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令和五年五月二十三日提出
質問第六五号

国民の利便性の向上のための行政サービスのDXに関する第三回質問主意書

提出者  早稲田ゆき




国民の利便性の向上のための行政サービスのDXに関する第三回質問主意書


一 eMAFF及びeMLITについて
 1 年間百億円のランニングコストについて
  令和五年三月二十九日付け質問主意書及び同年四月二十六日付け質問主意書(以下「第二回質問主意書」という。)において、農林水産省共通申請サービス(eMAFF)は、行政事業レビューシートによると年間約五十億円の予算を計上しており、国土交通省の国土交通省手続業務一貫処理システム(eMLIT)は、行政事業レビューシート上不明であるが、同額程度とすることについては、令和五年四月七日付け答弁書(以下「第一回答弁書」という。)及び同年五月十二日付け答弁書(以下「第二回答弁書」という。)において特段否定していないため、eMAFF及びeMLITは、年間百億円の巨額なランニングコストが生じていると言える。
  eMAFF及びeMLITは、デジタル庁が整備するe−Govと同じシステムであるとの指摘については、第一回答弁書及び第二回答弁書においても、このランニングコスト年間百億円に見合う違いについて答弁されていない。また、違いが「システムの特性」と第一回答弁書にあったが、第二回答弁書では、第二回質問主意書において官製談合を指摘したところ「システムの特性」は「行政手続の特性」となっており、一貫性がない。毎年百億円の税金に見合う答弁がない以上、国民の理解を得るものではないことから、eMAFF及びeMLITは廃止すべきではないか。政府の見解をあきらかにされたい。
 2 eMAFFについて
  具体的には、第一回答弁書の地図機能について、第二回答弁書においては、「eMAFFについては、農業者等が行う申請に農地に関係したものが多いという特徴を踏まえ、農地の地番と正確に対応した位置情報、面積、所有者等の情報を搭載した農地の地図等、農林水産省が所管する行政手続に係る事業者や行政職員等の負担を大幅に軽減するために必要な情報を常に参照することができるようにしておく等の必要があると認められること」ということが三回も答弁されている。しかしながら、これは第二回質問主意書で指摘したとおり、農林水産省地理情報共通管理システム(eMAFF地図)とのバックヤード連携や法務省が保有する不動産登記情報とのバックヤード連携をすればよいだけで、eMAFFではなくe−Govに対してバックヤード連携すれば解決できる問題であり、年間五十億円も必要がない。そもそも第二回質問主意書において、農林水産省共通申請サービス(eMAFF)及び農林水産省地理情報共通管理システム(eMAFF地図)は区別していること、また、農林水産省が公開する令和五年度予算概算要求の概要においても、eMAFFは五十億円であることに対して、農地台帳、水田台帳及び筆ポリゴン等のeMAFF地図の開発・運用は三十億円と区別していることから、eMAFF及びeMAFF地図を混同する答弁は不適切である。年間五十億円に見合うe−Govとの違いがないならば、eMAFFは廃止すべきではないか。政府の見解をあきらかにされたい。
 3 eMLITについて
  (1) ChatGPT等の活用について
   第一回答弁書の地図機能について、第二回答弁書においては、「eMLITについては、国土交通省が所管する行政手続の特性を踏まえ、例えば、申請時に地図情報を参照することができるようにすることにより、当該地図情報上において、容易に当該申請の対象となる施設等や当該申請を受け付ける地方支分部局を指定することができるようにしておく等の必要があると認められること」ということが三回も答弁されている。
   ところで、試しに、皇居を一周するイベントで、小規模な道路工事や映画撮影を伴うものを実施する場合に、どの官公庁にどのような手続をすればよいかChatGPTに聞くと、警察庁の麹町警察署において道路交通法に基づく道路使用許可、国土交通省の東京国道事務所、東京都、千代田区において道路法に基づく道路占用許可、環境省の皇居外苑管理事務所の国民公園の許可といった回答がもらえた。つまり、このような機能を年間五十億円もかけて整備する必要もなく、e−GovにChatGPT等のいわゆる生成AI(以下「ChatGPT等」という。)を活用すれば安価である。また、eMLITは、第一回答弁書及び第二回答弁書にあるとおり「国土交通省の所管する手続」しか扱わないため、ChatGPT等のように麹町警察署の道路使用許可や東京都や千代田区の道路占用許可、環境省の皇居外苑管理事務所の国民公園の許可等を国民に案内することができない不便なものである。そもそも国民が必要な手続が国土交通省所管か否かもわからないことが多いのだから、このような機能では不十分であり、e−GovがあるならばeMLITそのものが不要である。第二回答弁書において、「ChatGPT」の活用については、現在、政府全体で「ChatGPT」等のいわゆる生成AIに関する検討を進めているところであると前向きに答弁しているのだから、この答弁のとおり積極的にe−GovにChatGPT等を活用すれば、年間五十億円も必要ない。年間五十億円に見合うe−Govとの違いがないならば、eMLITは廃止すべきではないか。なお、eMLITは未だ稼働しておらず、年間五十億円未満なのかもしれないが、いずれにせよ後述する部分も踏まえて、政府として承知しているe−Govとの違いをあきらかにされたい。
