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平成二十九年十一月二十日提出
質問第四六号

合衆国大統領の核攻撃命令についての違法性の議論に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




合衆国大統領の核攻撃命令についての違法性の議論に関する質問主意書


 十一月十七日、安倍総理は衆議院本会議で所信表明演説を行い、「北朝鮮によるわが国を飛び越える相次ぐミサイルの発射、核実験の強行は、断じて容認できません。先般、トランプ大統領が来日し、日米同盟の揺るぎない絆を、世界に示しました」と述べ、「北朝鮮にその政策を変更させなければならない。そのために、国際社会とともに、北朝鮮への圧力を一層強化してまいります」と表明した。
 十一月十八日、カナダで開催された「ハリファクス国際安全保障フォーラム」の講演の中で、米軍の核戦略やミサイル防衛を担当する戦略軍のジョン・ハイテン司令官は、トランプ大統領から核攻撃の命令を受けた場合、それが「違法」な命令であれば従わずに反論すると明言した。「私は大統領に助言し、大統領は私に命令する。この命令が違法だった場合は、私から大統領に違法だと伝える」と述べた。ハイテン司令官は、合衆国大統領には核兵器使用の権限があるものの、軍として従う義務があるのは合法的な命令だけだと強調した。
 十一月十四日、アメリカ連邦議会の上院外交委員会では、トランプ大統領が核攻撃を命令する可能性をめぐって公聴会が開かれた。連邦議会で前回、核使用の大統領権限について公聴会が開かれたのは四十年以上前であり、当該公聴会で専門家らが、核の使用は脅威に見合った、合法的な決断でなければならないと指摘し、戦略軍のケーラー元司令官も、軍には違法な命令を拒否する義務があると証言している。
 わが国はアメリカから核抑止力の提供を受けている。平成二十九年六月十四日の外務省ホームページでは、日米拡大抑止協議に関連して、「日米拡大抑止協議は、日米安保・防衛協力の一つとして、いかに日米同盟の抑止力を強化していくかについて率直な意見交換を行うものであり、米国から抑止力の提供を受けている我が国が、米国の抑止政策及び複雑化する安全保障環境下での政策調整のあり方について理解を深める場として機能しています」と示されている。
 このようにアメリカ国内においてもトランプ大統領の北朝鮮を想定した核攻撃に関する過激な発言や、それにともなう命令の違法性の是非が議論される中、安倍総理のいうところの、「先般、トランプ大統領が来日し、日米同盟の揺るぎない絆」を示した、「北朝鮮への圧力を一層強化」するなどの手放しの主張は、疑念を持たざるを得ない。トランプ大統領が誤った核攻撃命令を行った場合、北朝鮮が軍事技術としてアメリカ本土に到達するミサイルを未だ完成させていない以上、北朝鮮から最も深刻な反撃を受けるのは、在日米軍基地が多数存在するわが国である。
 このような観点から、以下質問する。

一 安倍総理の「北朝鮮にその政策を変更させなければならない。そのために、国際社会とともに、北朝鮮への圧力を一層強化してまいります」との表明の中には、アメリカからわが国に提供されている核の抑止力も含まれているのか。
二 米戦略軍のハイテン司令官のいうところの、大統領からの核攻撃命令に関して、「私は大統領に助言し、大統領は私に命令する。この命令が違法だった場合は、私から大統領に違法だと伝える」に関連して、「いかに日米同盟の抑止力を強化していくかについて率直な意見交換を行う」ところの、日米拡大抑止協議で、合衆国大統領が違法な核攻撃命令を出した場合に想定される対処の意見交換がなされたことはあるのか。なされていないとすれば、協議すべきではないか。
三 「米国から抑止力の提供を受けている我が国」として、合衆国大統領が違法な核攻撃命令を出した場合の対処について、閣僚や政府高官らがその対処について協議をしたことはあるのか。行われていないとすれば、協議すべきではないか。
四 トランプ大統領の北朝鮮に対する発言はいたずらに核兵器使用の危機を煽っており、アメリカ連邦議会の上院外交委員会で、トランプ大統領が核攻撃を命令する可能性をめぐって四十年以上ぶりに大統領の核攻撃命令に関する公聴会が開かれたことは重く受け止めるべきである。トランプ大統領の北朝鮮への言説は明らかな挑発を含んでおり、安倍総理の、「日米同盟の揺るぎない絆」の美名の下、「北朝鮮への圧力を一層強化してまいります」との発言は、結果として日本の安全保障環境をより悪化させるものではないか。政府の見解を示されたい。
五 連邦議会上院で行われた公聴会で専門家らは、核の使用は脅威に見合った、合法的な決断でなければならないと指摘している。米戦略軍のケーラー元司令官も、軍には違法な命令を拒否する義務があると証言したと承知している。違法な核攻撃命令が出された場合、どう対処するかの判断でわが国の国民の生命、財産に非常に大きな損害が生じ得る。現在、「米国から抑止力の提供を受けている我が国」としては、合衆国大統領の核攻撃命令について、それが合法か違法であるかの判断基準を予め持っていなければならない。政府はこれまで、合衆国大統領の核攻撃命令の違法性について議論し、その判断基準を作成したことはあるか。ないとすれば、作成すべきではないか。政府の見解を示されたい。
六 米戦略軍の司令官や連邦議会上院の公聴会でも、合衆国大統領の核攻撃命令の違法性についての疑念が呈されている現状において、わが国が「日米同盟の揺るぎない絆」の美名の下で、無批判のまま「北朝鮮への圧力を一層強化してまいります」と表明することは、結果として、日本の安全保障環境を悪化させているのではないか。

 右質問する。



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