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令和二年十月三十日提出
質問第六号

地方自治体におけるLINEによる住民票の写し等の交付に関する質問主意書

提出者  丸山穂高




地方自治体におけるLINEによる住民票の写し等の交付に関する質問主意書


 東京都渋谷区は、本年四月一日より、コミュニケーションアプリ「LINE(ライン)」において、請求情報の入力、請求者の容貌の画像及び顔写真付き本人確認書類の画像を送信することにより、住民票の写し、課税(非課税)証明書、所得証明書、納税証明書等の交付申請を受け付けるサービス(以下「LINEによるサービス」という。)を開始した。
 高市総務大臣(当時)は、本年四月三日の記者会見において、LINEによるサービスのうち、住民票の写しの交付請求(以下「LINEによる住民票請求」という。)について、電子署名を用いないオンラインによる請求手続であるため、画像の改ざんやなりすましの防止といったセキュリティの観点、住民基本台帳法の観点から問題があるとして、渋谷区に対し、改善を促していくと発言した。
 また、同日、総務省自治行政局住民制度課から各都道府県、指定都市に対し、「電子情報処理組織を使用して本人から住民票の写しの交付請求を受け付ける場合の取扱いに係る質疑応答について」(総行住第五十五号。以下「総務省通知」という。)が地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十五条の四第一項に基づく技術的助言として発出された。
 これに関連して、以下質問する。