  (2) 内閣府の中間答申によるe−Govについて
   ネット検索すると、「規制改革推進に関する中間答申」(令和四年十二月二十二日)の「道路占用に係る手続のワンストップ化」において、国土交通省、都道府県及び市町村の道路法に基づく道路占用許可並びに警察庁の道路交通法に基づく道路使用許可を、デジタル庁とともにe−Govで取り扱うことが詳細に記載されている。道路占用許可及び道路使用許可は全国で年間数百万件と多いため、地図機能も同様に整備されることも容易に推測される。
   また、道路占用許可及び道路使用許可をe−Govで取り扱うならば、類似の河川許可、都市公園許可、港湾許可、海域許可などが考えられ、他省庁でも農林水産省の農道許可、漁港許可、環境省の自然公園・国民公園許可など、それらもe−Govで取り扱うことができるものと推測される。
   そうすると、第二回答弁書にあるこのeMLITの機能は国土交通省所管のどの手続で年間何万件のものをデジタル化しようと想定して記載しているのか不明となり、また必要性も感じられないことから、どの行政手続等についての答弁か明確になるよう「年間数百万件の道路法に基づく道路占用許可」といったように具体的に答弁されたい。なお、手続数が多くて回答困難ならば、年間件数が多い手続あるいは代表的な手続として政府が承知している手続を五つ程度答弁されたい。
  (3) e−Govにないその他の機能とその行政手続について
   そもそも、第二回答弁書にある「eMLITについては、国土交通省が所管する行政手続の特性を踏まえ、例えば、申請時に地図情報を参照することができるようにすることにより、当該地図情報上において、容易に当該申請の対象となる施設等や当該申請を受け付ける地方支分部局を指定することができるようにしておく等の必要があると認められること」のみで年間五十億円もかかることは素人でも考えられず、「例えば」と記載しているため他の機能があると思われる。それでもそのような機能が必要な行政手続が存在するならば、どの行政手続等で何が必要な機能か明確になるよう「年間数百万件の道路法に基づく道路占用許可において地図機能が必要」といったように具体的に答弁されたい。なお、手続数が多くて回答困難ならば、年間件数が多い手続あるいは代表的な手続を挙げながら政府が承知している必要な機能について五つ程度答弁されたい。
 4 まとめ
  (1) デジタル庁における理由公開について
   上記3(2)及び(3)において、手続数が多くて回答困難であったとしても、年間五十億円をかける必要があるか否か国民が理解できるようその理由は別途デジタル庁のホームページにおいて公開すべきではないか。また、eMAFFについても第二回答弁書では不適切であり、同様に年間五十億円をかける必要があるか否か国民が理解できるようその理由は別途デジタル庁のホームページにおいて公開すべきではないか。それすらもできないならばeMAFF及びeMLITは、ランニングコスト年間百億円に見合うものではなく、即刻廃止すべきではないか。政府の見解をあきらかにされたい。
  (2) 職員個人に対しての弁償責任等について
   デジタル庁は、令和四年十月十四日付けで、eMLITの予算の執行を停止したり、地方公共団体のLGWAN等の連携を禁止するなどのレビュー結果という形で決定しているにもかかわらず、これが無視され、また二度の答弁書を通じても、eMAFF及びeMLITの廃止はしないと、年間百億円のランニングコストについて特に弁明することなく強弁している。このような状況であれば、eMAFF及びeMLITの開発や維持運用の契約に従事する予算執行職員等に故意又は重大な過失があるといわざるを得ず、会計検査院は、会計検査院法第三十一条及び第三十二条のとおり、予算執行職員個人に対しても弁償責任等の責任を追及すべきと考える。予算執行職員等の責任に関する法律第八条により、部下がやむを得ず従っているが、上司に弁償責任が転嫁されているとも考えられるので、それも留意した上で政府の見解をあきらかにされたい。
二 開示請求の全国一斉オンライン化について
 開示請求の全国一斉オンライン化について、第二回答弁書において、遅くとも令和七年度までに実現することは特段否定されていないため、やむを得ない理由により多少の遅れはあったとしても、概ね令和七年度までに実現すると考えられるので、「当該業務のプロセス全体の効率化にも留意しつつ、当該業務の実情等も踏まえ、(略)現時点では、お尋ねについてお答えすることは困難」との答弁を踏まえ、次期国会においてあらためて質問したい。
