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平成二十九年一月二十五日提出
質問第三〇号

現在の日本で激しいインフレになるのかという疑問に関する質問主意書

提出者  福田昭夫




現在の日本で激しいインフレになるのかという疑問に関する質問主意書


 平成二十八年十二月九日の答弁書第一七九号(以下答弁書という)の十三についてで、日銀保有の国債を無利子・無期限のものにコンバート(以下コンバートという)すると、通貨の信認が損なわれ激しいインフレ(ハイパーインフレ)が生じるとしていた。
 平成二十八年三月十八日の答弁書第一七四号の八についてでは、ハイパーインフレーションが起きるのは「戦争等を背景とした極端な物不足」の際であるとあった。コンバートによって極端な物不足が生じるという事か。物不足が生じるのは需要が多すぎるか供給が少なすぎるときに起きる。コンバートによって農家や自動車会社、電気会社等の企業が生産を一気に何分の一かに減らすとは考えられない。そうだとすれば、コンバートで米、テレビ、車などの需要が一気に数倍になって極端な物不足になると政府は考えていると推測される。
 これに関連して質問する。

一 コンバートによって激しいインフレが起きるということは消費が激増するということだ。それは資金が急上昇し可処分所得が激増する結果なのか、それとも可処分所得は変わらないにも係わらず消費が激増するのか。利益が大きく増えても賃金を上げなかった企業が、コンバートで賃金を本当に大幅アップするのか。
二 コンバートによって消費・需要が大きく拡大するということは、国民生活は大きく改善するということであり、それに対応して企業は生産を拡大し経済は活性化すると考えて良いか。
三 黒田日銀総裁による異次元の金融緩和は金融機関の経営状態を悪化させ、輸入物価の上昇を引き起こし消費を減少させるという副作用があり、二%のインフレ目標の達成に失敗した。また出口戦略の不透明さが国民を不安にしている。一方、コンバート政策であれば絶大なる消費促進効果により簡単にインフレ目標を達成でき、デフレ脱却を可能にする。コンバート政策のほうが、異次元金融緩和より優れているのではないか。
四 もしもコンバートによってインフレ率を簡単に押し上げることが可能であるなら、コンバートの量を調節することにより、国の借金を増やすことなく悲願のインフレ率二%を達成することができる。そうなれば、失われた二十年からの脱却、デフレ脱却が可能となり、その場合名目GDPは四〜五%程度になるだろうから国の借金のGDP比は四〜五%減ることになる。千兆円の借金を四〜五%減らそうと思えば、四十兆円から五十兆円も減らさなければならず、増税よりコンバートの方がケタ違いに国の借金減らしには効果的であると考えるが同意するか。
五 コンバートを行った後にインフレになった時、無利子・無期限の国債は市場で売れないから景気の調整が出来なくなると主張するかもしれない。しかし、インフレ抑制には歳出削減、増税、預金準備率引上げ、金利引上げ等の手段があり十分インフレは抑えられる。インフレになり財政が黒字化すれば、政府は余った予算で日銀の無期限国債を買う事も可能である。一方でコンバートしなかった場合、インフレになれば日銀の保有する国債の市場価格が下落し、日銀が債務超過に陥り、円の信認が失われるという主張がある。またインフレ時に市場で日銀が国債を売ろうとすると国債が暴落するわけで、国債を売れない。このような事情を考えればコンバートはインフレ時に金利上昇もなく理にかなっていると考えるが同意するか。尚、同様な議論は最近スティグリッツ氏も行っている。
六 コンバートを行えば、国民は日銀保有の国債はもはや国の借金ではないと考えられ、国民一人当たりの借金は激減するわけで、国民に安心感を与え節約をしなくても良いと考えるようになると思うが同意するか。
七 日銀保有の国債の利払いの大部分は日銀納付金として国庫に返されるし、借換債でいくらでも繰り延べが可能である。つまり事実上無利子・無期限の国債と同じである。それ故にコンバートによって事実上の変化はほとんど無いと考えるが同意するか。その意味で日銀保有の国債は国の借金ではないと言えるし、日銀による市場からの国債の買い入れは事実上国の借金の返済と言えるのではないか。
