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令和五年六月十五日提出
質問第一一二号

労災保険のメリット制に関する質問主意書

提出者  宮本 徹




労災保険のメリット制に関する質問主意書


 労災保険制度は、労働者が業務中に被災した場合に対する補償を行うために設けられている制度である。メリット制は、事業主の保険料負担の公平性の確保と労働災害防止努力の促進を目的として、その事業場の労働災害の多寡に応じて一定の範囲内で労災保険率又は労災保険料額を増減させる制度である(労働保険徴収法第十二条第三項)。
 二〇二二年十一月二十九日、東京高等裁判所が、労災保険支給決定に対する事業主による取消訴訟の原告適格を認めず訴えを却下した東京地裁判決を破棄し、事業主による原告適格があることを前提として、地裁に実体審理を行うために差し戻す判決を出した(以下、「本件判決」という)。事業主が労災保険支給決定を争うことを認める本件判決は、被災者・遺族の救済を不安定なものとするものである。かりに、取消訴訟によって、国が敗訴し、取消判決が確定すれば、それまでに受給していた療養補償などの返還義務を負うことになり、生活に深刻な打撃となる。労働者と家族を守る労災保険制度を根本から揺るがすものである。
 本件判決が出た原因は、メリット制によって、直接、使用者の保険料が増大する可能性が生じることにあり、事態の根本的な解決にはメリット制そのものの廃止を含めた見直しが必要と考える。
 よって以下質問する。

一 本件判決を受けて、二〇二二年十二月の厚労省検討会報告書とそれに基づく通達である二〇二三年一月三十一日付基発〇一三一第二号「メリット制の対象となる特定事業主の労働保険料に関する訴訟における今後の対応について」が発出された。同通達は、労災保険料の決定段階において事業主が不服を申し立てることができることとし、当該訴訟において労災支給処分の支給要件非該当性を主張することを可能とするものである。これにより、使用者側が徹底的に争う可能性が生まれることから、労働者がそれを避けたい心理から労災請求自体を躊躇したり、労災認定にあたって事業主が協力しなかったりする(労災保険法施行規則第二十三条の助力義務の不履行)おそれがあるのではないか。また労働基準監督署で労災認定を担当する調査官が委縮し、不服申立がなされないよう、労災認定に際して、必要以上に謙抑的になる可能性があるのではないか。
二 メリット制は、個々の事業の災害率の高低を考慮して労災保険率を上げ下げする制度であるから、個々の事業にとっては、労働災害が発生して保険給付が行われることにより、労災保険率が上がって保険料負担が増大することを避けようとする誘引が働くことになる。日本医師会労災・自賠責委員会答申(二〇一六年二月)は「事業者による「労災かくし」を助長し、一向に排除とならない原因の一つとしてメリット制が挙げられる」と指摘している。メリット制が労災かくしを誘発するという懸念について、政府としてどのように認識しているか。
三 メリット制については、厚生労働省の審議会や検討会において、災害防止効果のエビデンスが示されておらず検証が必要だと、繰り返し指摘されてきた。政府として、メリット制の効果について、どのように検証をおこなってきたのか。効果検証や見直しの必要性について、政府としてどのように認識しているか。
四 全業種の全事業場のうち、メリット制が適用されている事業場数の比率はいくらか。メリット制による割引額の総額はいくらか。メリット制を廃止し、その割引額を全事業に適用される労働保険料の引き下げに当てれば、どれだけの労災保険料の引き下げが可能となるか。

 右質問する。

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