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令和二年五月二十七日提出
質問第二〇八号

黒川前東京高検検事長の処分に関する質問主意書

提出者  柚木道義




黒川前東京高検検事長の処分に関する質問主意書


一 黒川弘務前東京高検検事長の「訓告」決定までの経緯
 賭け麻雀で辞職した黒川弘務前東京高検検事長(以下「黒川氏」という。)の処分について、安倍晋三首相は当初国会で「検事総長が事案の内容など、諸般の事情を考慮し、適切に処分を行ったと承知している」と答弁していた。
 一方で、事実関係を調査し首相官邸に報告した法務省は、国家公務員法に基づく懲戒が相当と判断していたが、官邸が懲戒にはしないと結論付け、法務省の内規に基づく「訓告」となった、と複数の法務・検察関係者が証言したとの報道がなされている。
 森まさこ法務大臣(以下、「森法相」という。)は当初、例えば令和二年五月二十二日の会見で「内閣で決定されたものを私(森法相)が検事総長に訓告が相当でないかと伝えた」と説明していた。ところが、森法相は、同月二十六日になって「黒川氏の訓告の処分内容を決定したのは、あくまで法務省及び検事総長です」と閣議後会見で述べ、安倍首相のこれまでの国会答弁や説明との食い違いを修正している。また、同日の報道において、稲田伸夫検事総長(以下、「稲田検事総長」という。)は、「法務省側から訓告相当といわれ「懲戒ではないのだな」と思った。法務省の見解を踏まえ訓告と判断したとして、法務省側から事前に「訓告相当」との見解が示された」ことを明らかにしている。加えて、森法相は同月二十五日の国会答弁で、「官邸から「訓告に」と押し切られたのではないか」との質問に対して「もちろん協議の中でさまざまな意見が出たが、さまざまな先例を参考にした上で今回の黒川氏の訓告を決めたところ」と訓告が決まるまでの法務省と官邸との協議を認める答弁も行っている。
 これらを踏まえると、黒川氏の「訓告」決定までの経緯について、森法相が稲田検事総長に訓告相当と伝えるより前に、法務省又は森法相が官邸側と協議した結果としての訓告相当との考えを、法務省又は森法相が稲田検事総長に伝えたと考えるが、政府の見解を示されたい。
二 検事長への懲戒処分の任命権者の確認
 高等検察庁トップの検事長は、内閣が任命し、天皇が認証する「認証官」だが、任命権者は内閣で、その長は安倍首相である。国家公務員法は、任命権者が懲戒処分をすると規定しており、そもそも検事総長には懲戒の権限はない。
 そこで確認するが、検事長の懲戒処分の権限は任命権者の内閣にあり、検事総長にはないと理解するが、政府の見解を示されたい。
三 訓告相当の妥当性および再調査の必要性
 令和二年五月二十六日の参議院法務委員会で、森法相は、黒川氏の賭け麻雀について、国家公務員法第九十九条「信用失墜行為の禁止」違反に当たると答弁し、さらに国家公務員法第八十二条の懲戒規定にも当たるとも答弁し、懲戒処分として免職、停職、減給、戒告の処分ができると規定されていると答弁した。
 また金銭をかけた麻雀については、旧知の間柄の者の間で、いわゆる点ピン(千点を百円換算とするもの)と呼ばれる、必ずしも高額とまではいえないレートで行われたものと刑事局長が国会答弁している。
 森法相は、黒川氏が事実を認めて深く反省している点、勤務態度が良好で、組織に多大な貢献をしてきた点などをあげ、「これらを総合的に考慮し、先例も踏まえると、黒川検事長に対しては、国家公務員法上の懲戒処分に付すべきとまでは認められないものの、監督上の措置として訓告相当」と説明している。
 しかし、同じ二十六日の法務委員会で、防衛省の平成二十六年から二十八年頃にかけての陸上自衛隊青野原駐屯地内容で賭け麻雀を行い自衛隊員九人が停職処分となり一部書類送検された事案について森法相は「法務省以外の他省庁の先例については調査に限界があった」とわずか一両日での調査と訓告決定までの「調査の限界」を認めた。さらに、この自衛隊員の賭け麻雀の金額が、黒川氏らと同じく点ピンであることからも、レートが必ずしも高額とまではいえないとの説明も説得性に欠ける。その他の、事実を認め深く反省している点や、勤務態度や組織への貢献などは非常に「主観的」であり、今回の黒川氏の賭け麻雀が、国家公務員法第八十二条、第九十九条違反や、人事院の国家公務員の懲戒処分の指針の「賭博」などの「客観的」基準に明確に当たることなどを「総合的に考慮し、先例も踏まえると」、むしろ黒川氏に対して、国家公務員法上の懲戒処分に処することが妥当であると考えるが、政府の見解を示されたい。