八 日銀の最新の営業毎旬報告(平成二十八年十二月二十日現在)を見ると、株、株式指数ETF、REITの保有高が十二.五兆円となっている。株、ETF、REITは償還期限の定めも、保証価格もない無期限の債券であり利子率が不定である債券である。日銀がこのようなハイリスクの金融商品を買っても通貨の信認が落ちず、無期限で政府による価値保証のある無期限国債を保有すると通貨の信認が激しく低下し激しいインフレが起こるのはなぜか。
九 内閣官房参与である浜田宏一氏の「今後は減税も含めた財政の拡大が必要だ」、「政府の負債である公債と中央銀行の負債である貨幣は国全体のバランスシートで考えれば民間部門の資産でもある。借金は返さずに将来世代に繰り延べることもできる」という主張につき、答弁書の五及び六についてと七についての内容から判断して内閣としては間違いであると認識していて、内閣は浜田宏一氏を内閣官房参与として信用していない、と理解して良いか。
十 答弁書の一についてに関してIMFのデータによれば、日本の公的債務のGDP比は昭和五十七年(一九八二年)が五十九.三%、平成七年(一九九五年)が九十五.一%であり、平成二十八年(二〇一六年)の推計値が二百五十.四%となっている。昭和五十七年、平成七年において我が国の財政状況が「極めて厳しい」のであったとするのであれば、政府としては公的債務GDP比がいくらであれば「我が国の財政は極めて厳しくない」と判断するのか。政府は「どの段階から財政が極めて厳しい」と判定する明示的な基準を国民に対して開示すべきではないか。「財政が厳しい」と主張する意図は緊縮財政を行うという意思表示であり、それを撤回しない限りインフレ目標達成は困難であると考えるが同意するか。
十一 諸外国の債務のGDP比をみると、アメリカ百五%、イタリア百三十八%、ベルギー百六%、スペイン九十九%、フランス九十六%、カナダ九十一%、イギリス八十八%、ドイツ七十%、オランダ六十五%となっている。先進国は軒並み五十九.三%以上なので、財政が極めて厳しいことになる。ということは、これらの国々はすべて緊縮財政をすべきであって、トランプ氏の積極財政は間違いだと主張するのか。
十二 債務のGDP比が僅か五十九.三%しかなくても、不健全で良くない状態とする政府の考えは、国債の役割そのものを否定し、さらに日銀の役割まで否定しているのではないか。
十三 国・地方の債務のGDP比が二倍ということは、国債に対する信認が失われたと言えるのか。
十四 積極的な財政政策により、国の借金のGDP比が下がるということは内閣府が平成二十二年八月に発表した乗数により示されている。類似した見解は二〇〇三年五月三十一日の日本金融学会六十周年記念大会でのバーナンキ前FRB議長の講演の中でも述べられているし、二階俊博氏の二階ペーパーにも同様な記述がある。政府はなぜこれらの見解に従って国の借金のGDP比を下げる努力をしないのか。
十五 答弁書の八についてで現在の日銀のいわゆる「異次元緩和」は市場から間接的に国債を購入しているが、財務省から国債を直接購入している市中銀行はその国債をすぐに日銀に転売できることを百も承知で国債を購入しているのであるから、直接引受と実質的な違いはほとんどないと考える。ゆえに直接引受に害があるのであれば現在の「異次元緩和」にも害があることになると考えるが、政府はこの点についてどのように考えるか。
十六 伊勢志摩サミットで安倍首相は現在の世界情勢は「リーマン・ショック前に似ている」として各国に財政出動を呼びかけた。しかし、現在考えられている日本の財政出動はリーマン・ショックに対抗するには余りにも小粒ではないか。なぜもっと適切な規模にしないのか。
十七 最近の円安は輸入物価を押し上げることにより、低迷が続く消費をさらに押し下げ、家計は益々苦しくなることが予想される。消費拡大に向けて政府の取組みが足りないのではないか。
十八 産経ニュースで二〇一六年十二月二十九日、浜田宏一氏は次のように述べている。「政府が財政赤字をつくることは、必ずしも悪くない。少なくともデフレ経済ではよいことかもしれない。最近は米国の学界で物価の財政決定理論というのが有力になっている。民間部門が不況やデフレに悩んでいるときには公債を発行してお金を見せるという意味での一種の「見せ金」をみんなに持たせることも有効ではないかという考えに、米国の経済学者は最近どんどん移ってきている」。この考えに同意するか。

 右質問する。



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