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平成二十八年十月三日提出
質問第三五号

日本政府のイラク戦争への協力の検証に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




日本政府のイラク戦争への協力の検証に関する質問主意書


 先般提出した「日本政府のイラク戦争への協力の検証に関する質問主意書」(第百九十一回国会質問第一八号)に対する答弁書(内閣衆質一九一第一八号。以下「答弁書」という。)の内容に疑義があるため、改めて以下のとおり質問する。

一 答弁書では、イラクに対する武力行使は、「国際連合憲章第七章の下で採択された国際連合安全保障理事会の決議第六百七十八号、決議第六百八十七号及び決議第千四百四十一号を含む関連する安保理の決議により正当化されると考えている」と示されているが、これは、平成十五年八月一日に公布されたイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(「本法」という。)の第一条の「この法律は、イラク特別事態(国際連合安全保障理事会決議第六百七十八号、第六百八十七号及び第千四百四十一号並びにこれらに関連する同理事会決議に基づき国際連合加盟国によりイラクに対して行われた武力行使並びにこれに引き続く事態をいう。)を受けて」の条文を単に繰り返しただけのものであり、さらに本法は、平成二十一年七月に期限が切れ失効している。先般提出した「日本政府のイラク戦争への協力の検証に関する質問主意書」(第百九十一回国会質問第一八号)は、その後の状況の変化、たとえばイギリスのチルコット委員会報告などが出されたことなどを鑑みて、政府の本法制定時の判断を再検証することについて、政府の現時点での意思の有無を問うものであり、既に失効した法律の立法目的を答弁にそのまま引用することは全く誠意に欠けるとともに、直近の国際社会の趨勢を踏まえない稚拙な答弁と言わざるを得ない。改めて問うが、世界各国でイラク戦争の開戦当時の意思決定過程の調査、研究が進み、さらにイギリスでチルコット委員会の報告が公表された現時点においても、当時の日本政府の判断は妥当であったとする考えは変わらないのか。政府の認識を改めて示されたい。
二 答弁書では、「イラクは、十二年間にわたり、累次の安保理の決議に違反し続け」と示されているが、イラクが違反した「累次の安保理の決議」とは具体的にどの決議か。その決議の名称とともに内容を具体的に示されたい。
三 平成十五年三月二十日、イラクのフセイン政権に対して米英等が武力行使を開始したものの、正規軍同士の戦闘は同年中に終了し、同年五月にアメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領により「大規模戦闘終結宣言」が出て、その後、十年余りが経過した。関係各国は、当時のイラク戦争への協力を再検証し、開戦当時の判断に誤りがあったなどの結果を発表する中、日本政府は再検証する意思を表明していない。少なくとも、平成二十五年四月三日の衆議院の海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会において、岸田外務大臣は「イラクの大量破壊兵器が確認できなかった、この事実につきましては、厳粛に受けとめる必要がある」と答弁しているが、答弁書でいう「当時の日本政府の判断は、今日振り返っても妥当性を失うものではなく」と政府が判断する根拠は何か。具体的に示されたい。
四 安倍総理は、平成十九年四月二十四日の衆議院本会議において、「イラクが過去実際に大量破壊兵器を使用した事実や、国連査察団が数々の未解決の問題を指摘したこと等に鑑みれば、対イラク武力行使が開始された当時、イラクに大量破壊兵器が存在すると信じるに足る理由があったと考えております」「日本政府が対イラク武力行使を支持したのは、あくまで、累次の国連安保理諸決議及び国連査察団の累次の報告等に基づいて主体的に判断した」と答弁しているものの、鈴木宗男議員の提出した「イラク戦争開戦時の誤情報に係る米国大統領の認識に対する政府の見解等に関する質問主意書」(第百七十回国会質問第三一〇号)に対する答弁書(内閣衆質一七〇第三一〇号。以下「鈴木答弁書」という。)では、政府は、「二千四年十月七日に発表されたイラクの大量破壊兵器に関する米国中央情報局長官特別顧問による包括的報告、いわゆるイラク監視グループの報告によれば、イラクに大量破壊兵器が存在しないことは、ほぼ確実となったと判断されている。しかし、ブッシュ米国大統領が述べているのは、イラクの大量破壊兵器に関する米国政府自らの情報が結果として誤っていたことについてであったと承知しており」、「我が国の米国等によるイラクに対する武力の行使への支持は、飽くまで累次の関連する安保理の決議及びUNMOVIC等の査察報告等に基づいて自主的に判断したものであり、その判断は正しかったと考える」のは平成十五年のイラク戦争開戦当時の判断を述べているに過ぎず、政府が「イラクの大量破壊兵器に関する米国政府自らの情報が結果として誤っていたことについてであったと承知しており、我が国政府についてはそのような事情が無く」と鈴木答弁書で答弁していることは、平成十五年当時の「情報」と現時点の情報が異なっていることを認めていることに他ならない。平成十五年当時の情報把握が不十分であったことを認めつつ、鈴木答弁書で「イラクの大量破壊兵器に関する米国政府自らの情報が結果として誤っていた」と答弁している現時点では、平成十五年のイラク戦争開戦当時の事実関係の把握とは明らかに異なっている。このような変化が生じているにもかかわらず、政府が「イラクに大量破壊兵器が存在すると信じるに足る理由があったと考え」「日本政府が対イラク武力行使を支持したのは」「累次の国連安保理諸決議及び国連査察団の累次の報告等に基づいて主体的に判断した」と言い続けるのは欺瞞ではないか。改めて問うが、イギリスのチルコット委員会報告などが出されたことなどを鑑みても、政府は答弁書でいう「当時の日本政府の判断は、今日振り返っても妥当性を失うものではなく、政府として改めて当該判断について検証を行う考えはない」と強弁するのか。見解を示されたい。
五 鈴木答弁書で政府がいう「イラクの大量破壊兵器に関するアメリカ合衆国政府自らの情報に結果として誤りがあったことについて述べたものと認識している」、「我が国政府についてはそのような事情が無く」とは、アメリカ合衆国政府が自ら収集した情報には誤りがあったが、当時の日本政府の把握していた情報には誤りがなかったということか。政府の見解を示されたい。
六 政府のいう「UNMOVIC等の査察報告等に基づいて自主的に判断したもの」に関して、平成十五年六月十二日、「(UNMOVIC)のブリックス委員長は、五日、国連安全保障理事会で最新の四半期報告を行い、このなかで、六月末で委員長の職を退任することを明らかにした」、「イラクでの現地査察中に「イラクが大量破壊兵器計画を継続している証拠は見いだせなかった」とし、米国等の対応に批判的な見方を示した」と原子力産業新聞に報じられている。これは米英等によるイラクへの武力行使により、UNMOVICの現地査察が打ち切られたことを受けたものであり、ブリックス委員長自身がイラクでの現地査察に十分な時間が与えられず、UNMOVICの査察報告そのものが不十分であったことを示唆している。このような発言等にもかかわらず、当時の日本政府の把握していた情報には誤りがなかったといえるのか。また答弁書でいう「当時の日本政府の判断は、今日振り返っても妥当性を失うものではなく、政府として改めて当該判断について検証を行う考えはない」と強弁するのか。政府の見解を示されたい。

 右質問する。



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