 ただし、「当該業務のプロセス全体の効率化」については、第二回質問主意書の「現在開示請求はほぼ全国の職員が手作業や郵便のやり取り等」以外のプロセスも大幅に改善されるように読み取れることから、例えば、手数料のクレジットカード払いといったキャッシュレス化や、国民が開示を求める行政文書をChatGPT等により行政文書台帳等を検索する機能などが考えられるものの、「当該業務のプロセス全体の効率化」が何を指すのか必ずしもあきらかでないため、「当該業務のプロセス全体の効率化」とは何を指すのか、政府として承知している具体例を二、三点あきらかにされたい。
 また、第二回答弁書にある、留意しなければならない「当該業務のプロセス全体の効率化」と、踏まえなければならない「当該業務の実情」とは何をさすのかが必ずしもあきらかでないため、開示請求の全国一斉オンライン化を令和六年度または令和五年度に前倒し実施できない具体的理由をあきらかにされたい。
三 紙の健康保険証と紙の限度額適用認定証の存続について
 1 高額療養費等の周知・広報について
  第二回質問主意書のとおり、「限度額適用認定証がなくても高額療養費制度における限度額を超える支払が免除される」旨の利用者(患者)の視点ではなく、役所と制度の視点から専門用語を羅列した難解な文章について、第二回答弁書において「「利用者(患者)の視点」に立った分かりやすい情報提供ができるよう、御指摘の「具体的」な「金額」及び「グラフ等」の活用も含め、必要な周知・広報を行ってまいりたい」としている。「具体的」な「金額」及び「グラフ等」は例示であって、これらを用いればよいというわけではなく、従来の「限度額適用認定証がなくても高額療養費制度における限度額を超える支払が免除される」旨から、どれぐらい利用者(患者)が理解できたかを指標とすべきである。高額療養費の制度は、貧困防止のセーフティーネットとしての役割もあり、今回のマイナンバーカードと健康保険証の一体化(以下「一体化」という。)により、申請主義から事実上の給付主義に変更するという国民にとって大きな影響がある。「厚生労働省及びデジタル庁が高額療養費の支払を減らし、国民の負担を増やそうと意図的に広報を控えている」わけではないならば、国民の男女でいろいろな世代がどれぐらい理解できたかを定量的に調査して、国民の理解を得ていることを証明すべきではないか。政府の見解をあきらかにされたい。
 2 一体化における想定外の事態について
  第二回質問主意書を提出した後に、一体化により、七千人もの別人の情報が入力され閲覧できたことがマスコミ報道された。このように、一般的に新しいことに挑戦すればたとえよく検討していたとしても想定外の事態が起こることは容易に想像できる。紙の資格確認書も新しいことであるが、第二回答弁書のとおり結局殆ど検討していないことから、想定外の事態は起きやすい。そこで紙の資格確認書は中止し、紙の健康保険証と紙の限度額適用認定証を暫定的に存続させ、先述のとおり高額療養費等のメリットを広く国民に理解していただき、マイナンバーカードに一元化していくことが単純明快で、三者に対する混乱も負担も少なくなるのではないか。政府の見解をあきらかにされたい。
四 デジタル庁及び内閣府の「防災DXサービスマップ」について
 防災分野では、多くの民間企業や地方公共団体が優れたアプリ等を提供しているため、これらを最大限に活用していく必要があるものの、他分野同士でデータ連携がされないと、住民も行政側も多重入力が負担となる。デジタル庁及び内閣府では、防災アーキテクチャを設計の上、データ連携基盤の構築を進めることで、アプリ等においてワンスオンリーを実現し、住民も行政側も災害時に的確な行動等ができることを目指し、令和五年三月十日に、「防災DXサービスマップ」(初版)を公開したと聞いている。
 最近の国、都道府県及び市町村の災害対策本部の様子を映したニュース映像や政府要人の視察や住民に対する取材等のニュース映像を見ると、住民も行政も電話やメールのみでやり取りしており、電話やメールだけでは、住民も行政も時間や作業の無駄が多くなり、お互い心理的な負担にもなっているものと推察される。そこで「防災DXサービスマップ」のように、クラウド型の被害情報収集・共有や防災AIチャットボット等の活用等がなされれば、住民も行政も大幅な業務改善となるものと期待される。
 しかしながら、先述のとおり、e−Govが整備されているにもかかわらず年間百億円のランニングコストを浪費するeMAFF及びeMLITがあるように、「防災DXサービスマップ」を整備していく上でも不要なシステムが大量に潜んでいるものと推測されるので、デジタル庁及び内閣府は、このような不要なシステムは統廃合していくべきではないか。政府の見解をあきらかにされたい。

 右質問する。

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