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令和三年六月九日提出
質問第一七三号

駐車場におけるスプリンクラー消火設備の有効性及び二酸化炭素を用いた消火設備の危険性に関する質問主意書

提出者  丸山穂高




駐車場におけるスプリンクラー消火設備の有効性及び二酸化炭素を用いた消火設備の危険性に関する質問主意書


 諸外国の駐車場における消火設備の状況及び「衆議院議員丸山穂高君提出二酸化炭素を用いた消火設備の危険性に関する質問に対する答弁書(内閣衆質二〇四第一〇〇号)」(以下「答弁書」という。)を踏まえ、次の事項について質問する。

一 駐車場におけるスプリンクラー消火設備の有効性について
 1 総務省消防庁において、令和元年七月三十一日から開催されている「特殊消火設備の設置基準等に係る検討部会」(以下「検討部会」という。)の令和元年度第一回配付資料の「海外における消防用設備等の設置基準に係る資料文献調査事業報告書(概要版)」によれば、米国では、消火設備の設置要件は、IFC(International Fire Code)で規定されており、消火設備の具体的な技術基準やメンテナンス基準は、全米防火協会(NFPA)が発行する技術基準を参照するのが一般的であるとされている。
  米国以外の国においても、法令等を策定する際に、消火設備の設置要件や技術基準について、全米防火協会の基準を参照している国がある。このことから、全米防火協会の基準は国際的な信頼度が高いと推察されるが、日本においても消火設備の設置要件や技術基準を規定するに当たり、全米防火協会等の外国の基準を参考にすることはあるか。
 2 令和元年度第一回検討部会における配付資料の「特殊消火設備における現行基準の整理」によれば、米国、英国、仏国及び韓国においては、建物の規模による設置基準の差はあるが、駐車場に通常設置される消火設備は、スプリンクラー設備とされている。
  また、英国では、コミュニティ・地方自治省(当時)が二〇〇七〜二〇〇九年に駐車場を模したスペースに三台の車を並べた状態での火災試験の結果を報告書(Fire spread in car parks–BD2552)にまとめている。報告書によると、スプリンクラー設備は一台の車両から隣接する車両への延焼防止に有効であったとされている。
  右記の諸外国の状況を踏まえると、スプリンクラー設備には一定の有効性が認められると考えられるが、駐車場内の火災に対するスプリンクラー設備の有効性について、政府はどのように考えているのか、回答されたい。
 3 我が国の消防法令では、駐車場へのスプリンクラー設備の設置を認めておらず、一般的に駐車場に設置する消火設備としては泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備が採用されている。この理由の一つとして、乗用車の燃料として使用されるガソリンや軽油等の引火性液体(消防法危険物第四類)の火災の消火に水を使用すると、むしろ火災を広げてしまうおそれがあるためと推察されるところである。しかし、スプリンクラー設備は、前述の英国の報告書で延焼防止に有効であったとされていることに加え、放出されるのは、発がん性が疑われる薬剤や、人体に危険な二酸化炭素等のガスではなく人体に安全な常温の水である。このように一定の有効性が認められ、人体にも安全なスプリンクラー設備を駐車場の消火設備の対象から除外してきた合理的理由について、政府の見解を問う。
  また、前述の「特殊消火設備における現行基準の整理」では、「電気自動車や燃料電池自動車等の普及や自動車に求められる安全基準の変化等により、駐車場において大量にガソリン等の燃料が漏れ出し、それに伴い火災が発生することは想定されにくくなっているのではないか」との指摘がなされている。今後、このような社会情勢の変化にあわせて、駐車場へのスプリンクラー設備の設置を認めるなど、消火設備に関する法令等の見直しについて、検討する予定はないか、政府の見解を問う。
二 二酸化炭素を用いた消火設備の危険性について
 1 我が国においては、近年、常時人がいない昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造の駐車場(以下「機械式駐車場」という。)における二酸化炭素を用いた消火設備(以下「二酸化炭素消火設備」という。)による死傷事故が相次いでいる。
