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令和元年十一月十三日提出
質問第七四号

「八丁味噌」の地理的表示保護制度への登録に関する質問主意書

提出者  大西健介




「八丁味噌」の地理的表示保護制度への登録に関する質問主意書


 「株式会社まるや八丁味噌」と「合資会社八丁味噌」の二社(以下、二社)は、愛知県味噌溜醤油工業協同組合申請に係る「八丁味噌」が地理的表示保護制度(GI)に登録されたことについて、平成三十年三月十四日付で農林水産大臣に対し、登録の取り消しを求め、行政不服審査法に基づく審査請求を行っている。
 令和元年五月二十七日、農林水産大臣(審査庁)は、行政不服審査会に対し、二社の審査請求は棄却すべきであるとして諮問をしたところ、行政不服審査会は、令和元年九月二十七日、愛知県味噌溜醤油工業協同組合による「八丁味噌」の登録申請について、「地理的表示法が規定する登録拒否事由がないかについて、更に調査検討を尽くす必要があるから、審査請求を棄却するべきであるとの審査庁の諮問に係る判断は妥当とはいえない」旨の答申(令和元年度答申第三十五号)を行った。
 この経緯ならびに私が平成三十年三月六日に提出した質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一九六第一二三号)に関し、以下について政府の見解を明らかにされたい。

一 前回答弁書「一について」において、「二社が登録を受けた生産者団体に加入することによりその構成員となることや、生産者団体を追加する変更の登録を受けることにより、『八丁味噌』として生産を行った特定農林水産物等に地理的表示を付することが可能であり、御指摘のように『八丁味噌』を名乗れなくなるというものではない」旨の答弁があるが、
 1 登録を受けた生産者団体の「八丁味噌」は、二社の「八丁味噌」とは製法や特性が全く異なるものであるにもかかわらず、二社に対して当該生産者団体への加入を促すことは、事実上、加入の強制であり、商品の特性を無視して「大まかに同種扱い」することに等しいのではないか。
 2 生産者団体の追加による方法も、GI登録を受けた「八丁味噌」を生産する団体として追加されるだけであって、結果的には二社とは製法や特性が異なる当該生産者団体に加入を強いるだけではないか。
 3 二社は、江戸時代から続く伝統文化を守るためにも、GI登録を受けた生産者団体に加入することや、生産者団体の追加による登録を受けることを選択できない状況である。一方で、平成三十年二月の地理的表示法の改正により、七年後には二社は「八丁味噌」の名称使用の制限を受けることになる。また、現時点においても、二社の「八丁味噌」を使った加工品については、「八丁味噌」の名称使用ができない状態であり、このような状況は、長年の伝統を守り続けている二社にとって極めて不条理ではないか。
二 前回答弁書「一について」において、「なお、法第六条の規定による登録を受けた特定農林水産物等の名称は我が国国内において保護されるものであり、現時点で欧州において地理的表示として保護されている実態にはない。」とあるが、平成三十年二月一日に日EU・EPA(経済連携協定)が発効したため、現在GI登録されている「八丁味噌」が欧州においては地理的表示として保護されている。つまり、二社の「八丁味噌」は登録していないので保護されていないという理解でよいか。
三 前回答弁書「二及び三について」において、「法第八条の規定に基づく公示等や法第十一条の規定に基づく学識経験者の意見の聴取等を経て、法第十三条第一項第三号及び第四号に掲げる場合に該当するものではないと判断したものであり、『混乱を招く』、『消費者を騙すことになる』、『地理的表示保護制度の趣旨に反する』等の指摘は当たらないと考える」とあるが、行政不服審査会の答申書においては、「審査庁の諮問に係る判断においては、審査請求人の主張及び提出資料についての十分な検討、判断が示されていないが、手続としては、その履践に欠けるところは認められなかったことなども考慮して、直ちに本件処分(登録)が取り消されるべきと結論づけるまでには至らなかった」旨の内容が記載されている。
 この行政不服審査会の答申を踏まえても、法が規定する手続を形式的に履践してさえいれば、登録に当たり調査検討が十分なされたか否かを問わず、登録により「混乱を招く」、「消費者を騙すことになる」、「地理的表示保護制度の趣旨に反する」等の問題は生じないと考えるのか。
四 前回答弁書「二及び三について」において、「従前から同組合の構成員が製造する『八丁味噌』が販売されている実態があるところであり、御指摘のように『二社製造の豆味噌以外を八丁味噌とは普通、呼ばないことが慣習となっている』とは認識していない。」とあるが、
 1 愛知県味噌溜醤油工業協同組合の「八丁味噌」の名称が付された商品のほとんどが業務用であり、GI登録前の審査庁による調査で、全国百五十チェーン九百九十店舗(主に中小スーパー)における販売データ(POSデータ)について、商品名として「八丁味噌」を含む商品を検索し、抽出された商品から派生商品(合わせ味噌(赤だし)等)を除外したところ、岡崎二社の六商品の販売実績しか判明しなかった事実を認識した上での答弁であるか。
 2 行政不服審査会の答申書においては「『八丁味噌』との名称が付された豆味噌は、岡崎二社が岡崎市内において生産する豆味噌が、(愛知県ではなく)岡崎市の特産品として相当程度認知されていることがうかがわれる」と指摘されているが、当該指摘を踏まえても答弁を維持するのか。
五 愛知県味噌溜醤油工業協同組合申請に係る「八丁味噌」のGI登録後、二社の取引先において「八丁味噌」の名前の付いた商品が販売中止となり、名称変更を余儀なくされた例もあり(例:「八丁味噌コーラ」を「味噌コーラ」として販売)、二社及び取引先が多大な不利益を被っている事実や、平成三十一年二月一日に改正地理的表示法が施行されたことにより、GI制度に入っていない二社の「八丁味噌」先使用権の期限が原則として七年に限定された事実がある。愛知県味噌溜醤油工業協同組合申請に係る「八丁味噌」のGI登録を行ったことによるGI制度に入っていない二社が受けた不利益に対して、政府は一定の責任があるのではないか。
六 行政不服審査会の答申において、「審査庁の認定、評価において、審査請求人が指摘する岡崎二社の生産する豆味噌と本件申請に係る豆味噌の相違点が、それぞれの社会的評価において何らかの意味を持つものかどうかといった観点からの検討がなされていることをうかがうことはできず、社会的評価の観点からの検討としては不十分というべきである」旨の指摘があるが、当該指摘を踏まえても、愛知県味噌溜醤油工業協同組合申請に係る「八丁味噌」が地理的表示保護制度(GI)により登録されたことは、問題ないと考えるか。
七 行政不服審査会の答申において、審査庁の「農林水産物等審査基準において合意形成が十分に図られているかどうかを斟酌するものとされている『当該申請農林水産物等の生産業者』は原則として申請生産者団体の構成員を指す」との考え方に対し、「そもそもこのような考え方が採られていたというのであれば、農林水産物等審査基準において明確にされ、合意形成を考慮するのはどのような場合であるかも具体的に示されているべきであった」と指摘しており、審査庁が作成した農林水産物等審査基準の不備を指摘するものと評価することができると考えられるが、この点についてどのように考えるか。

 右質問する。

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