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令和五年六月二十七日受領
答弁第一一二号

  内閣衆質二一一第一一二号
  令和五年六月二十七日
内閣総理大臣 岸田文雄

       衆議院議長 細田博之 殿

衆議院議員宮本徹君提出労災保険のメリット制に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員宮本徹君提出労災保険のメリット制に関する質問に対する答弁書


一について

 お尋ねの「使用者側が徹底的に争う可能性が生まれることから、労働者がそれを避けたい心理から労災請求自体を躊躇」する「おそれがあるのではないか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号。以下「労災保険法」という。)に基づく保険給付の支給の決定又は不支給の決定(以下「労災認定」という。)は労働基準監督署長が労働者等に対して行っているものであり、事業主は労災認定の取消訴訟の原告適格等を有していないものと解している。また、「メリット制の対象となる特定事業主の労働保険料に関する訴訟における今後の対応について」(令和五年一月三十一日付け基発〇一三一第二号厚生労働省労働基準局長通達)において、「労働保険料認定決定取消等請求訴訟判決後の労働基準監督署における労災支給処分の取扱い」に関して、「労働保険料認定決定を取り消す等の判決が確定したとしても、そのことを理由に当該判決の理由中で支給要件非該当性が認められた労災支給処分を行った労働基準監督署が同処分を取り消すことはしない」としているところである。
 お尋ねの「労災認定にあたって事業主が協力しなかったりする(労災保険法施行規則第二十三条の助力義務の不履行)」「おそれがあるのではないか」については、労災保険法第四十六条の規定において、行政庁が事業主等に対し、労災保険法の施行に関し必要な報告、文書の提出又は出頭を命ずることができることとされており、また労災保険法第五十一条の規定において、当該命令に事業主等が違反した場合の罰則が設けられており、適切に履行の確保の措置が講じられていると考えている。
 また、お尋ねの「調査官が委縮し、不服申立がなされないよう、労災認定に際して、必要以上に謙抑的になる可能性があるのではないか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにしても、労災認定は、労働基準監督署長が労災保険法等に基づき適切に判断するものである。

二について

 お尋ねの「メリット制が労災かくしを誘発するという懸念」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、事業者は、労働災害等により労働者が死亡し、又は休業した場合には、労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第九十七条第一項及び第二項の規定に基づく労働者死傷病報告(以下単に「労働者死傷病報告」という。)を提出することとなっており、政府としては、監督指導、集団指導等を通じ、労働者死傷病報告の提出を行うよう事業者に対し指導を徹底するとともに、労働者死傷病報告を提出しない事業者及び虚偽の内容を記載して提出する事業者の把握に努める等の施策を講じているところである。

三について

 御指摘の「災害防止効果のエビデンス」及び「メリット制の効果」の意味するところが必ずしも明らかではないが、昭和二十二年に労働者災害補償保険制度が施行されて以降、労働者数に占める労働者災害補償保険の新規受給者数の割合(以下「新規受給者割合」という。)は増加傾向にあったが、メリット制が適用された昭和二十六年度から昭和二十八年度までの新規受給者割合は大きく減少したところである。また、昭和五十一年度及び昭和五十五年度にメリット制による労災保険率を引き上げ又は引き下げる率の範囲を拡大したが、この後、新規受給者割合は一定程度減少したところである。加えて、厚生労働省が平成十六年に開催した「労災保険料率の設定に関する検討会」の資料「労災保険のメリット制に関する事業主の意識調査結果の概要」において、「メリット制の適用を受けたことがある」と答えた事業主の約八割は、「災害防止意識」の質問について「是非実施しようと思った」と回答している。

四について

 令和三年度において、労災保険法が適用されている事業場数に対するメリット制が適用された事業場数の比率は、五パーセントとなっており、また、同年度においてメリット制が適用された事業場の労災保険料の総額は、当該事業場に、メリット制が適用されなかったとした場合に事業主が支払うべき労災保険料の総額を千五百億円程度下回るものと試算している。また、「メリット制を廃止し、その割引額を全事業に適用される労働保険料の引き下げに当てれば、どれだけの労災保険料の引き下げが可能となるか」とのお尋ねについては、労災保険率は業種ごとに設定されており、全事業場に一律に適用されるものではなく、「全事業に適用される労働保険料」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

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