  機械式駐車場の防護区画内は、通常人が立ち入ることはないが、点検、工事等でやむを得ず人が立ち入ったこと等に起因して、これまでの死傷事故が発生していることから、機械式駐車場に二酸化炭素消火設備を設置する場合、どのような安全対策を講じても、人体に対する危険性を完全に排除することはできないと思われる。人の生命や安全を守る観点からは、機械式駐車場に二酸化炭素消火設備を設置すること自体適切ではないと考えるが、政府の見解を問う。
 2 令和元年度第三回検討部会における配付資料の「自走式駐車場に設置される消火設備の検討」及び「駐車場において発生した火災事例一覧」において、平成二十一年から三十年までの駐車場等における火災事例について分析されている。この中で、不活性ガスあるいはハロゲン化物消火設備が設置されていた機械式立体駐車場における火災事例が四件報告されており、そのうち一件が、二酸化炭素消火設備が設置されている事例であった。この事例は、二酸化炭素消火設備を手動起動させたものの、センサーが異常を感知したため作動しなかったものである。政府は答弁書「一について」において、「二酸化炭素を用いた消火設備は有効な消火設備の一つであると考えている」としているが、当該資料では、二酸化炭素消火設備を設置している機械式立体駐車場における火災事例の報告が十年間で一件という中で、その有効性をどのように判断したのか。
  また、当該資料に記載されている事例以外で、火災時に二酸化炭素消火設備が作動し消火活動に有効性が認められた事例及び火災時に二酸化炭素消火設備が作動しなかった事例について、政府が把握しているのはそれぞれ何件か。
 3 米国におけるNFPA12(Standard on Carbon Dioxide Extinguishing Systems)では、既設を含めた全ての全域放出方式の二酸化炭素消火設備及び一部の局所放出方式の二酸化炭素消火設備について「ロックアウトバルブ」の設置を義務付けている。このロックアウトバルブは、二酸化炭素消火設備の二酸化炭素の放出弁を閉鎖し施錠するもので、これにより、防護区画内への二酸化炭素の放出を物理的に遮断することが可能となるため、防護区画内において点検、メンテナンス、工事等を行う人々を危険から守る重要な手段とされている。総務省消防庁が平成九年に発出した「安全対策上のガイドライン(全域放出方式の二酸化炭素消火設備の安全対策ガイドラインについて(通知))」(以下「安全対策上のガイドライン」という。)の中ではロックアウトバルブに関する言及は無いが、これまで総務省消防庁等の発出した通知等でロックアウトバルブについて、言及したことはあるか。
  また、ロックアウトバルブの設置の義務付けについて、具体的な検討を進める予定はあるか、政府の見解を伺いたい。
 4 二酸化炭素消火設備については、消防法令及び安全対策上のガイドライン等において、半年に一回の機器点検及び年一回の総合点検が義務付けられている。
  報道によると、二酸化炭素消火設備が設置されている建物について、点検費用を惜しむ等の理由により、三十年以上、点検を怠り続けている事例もあったとのことである。これまで政府は、二酸化炭素消火設備の点検について、建物の管理者等にどのように実施を促してきたのか、また、点検を怠る建物の管理者等に対してどのように対処してきたのか、回答されたい。
  加えて、政府は、答弁書「二について」において、「消火設備の技術基準やガイドラインに基づき必要な安全対策が講じられる場合には、安全上の問題はないと考えているが、今回の事故を踏まえ、安全対策の徹底等について注意喚起を行ったところであり、また、一層の安全対策について検討することとしている。」とある。二酸化炭素消火設備による死傷事故が相次いだことを踏まえ、一層の安全対策について、どのような検討を行うこととしたのか、具体的に示されたい。また、安全対策の一環として、設備の点検強化を促すため、何らかの措置を講ずることとしたのか、検討状況を含めて回答されたい。

 右質問する。

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