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平成三十一年四月十二日提出
質問第一三八号

少年法適用年齢引き下げに関する質問主意書

提出者  柚木道義




少年法適用年齢引き下げに関する質問主意書


 二〇一七年(平成二十九年)二月、当時の金田勝年法務大臣が法制審議会に対し、少年法の年齢上限を十八歳にまで引き下げる諮問(以下「諮問第百三号」という)を行った。
 確かに憲法の国民投票や選挙権の年齢を十八歳まで引き下げることは、若い世代の意見をより国政に反映させるために意義があったと考えるが、それと少年犯罪への対処とは全く別である。
 諮問第百三号に関連して以下、質問する。

一 わが国の二十歳以下の少年刑法犯は一貫して減り続けている。二〇〇三年(平成十五年)には少年の一般刑法犯の検挙人員は一四万四四〇四人だったが、二〇一六年(平成二十八年)には三万一五一六人にまで減っており、人口全体に占める少年人口比の減少以上に少年の検挙人数は減っている。
 これはとりも直さず、わが国で少年犯罪への現状の対応が十分に効果を発していることを示すと考えるが、政府の見解如何。
二 家庭裁判所で少年事件を担当してきた家庭裁判所調査官によれば、「非行少年」は高校卒業や職業選択を機に、十八歳から十九歳で大きく変化することが多い。家庭裁判所はこのような少年たちの十八歳から十九歳の変化を見据えて教育的措置を行い、保護処分を検討してきた。
 そして十八歳から十九歳の少年は、現行少年法による保護処分の対象者の約半分を占める。一般保護事件のうち少年審判を受けた少年に占める十八歳から十九歳の少年は四十パーセント、少年鑑別所に入所した少年のうち十八歳から十九歳の少年は四十四パーセント、少年院送致となった少年のうち十八歳から十九歳の少年は五十パーセントである。
 また、十八歳から十九歳の非行少年の中には、十分な教育は受けてきたものの、社会規範を備えていない未熟な少年もいる。こうした十八歳から十九歳の少年に対していきなり刑事罰を科するのは、少年の成長や発達の現状を無視したものと言わなければならない。
 一九六五年(昭和四十年)十二月に最高裁判所事務総局家庭局が提出した『最近の少年非行とその対策について−少年法改正をめぐる諸問題−』では、少年法適用年齢引下げの議論に関連して以下のように述べている。「戦後、子どもの成熟度が大いに伸びたといわれているが、このいわゆる成熟促進現象と呼ばれるものは、肉体面や性的な面、あるいはせいぜい知的な面にとどまり、精神的および情緒的な面には及んでいない。むしろ、この心身両面における成長のアンバランスが現在の少年非行の起因をなしているとも言われているのである。そうして、最近の生理学、心理学、精神医学等の知識によれば、十八、九歳という年齢層は、いわば少年期から成人期へと成長していく不安定な過渡期にあり、外見的な肉体の発達にもかかわらず、心身ともに未成熟であることが明らかにされている。しかも、一般に非行に陥るような少年は、通常の少年に比べ、心身の発達の劣っているものが大部分である。たとえば比較的非行性が高いとして施設に収容されている少年たちは、精神発達の面においても、身体発育、運動能力の点においても、一般少年より平均二、三年の遅れを示していることが指摘されている。」
 そこで質問するが、諮問第百三号に関連して、政府としては少年の精神的発育が一九六五年(昭和四十年)当時の指摘と大きく変わって、現在では国内の十八、十九歳の少年が全て成人期へ移行しているといいうると考える科学的証拠(エビデンス)を有しているのか。有していればその内容を答えていただきたい。
三 確かに国民投票法や公職選挙法での選挙権や民法の成人年齢は十八歳と規定されたが、他の法律では目的に応じて適切な成人年齢をそれぞれ定めている。飲酒や喫煙も勝馬投票券の購入も非行防止の観点から二十歳からとされている。少年の健全育成の観点からこれらの措置がとられていることをみれば、子どもの健全育成の観点から少年法でも「二十歳成人」を維持すべきだと考える。「成人年齢」が法制度ごとに異なる点についての政府の説明を求む。
