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平成二十八年十月二十五日提出
質問第八三号

沖縄県東村高江のヘリパッド建設工事に反対する住民・県民を警備するため派遣された大阪府機動隊員による差別発言に関する質問主意書

提出者  仲里利信




沖縄県東村高江のヘリパッド建設工事に反対する住民・県民を警備するため派遣された大阪府機動隊員による差別発言に関する質問主意書


 去る十月十八日、沖縄県東村高江のヘリパッド建設工事に反対する地域住民や県民を警備するため派遣さ
 れている大阪府警察の機動隊員二人が抗議や阻止活動を行っている住民・県民に対して「土人」及び「シナ人」との差別発言をそれぞれ行った。
 この発言に対して、沖縄県民は差別意識や植民地意識の表れだとして強い憤りを覚えるとともに、深い悲しみを訴えている。また、政府が「遺憾」とか「不適切」、「厳正に処分」というありきたりの説明にとどめようとしていることや、問題を矮小化してことさら小さなミスであったかの如く軽視し、擁護しようとしていることに対して強く反発している。
 そこでお尋ねする。

一 池田克史沖縄県警察本部長は、翁長雄志沖縄県知事と会談した際に事前の説明で「抗議行動の資料を見せて冷静沈着にと指導している」ことや、「沖縄戦の歴史や、基地の集中は当然来る警察官には話している」ことなどを挙げた。しかし、実際には、これまで無抵抗・非暴力で抗議及び阻止活動を行っている地域住民や県民に対して、機動隊員が暴力を振るったため、骨折や怪我を負い意識朦朧となって救急搬送される事案が相次いでいることや、今回の差別発言が起こるべくして起こったものと考えられることからすれば、池田沖縄県警本部長の言うような指導や説明は何ら目的や成果を見いだすことが出来ていないものと思われるが、政府の認識と見解を答えられたい。
二 大阪府警察は「土人」及び「シナ人」との差別発言を行った警察官二人に対して聴取したところ「侮辱する意図はなかったが、極めて軽率で不適切な発言だった」としており、戒告の懲戒処分としたとのことである。二人は自らの発言に対して「差別的な意味や、歴史的な意味を持つ言葉とは知らなかった」とし、さらに「感情が高ぶり、つい発言してしまった。申し訳ない」と話しているとのことである。しかし、警察法第二条で「警察の活動は、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない」とされ、さらに同法第三条で「警察の職務を行うすべての職員は、日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行う」ことからすれば、明らかにこの二人は警察官たる資格や資質に欠けているものと思われ、また二人に対する処分は余りにも軽すぎると思われるが、政府の認識と見解を答えられたい。
三 法務省の萩本修人権擁護局長は十月二十日の参議院法務委員会で「不当な差別的な言動はいかなるものに対してでもあってはならない。沖縄の人々に対する不当な差別的な言動も他の者に対するものと同様、人権擁護上非常に問題があると認識している」とし、さらに「警備中の警察官が指摘のような発言で相手方、周辺にいる方々を誹謗中傷することは同様に人権擁護上も非常に問題があると認識している」と明確に今回の発言が差別だと位置付けており、また人権擁護上も問題があるとの認識を示している。一方、菅義偉内閣官房長官は差別意識の表れとの指摘に対して根拠や理由を示さないで「全くないと思う」と否定した。しかし、菅官房長官の言うように「差別意識がない」ならば「そもそもこのような発言」が出てくることはあり得ないし、琉球処分以降の沖縄に対する政府の仕打ちや米軍基地の過度な集中とそれに伴う県民への過重な負担を考えると、理由を示さずに否定することは本来官房長官として行ってはならない行為であると思われるが、政府の認識と見解を答えられたい。
