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令和五年四月六日提出
質問第四九号

有明海等の再生対策における海域環境の調査等に関する質問主意書

提出者  原口一博




有明海等の再生対策における海域環境の調査等に関する質問主意書


 国は、平成九年四月の諫早湾干拓潮受堤防の締切り後、平成十二年度の有明海のノリ不作を契機として、国民的資産である有明海等を豊かな海(「宝の海」)として再生させることを目的として制定された「有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律」(平成十四年法律第百二十号)に基づき、有明海等の海域の環境と当該海域における水産資源との関係に関する調査等を行っている。また、平成十六年五月十一日に示された農林水産大臣の判断、すなわち、「中・長期開門調査を実施するのではなく、これに代わる方策を進めていく」旨の判断の提示後、同法等に基づき、有明海等の再生対策に係る事業を実施している。
 具体的には、有明海等の再生に向けて、海域環境の保全・改善と水産資源の回復等による漁業の振興を図るため、有明海沿岸四県が協調し、海域環境の調査、魚介藻類の増養殖対策を行うとともに、漁場改善対策を推進するなどしており、有明海特産魚介類生息環境調査委託事業、国営干拓環境対策調査、有明海漁業振興技術開発事業等を実施している。そして、この有明海等の再生対策の事業(以下「有明海再生事業」という。)には、これまで約二十年間にわたり多額の国費が投じられており、令和五年度予算においては、有明海特産魚介類生息環境調査委託事業に六億円、国営干拓環境対策調査に三億二千八百万円、有明海漁業振興技術開発事業に四億円等、計十七億六千五百万円が計上されている。
 また、農林水産大臣は、諫早湾干拓事業に係る請求異議訴訟の最高裁判所の決定(令和五年三月一日)を受けて、令和五年三月二日に、「これからは、有明海の再生に必要な水産資源の回復に向けた調査についても、多様な方々の参画の下で進めてまいります。」などとした談話(以下「農林水産大臣談話」という。)を発表している。
 一方で、有明訴訟原告団・弁護団と行動を共にする有明海漁民・市民ネットワークは、同月七日に、最高裁判所の決定に関する抗議声明を発表するとともに、農林水産大臣宛てに「二〇二二年度の有明海ノリ不作に関し、特措法による救済と諫早湾の開門調査を求める申し入れ」を提出している。また、佐賀県議会は、同月十日に、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第九十九条の規定に基づく意見書として、内閣総理大臣、農林水産大臣等宛ての「有明海再生に係る諸問題について解決を図るよう求める意見書」(以下「佐賀県議会意見書」という。)を可決し、有明海再生に係る諸問題について真摯に対応し、解決していくよう求めている。
 これらを踏まえ、有明海再生対策における海域環境の調査等について、以下、質問する。

一 農林水産大臣談話において、有明海の水産資源について、水産資源の回復の兆しが見られる旨の発言が行われている。
 しかし、佐賀県議会意見書によれば、「近年、有明海佐賀県海域では赤潮の発生が相次ぎ、海苔の色落ち被害や生産枚数の減少などにより漁業者の経営状況は逼迫している。また、タイラギについても十一年目の休漁となり、他の二枚貝も採れない状況が続いており、有明海再生に至っていない」とされ、有明海漁民・市民ネットワークの抗議声明等においても、「諫早湾が干拓事業によって閉め切られた一九九七年以降、水質の悪化や潮流の変化によって赤潮や貧酸素水塊が頻発するようになり、魚介類の水揚げは減少の一途をたどっている。ノリ養殖は二〇〇〇年度に大不作が発生し、その後も不安定な生産が続いていたが、今季再び大規模な生育不良に見舞われている」などとされており、農林水産大臣談話と異なる認識を表明している。
 そこで、農林水産大臣談話において、前述のような有明海の水産資源の回復の兆しが見られる旨の発言を行った趣旨・理由を明らかにされたい。また、発言に至った根拠(水産資源の種類ごとに漁獲高の推移、事実の確認など)を具体的に明らかにされたい。
二 農林水産大臣談話において、これからは有明海の再生に必要な水産資源の回復に向けた調査についても進めていくとしているが、当該調査の必要性、具体的な調査内容、調査対象区域、費用(予算額)等を明らかにされたい。また、現在、有明海再生事業の一環として実施している「有明海特産魚介類生息環境調査委託事業」及び「国営干拓環境対策調査」との違いについても明らかにされたい。
三 佐賀県議会意見書によると、近年、赤潮の発生が相次ぎ、海苔の色落ち被害や生産枚数の減少などにより漁業者の経営状況は逼迫しており、「有明海の再生のために、開門調査を含む有明海の環境変化の原因究明が必要だ」などとされている。また、有明海漁民・市民ネットワークの抗議声明等においても、潮受堤防の締切り後、水質の悪化や潮流の変化によって赤潮や貧酸素水塊が頻発するようになり、魚介類の水揚げは減少の一途をたどっており、「有明海異変の根本的な原因解明や環境改善のためには、諫早湾干拓の排水門を開放して海水を導入し、潮流を回復させることが必要である。この開門調査によって赤潮・貧酸素水塊の抑制効果を検証し、今後のさらなる対策を検討すべきである」などとされている。
 国は、約二十年間にわたり、多額の国費を投じ、毎年、有明海再生事業を実施し、有明海等の再生対策を行っているにもかかわらず、このような甚大な被害を防止するなどの効果が発現しておらず、根本的な原因究明及び環境改善等の成果につながっていないことは明白である。
 このような有明海再生事業を継続しても、毎年度、無駄な国費を支出し続けるだけであり、有明海等を豊かな海(「宝の海」)として取り戻すには、今まで、政府が逃げてきた開門調査に対し真摯に取り組むべきであるが、開門調査の検討及び実施の必要性について、政府の見解を示されたい。
 また、仮に、開門調査の検討及び実施は不要又は困難とする場合は、その理由を具体的に明らかにされたい。さらに、その場合、現行の有明海再生事業に代わる取組・対策、すなわち、有明海等を再生するための実効性ある新たな取組・対策が必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。
四 佐賀県議会意見書において、有明海が以前のような「宝の海」に戻ることができるよう、国は、関係する者の意見やその思いをくみ取り、早期に問題の解決を図るよう強く要望している。これに対する政府の今後の具体的な対応策等を明らかにされたい。

 右質問する。

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