四 仮に少年法の適用年齢が引き下げられた場合の十八歳から十九歳の「年長少年」に対する処遇については、法制審議会にて「若年者に対する新たな処分」「罰金の保護観察付執行猶予」や「保護観察付執行猶予の活用」などの制度が議論されている。
 しかし、これらの新たな制度は十八歳から十九歳の「年長少年」のうちの一部の者に対して、現行制度よりも不十分な処遇方法を提供できるに過ぎないものである。現行の教育措置が十分に機能しているのに、十八歳から十九歳の少年に対して現在より不十分な処遇で良いと考える根拠を求める。
五 かつて戦前の裁判所は当時の「司法省」の監督下にあったが、日本国憲法の三権分立の理念の下で裁判所は司法省・法務省(庁)から離れて独立し、三権の一つを担うよう位置づけられた。
 そして戦後の新・少年法制定により、旧少年法のもとで少年犯罪も全て検察官が起訴・不起訴(少年保護手続に付する)かを判断していた「検察官先議」から、家庭裁判所全件送致へと改められた。その理由は先に引用した最高裁判所事務総局による『最近の少年非行とその対策について』によれば、第一に、「少年保護手続で行う保護処分は、少年の健全な育成を目的とする矯正処分であるとはいえ、同時に少年の自由を拘束し、場合によっては保護者の権利をも侵害する強制処分たる性質を持つため、その処遇の決定を行政機関に取り扱わせることは憲法の掲げる人権尊重の精神に照らし許されないから」である。第二に「犯罪少年を刑事手続に付するか少年保護手続に付するかの判断は、少年犯罪者の処遇において最も重要な基本的判断であって、捜査機関として少年と対立的な地位にある検察官でなく、中立的な処遇決定の機関であり、かつ、調査官や医務室等の科学的補助機構を備えた家庭裁判所こそこの判断をなすにふさわしいからである」。
 しかしながら、少年法の適用年齢が十八歳未満に引き下げられると、十八歳から十九歳の少年は検察官により起訴・不起訴などの処分が決定されることになり、あわせて少年法の適用年齢が引き下げられた場合に想定される処分も、検察官の判断に係ることになる。
 そこで質問するが、このような決定や判断を検察官が行う場合は、最高裁判所事務総局が指摘する通り、人権を侵害するおそれのある矯正処分の決定を行政機関が行うことであり、憲法に掲げる基本的人権の尊重の理念に照らして許されないのではないか。また、最高裁判所事務総局が指摘するとおり、捜査機関として少年と対立しうる立場にある検察官では中立的な処遇決定は行えず、また検察官には家庭裁判所調査官や医務室のような科学的補助機関が常設されておらず、少年の処遇を判断する点で検察官は「科学性においてはるかに劣る」(最高裁判所事務総局『最近の少年非行とその対策について』五十二ページ)のではないか。
六 諮問第百三号は、直接的には少年法の適用年齢を引き下げることに関する諮問であるが、仮にこの諮問が実現し各法の改正にまで至れば、例えば少年院・少年鑑別所における少年の「定員」に限らず、少年院・少年鑑別所・家庭裁判所の統廃合や職員定数減をもたらすおそれがある。
 1 政府として、少年院や少年鑑別所、そして家庭裁判所を縮小・統廃合して良いという考えなのか。
 2 少年鑑別所の統廃合がなされると、親族や付添人の面会に多大な支障が出る。そして、家庭裁判所の統廃合がなされると、少年の住所地から離れた家庭裁判所が事件を管轄する可能性が高まり、家庭裁判所による少年の調査や付添人の活動が不十分となる危険性がある。家庭裁判所、少年鑑別所及び少年院が統廃合された場合の問題点について政府はどのように認識しているか。

 右質問する。



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