四 質問三に関連して、鶴保庸介沖縄担当大臣は差別発言に対して「果たして県民感情を損ねているかどうかにしっかり虚心坦懐、見ていかないといけない」とし、さらに「言論の自由、社会の自由が著しく損ねられているという論争に今もなっている。今のタイミングで「間違っている」「正しい」ということでもない。答えられるのは、これはつぶさに見ていかざるを得ない」と述べ、人権問題には当たらないとの認識を示している。これらの発言は一見すると慎重な対応を心掛けたいとの発言であるかのように見受けられるが、その実、問題をすり替え、ことさら矮小化しようとする発言に他ならない。鶴保沖縄担当大臣は、なぜ沖縄県民や沖縄県議会、市町村議会、市町村が相次いで抗議の意思を表示し、謝罪と撤回を求めているか真摯に考えるべきである。特に沖縄担当大臣であればこそ沖縄県民の思いに寄り添い、今回の差別発言がいかに沖縄県民の心を傷つけ、政府への不信感と怒りを増大させているかについて率先して配慮すべきであると思われるが、政府の認識と見解を答えられたい。
五 沖縄県民は、今回の差別発言を「琉球国が武力で併合された琉球処分」や「琉球人として展示された人類館事件」、「本土防衛の盾とされた沖縄戦」、「異民族の統治下に差し出された沖縄」、「過重な基地負担」から政府すなわち本土側が連綿として引き継いできた構造的な仕組みから生じるべくして生じたものであり、けっして一個人の感情的で、しかも一時的な思い付きで出たものとは捉えていない。だからこそその発言に対して強い憤りと深い悲しみを感じているわけであるが、政府と本土側が連綿として受け継いできた沖縄への差別意識と植民地意識、さらには沖縄県民が抱いている強い憤りと深い悲しみについて政府の認識と見解を答えられたい。
六 質問五に関連して、本職は、今回の差別発言の根底には警察という組織そのものの根本的な問題や、警察の教育の在り方、さらには政府が進めている強権的な政策運営が大きく影響を与えているものと考えているが、政府の認識と見解を答えられたい。
七 本職は、今回の発言に接して、改めて本当に我が国は成熟した平等な社会となり得ているのかとの疑問を抱いた。なぜならば、辺野古新基地建設問題や高江ヘリパッド建設問題に関して地元の沖縄県民が明確に「ノー」という民意を表明しているのにもかかわらず、政府が国策に基づく政策として強権的に建設を進めているわけであるが、これこそが日本の中の沖縄県という一地域に過ぎないため少数派・弱者にならざるを得ない沖縄県民に対して、人数的に多数派であり、強力な権限を持っている本土側や政府が数や権力で押しつぶそうとしていることの最たる証である。しかもこれまで政府や本土側は、基地問題を始めとしてあらゆる犠牲を沖縄県民に強いてきたのにも関わらず、未だに多数でもって少数の沖縄県民の声を封じようとしているのである。このようなことは本当の意味での平等な関係とは到底思われない。多様な意見や考え、生活を認め、自主的な地域を創り上げることを容認し、少数者と多数者が共生できる社会を創り上げることこそが平等な社会であると思われる。よって、今回の差別発言を教訓として、政府と本土側は、例え人数的には少数者であっても沖縄県民と全国の賛同者が反対している辺野古新基地建設問題や高江のヘリパッド建設問題を直ちに取りやめるとともに、沖縄への差別と植民地意識の撤廃を考えるべきであると思われるが、政府の認識と見解を答えられたい。
八 政府は、今回の差別発言に対して「遺憾」とか「不適切」と言うだけである。また改善策として「厳正に対処」と言うが、具体的な内容には一切言及しようとしない。なぜならば「心からの謝罪」や「効果ある再発防止策」を講じるためには、原因の徹底的な究明と問題・課題の検討を行わなければならないが、今回の差別発言の根底にある「多数が少数の声を踏み潰しても構わない」という我が国の構造的な問題を触れなければならないため、手を付けることが出来ないものと本職は考えるが、政府の認識と見解を答えられたい。

 右質問する。



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