一 LINEによる住民票請求について
 1 一般的に、国は、市区町村による住民票の写しの交付に関する事務の処理が法令の規定に違反していると認める場合又は適正を欠いていると認める場合、当該市区町村に対してどのような対応を行うことが可能か。また、市区町村がこれに従わない場合、国は、当該市区町村に対し、地方交付税の減額など、不利益な取扱いをすることが可能か。それぞれ回答されたい。
 2 総務省は、LINEによる住民票請求を提供している渋谷区に対し、どのような方法により、どのような改善を促したのか回答されたい。また、渋谷区は法令上これに従う義務があるか、回答されたい。
 3 LINEによる住民票請求が法令の規定に違反していると認める場合等には、地方自治法の規定に基づき、総務大臣は是正の要求の指示等を行うことが可能であると考えられる。今後も改善が認められない場合、渋谷区に対してこれらの関与を行う予定はあるか。行う予定が無い場合、何故行わないのか、回答されたい。
二 地方自治法第二百四十五条の四第一項に基づく「技術的助言」の性格について
 1 一般的に、地方自治法第二百四十五条の四第一項に基づく「技術的助言」について、地方自治体は、法令上従う義務はあるか。政府の見解を問う。
 2 総務省関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則(平成十五年総務省令第四十八号。以下「主務省令」という。)第四条第二項は、オンラインによる請求には、電子署名が必要である旨を規定した上で、同項ただし書において、「行政機関等の指定する方法により当該申請等を行った者を確認するための措置を講ずる場合は、この限りでない。」と規定している。渋谷区では、同項ただし書に基づき、LINEによるサービスを実施している。
  これに対し、総務省通知では、「住民票の写しの交付制度については、なりすまし等不当な手段による交付請求が行われることにより個人情報が漏えいすることを防ぐため、(中略)主務省令第四条第二項のただし書の規定は適用されない」との解釈を示している(以下「主務省令第四条第二項ただし書の解釈」という。)。この主務省令第四条第二項ただし書の解釈は、技術的助言にすぎないため、従うか否かは市区町村の判断に委ねられているという理解でよいか。政府の見解を問う。
三 LINEによる住民票請求では、住民票の写しの送付先は住民票記載の住所に限られている。よって、なりすましにより住民票の写しを不正に取得することは困難であるため、個人情報の漏えいは生じ難いと考えられるが、政府の見解を問う。また、主務省令第四条第二項ただし書の解釈で示すように、LINEによる住民票請求では個人情報が漏えいするというのであれば、具体的にどのような個人情報がどのような形で漏えいすることを想定しているか、回答されたい。
四 住民票の写しの交付請求は、請求書と本人確認書類の写し等を送付することで、郵送によっても行うことが可能である。総務省通知では、郵送による住民票の写しの交付請求は、住民基本台帳法第十二条第七項等の規定に基づき、従前より、住民基本台帳制度下において認められてきたものであり、また、郵送請求の際は、請求書に自署又は押印を行わせることとしていることから、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第二百二十八条第四項の規定に基づき、送付される請求書は真正に成立したことが推定されるとしている。
 1 郵送による交付請求において、これまで、なりすまし等不当な手段によって交付請求が行われ、個人情報が漏えいした事例は何件あるか。また、本人になりすました不正な取得や、委任状を用いて代理人になりすました不正な取得、公用や第三者における不正な取得といった取得類型別の詳細件数について、政府で把握されている件数をそれぞれ回答されたい。
 2 郵送による住民票の交付請求における本人確認方法は、請求者の容貌と本人確認書類の写しの顔写真とを照合しない方法を採用している。一方、LINEによる住民票請求における本人確認方法は、異なる角度から撮影した二点の請求者の容貌の画像データと顔写真付き本人確認書類の写真の画像データを、AI(人工知能)顔認証システムと職員によって照合する方法を採用している。
  LINEによる住民票請求は、郵送による場合と比べ、本人確認書類の顔写真との照合を行う点で、改ざん、なりすましの可能性が低いと思われるが、政府の見解を問う。
 3 郵送による交付請求の場合、請求者の住民票記載の住所への郵送による交付を原則としているが、理由及び送付場所が正当と認められるときは、請求者の住所以外の場所に郵送することも可能となっている。一方、LINEによる住民票請求の場合、送付先は住民票記載の住所に限られており、郵送による交付請求の場合と比べて、個人情報が漏えいする可能性は低いのではないか。政府の見解を問う。
五 オンラインによる金融機関の預金口座開設時等においては、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号。以下「犯罪収益移転防止法」という。)による厳格な本人確認が求められている。
 LINEによるサービスは、本人確認方法として、同法施行規則でも認められている「electronic Know Your Customer」(以下「eKYC」という。)という精度の高いAIによる顔認証を使ったオンライン上の本人確認を実装した認証強度の高い方法を採用している。
 1 eKYCを、オンラインによる預金口座開設時等の本人確認手法として認めた理由を明らかにされたい。
 2 総務省は、eKYCを用いたLINEによるサービスについて、画像の改ざん、なりすましの防止の観点から問題があるとしている。これは、犯罪収益移転防止法施行規則で認められているeKYCについて、画像の改ざん、なりすましのおそれがあり、個人情報漏えいの可能性があるということか。政府の見解を問う。
 3 電子情報処理組織を使用した住民票の写しの交付請求とオンラインによる預金口座開設時等で採用する本人確認手法に差を設けている理由は何か、回答されたい。
六 課税(非課税)証明書、所得証明書、納税証明書等(以下「証明書等」という。)と住民票の写しの交付請求の差異について
 1 LINEによるサービスは住民票の写しに加え、証明書等の交付請求も可能となっている。しかし、総務省は住民票の写しの交付請求の取扱いについて言及する総務省通知を発出したのみである。したがって、LINEによる証明書等の交付請求手続については、なりすまし等不当な手段による交付請求が行われる問題は生じないと考えているのか。見解を問う。
 2 証明書等には、氏名、住所、納税額などの個人情報が記載されるにもかかわらず、証明書等の交付請求の根拠たる地方税法には厳格な本人確認を求める規定が存在しない。証明書等の交付請求の際に法律で厳格な本人確認を求めていない理由について回答されたい。
 3 住民票の写しと証明書等の間で、交付請求の際の本人確認の在り方について、法律上の取扱いが異なる理由について、回答されたい。
七 LINE株式会社は、本年九月二十四日、今後マイナンバーカードを用いた公的個人認証サービス(JPKI)による認証の対応を可能にすると発表した。住民票の写しの交付請求において、同社が想定しているような、LINE上で、マイナンバーカードの電子証明書により本人確認を行う場合には、法律上問題は生じないと解釈されるのか。政府の見解を問う。
八 令和元年六月二十六日開催の「第五十五回 Pitch to the Minister 懇談会」において、平井国務大臣(当時)等の出席の下、千葉県市川市における電子署名を用いないLINEによる住民票の申請に係る実証実験について、LINE株式会社から説明聴取等が行われている。
 1 懇談会の議事概要によれば、「どの手続きに対しどの程度の本人確認が必要か、手続きを行う上での整理とガイドラインの作成が必要である」等の意見があったとのことだが、政府として、何らかの対応は行ったのか、回答されたい。
 2 渋谷区におけるLINEによる住民票請求では、前述の通り、請求情報の入力、請求者の容貌の画像及び顔写真付き本人確認書類の画像の送信を求め、本人確認方法として、請求者の容貌の画像データと顔写真付き本人確認書類の写真の画像データを照合する方法を採用している。一方、市川市におけるLINEによる住民票の写しの交付請求(以下「市川市におけるLINEによる住民票請求」という。)では、請求情報の入力及び本人確認書類の画像の送信のみを求め、本人確認方法として、請求者の容貌の画像と本人確認書類の顔写真の画像データとを照合しない方法を採用しており、両者には差異がある。
  政府として、市川市におけるLINEによる住民票請求の適法性又は適正性についてどのように考えているか、回答されたい。
九 地方自治法第一条の二第二項は、「(前略)住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団体との間で適切に役割を分担するとともに、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たって、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。」と定めている。
 国による地方への過剰な介入は、自治体の創意工夫や活力を奪う危険性がある。LINEによるサービスは、渋谷区が住民サービス向上のため、その努力により提供されたものと考えられるが、このような、各自治体の努力による多様なサービスの提供の在り方は、地方自治法の趣旨に鑑みても可能な限り認められるべきと考えるが、政府の見解を問う。

 右質問する。

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