 加えて、再調査の必要性についても、同二十五日付の法務省の「本年五月二十二日の衆議院法務委員会理事懇談会において御指示いただいた事項について」において、「再調査の要否について」の中で、緊急事態宣言中の賭け麻雀について、法務省調査の二回に加えて本年四月十三日と同月二十日も行っていた点を、本件措置後に公表されたものであるから、本件措置をするに当たって考慮していないが、その内容は本件措置の当否に影響を与えるものではない、としているが、本来はその逆で、報道の時点と措置の先後関係ではなく、報道内容にある賭け麻雀の時期が在職中の出来事である以上、本件措置の当否にまさに関わるものであるため、在職中に賭け麻雀をしていた追加事実が報道された以上、事実関係について再調査し、本件措置の当否を検討すべきである。
 人事院の国家公務員の懲戒処分の指針には「常習として賭博をした職員は、「停職」とする」と明記されており、黒川氏の賭け麻雀の常習性について再調査の上、再処分することは、退職金の扱いにも直結することからも再調査は必須であり、政府の見解を示されたい。
四 黒川氏の退職金
 黒川氏の「退職金」の総額はいくらか。また、退職金は一般的に退職後何日後に支給されるのか。
 黒川氏の退職金は既に支給済みであれば、支給額はいくらで、いつ支給されたのか。また退職金支給額の算出方法は何に基づくものか。
 再調査を行う場合、退職金の支給は、再調査結果が出て、再処分が決定するまでの間は凍結するべきだが、各々について政府の見解を示されたい。
五 黒川氏の後任としての林真琴東京高検検事長の就任および黒川氏の定年延長の閣議決定
 黒川氏の定年延長の閣議決定の理由として「余人をもって代えがたい」としていたが、余人をもって代えがたいはずの黒川氏は、賭け麻雀で国家公務員法第八十二条、第九十九条違反で辞職した。定年延長期間中の黒川氏の賭け麻雀による辞職を内閣が認め、後任として林真琴氏の就任を内閣が認めたということは、黒川氏を「余人をもって代えがたい」とした事実を否定したことになる。
 林氏は、黒川氏の前の東京高検検事長候補だったことからしても、その林氏が黒川氏の後任になったこと自体が、黒川氏を「余人をもって代えがたい」事実を否定したことに他ならない。
 よって、本来令和二年一月三十一日の当時の黒川検事長の定年延長の閣議決定は、林真琴氏の東京高検検事長就任決定をもって論理的に自動的に消滅することになるが、政府の見解を示されたい。
六 黒川氏の訓告決定以後、テンピンまでの賭け麻雀の合法性
 安倍政権は、平成十八年十二月八日付鈴木宗男衆議院議員の質問主意書に対して、同十二月十九日付回答(閣議決定)で、賭け麻雀は「一時の娯楽に供する物を賭けた場合を除き、財物を賭けて麻雀又はいわゆるルーレット・ゲームを行い、その得喪を争うときは、刑法の賭博罪が成立し得るものと考えられる」と明確に答えている。また、実際に金銭をかけた麻雀については、捜査・起訴の対象となってきたものと承知している。しかし、黒川氏の賭け麻雀を訓告に決定した説明として、令和二年五月二十二日の衆議院法務委員会で法務省の刑事局長は、黒川氏が参加した賭け麻雀のレートについて千点当たり百円を賭ける「テンピン」だったと示した上で「必ずしも高額とは言えない」として、最終的に安倍内閣は国家公務員法上の懲戒処分も行わず、退職金も支給する旨の答弁を行った。
 刑事局長の前記答弁と、前記、同十二月十九日付回答(閣議決定)の政府見解との整合性について、政府の見解を示されたい。さらに、この刑事局長答弁は、千点百円=黒川レートとして賭け麻雀をこの限度で合法と認めたものか、政府の認識を示されたい。
 また、千点百円のレートで賭け麻雀を行うことは合法と考えているか、政府の認識を示されたい。
 加えて、従前の知り合いが四人集まり、半荘だけ千点百円のレートで賭け麻雀を行うことは合法と考えているか、政府の認識を示されたい。

 右質問する。

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