牲になった過去を想起させる。まさしく「事実上の徴用」に道を拓くものであり、断じて容認できない。
 全日本海員組合はじめ多くの国民が望んでいるのは、「戦争につながる海」ではなく「平和な海」に生きる海洋国家日本である。
 以下、質問する。

一 太平洋戦争に徴用され、物資輸送や兵員輸送等に従事した民間船舶・船員の隻数と人数及び当該船舶・船員のうち戦闘行為に巻き込まれて撃沈した隻数並びに犠牲となった船員の人数について死者、負傷者の別に明らかにした上で、かかる犠牲を招いた徴用に対する政府の見解を示されたい。
二 政府は、海上自衛隊予備自衛官を新たに養成するべく、予備自衛官補として民間船員を採用するための費用を平成二十八年度予算案に計上しているようだ。
 かかる費用の科目(いわゆる「目の区分」)及び金額並びに予備自衛官補として採用予定の民間船員の人数を明らかにした上で、予備自衛官補が受ける教育訓練の内容や日数、受け取れる手当等処遇などについて説明されたい。
三 大型の民間船舶を運航するには、船舶職員及び小型船舶操縦者法(昭和二十六年四月十六日法律第百四十九号)第四条乃至第十六条に基づく「海技士」の資格を持つ船員が必要であると承知している。
 @ 平成二十八年度に防衛省が借り上げ(契約)予定の民間船舶一隻を運航するにあたり、何人の「海技士」が必要だと考えているか、政府の見解を示されたい。
 A 「海技士」の資格を持つ海上自衛官及び元海上自衛官である予備自衛官の人数をそれぞれ明らかにした上で、民間船員を予備自衛官として任用する必要性について政府の見解を示されたい。
四 防衛省は、平成二十七年度において、新日本海フェリー株式会社(大阪市)の「すずらん」を年間契約で借り上げ、輸送船「はくおう」として運用しているものと承知している。「はくおう」は、昨年秋に実施された九州及び南西諸島における自衛隊統合訓練で、津軽海峡フェリー株式会社の「ナッチャンWorld」とともに自衛隊員や車両等の輸送業務に従事し、当該訓練にあたっては両社の船員がそれぞれの船舶を操舵したようだ。
 @ 防衛省・自衛隊が民間船舶を借り上げ、訓練等の目的で運用するようになったのはいつからか。その経緯及び法的根拠を明らかにされたい。
 A 防衛省が借り上げた過去三年分の民間船舶の隻数及び契約額並びに平成二十八年度に借り上げ(契約)予定の民間船舶の隻数及び予算(額)を明らかにした上で、民間船舶を活用することで得られる利点、生ずる欠点等について政府の見解を示されたい。
五 概して、雇用主(以下、事業者という)と被用者(以下、労働者という)が締結する雇用契約において、労働者は弱い立場に置かれている。したがって、防衛省と傭船契約を締結した事業者側が労働者たる民間船員に対し、予備自衛官補に志願するよう命じた場合、当該船員は従わざるを得ない状況に追い込まれる蓋然性が極めて高い。
 @ 防衛省が入札等を通じて事業者との間で傭船契約を締結するにあたり、当該事業者に対し、当該船員の予備自衛官補への志願を条件に付すようなことは断じてあってはならないと考えるが、政府の見解を示されたい。
 A 事業者が防衛省との間で傭船契約を締結するにあたり、当該船員が予備自衛官補への志願を拒否しても、事業者側から雇用契約上の不利益処分を課されるようなことは断じてあってはならないと考えるが、政府の見解を示されたい。
 B 防衛省は、私が懸念する右@及びAの事態を確実に防止するための手立て(制度政策)を講じているか、具体的に説明されたい。仮に、何らの手立ても講じていないのであれば、民間船員の予備自衛官補採用に踏み切るべきではないと考えるが、政府の見解を示されたい。
六 海上自衛隊が民間船員を予備自衛官補として採用する際、または、教育訓練を受けた後に予備自衛官として任用する際、自衛隊法施行規則(昭和二十九年六月三十日総理府令第四十号)第四十一条及び同条の二に定めるとおり、「宣誓文を記載した宣誓書に署名押印して服務の宣誓を行わなければならない」のか、政府の見解を示されたい。
七 海上自衛隊に予備自衛官として任用された民間船員が有事等で招集され、実際に予備自衛官として従事している状況において犯罪等の服務規程違反を行った場合、当該船員への罰則は、事業者側との雇用契約に基づくいわゆる「就業規則」に則ってなされるのか、それとも海上自衛隊の服務規程に則ってなされるのか、政府の見解を示されたい。

 右質問する。



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