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令和五年十月二十日提出
質問第一号

遺族年金と養育費に関する質問主意書

提出者  早稲田ゆき




遺族年金と養育費に関する質問主意書


 被保険者が離婚後に死亡した場合、子が遺族厚生年金を受給するためには、生計維持関係、生計同一関係が認定されることを要件としており、その認定は、平成二十三年三月二十三日付年金局長通知「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて〔厚生年金保険法〕」(年発〇三二三第一号)(以下「局長通知」という。)に基づき、日本年金機構が行っているところ、養育費の支払いや親子交流の有無などを総合的に勘案しているとされている。他方、養育費は現在七割以上が受け取れていないところ、国を挙げて養育費受領率向上の達成目標値を掲げ、推進している。そこで以下について、政府の承知しているところ、また政府の見解をあきらかにされたい。なお答弁にあたっては、問を別々に立てた趣旨に鑑み、複数の問に対してまとめて答弁することなく、一問一問について逐一答弁いただきたい。

一 遺族年金の趣旨は、被保険者の死亡により生計の途を失う者に限って給付されるべきであることから、子の側に生計維持・生計同一関係の証明を求めることの必要性は理解するが、一方で、生前に書面で取り決められた養育費が支払われず、多くの場合母親がひとり親で苦労して生計を立てて子を養ってきたことが、遺族年金においては、逆に受給権を否定することになってしまっている。この事実は、局長通知において「ただし、これにより生計維持関係(同じく生計同一関係)の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり、かつ、社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には、この限りでない」旨があるところの、「社会通念上妥当性を欠くこととなる場合」に該当するのではないか。
二 令和五年七月二十八日の社会保障審議会年金部会においても、遺族年金制度を子どもの権利の観点で見直すべきなどの意見があったが、一で述べたように、多くの場合父親である被保険者の、取り決めどおりには養育費を払わないという、生前の非倫理的で、不当な債務不履行が、遺族年金の受給結果に反映されてしまう制度に結果的になっている点は、ジェンダー平等や子どもの権利の観点から再検討が必要ではないか。
三 そもそも生計維持・生計同一関係を、養育費未払いや親子交流の有無等のどの程度をもって認定するのかが、局長通知に基づく日本年金機構の幅広い裁量となっていることは妥当なのか。
四 もし被保険者の相続人から未払い養育費を受け取ることができた場合、遺族年金の生計維持・生計同一関係の認定に影響はありえるか。
五 養育費の受領率引上げの国策との整合性を考えれば、遺族年金制度においても、養育費の支払い実績ではなくその確定債権をもとに生計維持関係を認定するという方針を法令上明記すべきではないか。四についてありえるのであれば、確定債権をもとに生計維持関係を認めることも道理に適っているのではないか。
六 遺族厚生年金の受給権において、子のない再婚相手と前妻の子では、後者に優先順位があることにより、遺族厚生年金を受給するために、子のない再婚相手が被保険者による前妻の子に対する養育費の未払いを助長せしめ、結果として、養育費が未払いである前妻の子が遺族厚生年金を受給できずに、被保険者の債務不履行を手伝った再婚相手が、遺族厚生年金の受給者となってしまう実態があることを政府は承知しているか。これは、債務不履行という違法行為に国が加担していると言わざるをえないのではないか。この点からも養育費の支払い実績ではなく確定債権をもとに生計維持関係を認めるべきではないか。
七 同様に、親子交流は、子がいかに希望しようとも、おおむね親の都合により実現するのが実態であるところ、親子交流の有無や回数を、生計維持・生計同一関係の認定の勘案事項の一つとしていることは、子のない再婚相手が被保険者による前妻の子との親子交流の断絶を助長せしめる結果につながっているのではないか。従って、親子交流の有無や回数を生計維持・生計同一関係の認定の勘案事項から外すべきではないか。
八 現行の遺族年金制度における以下の三つの事実は、国民の感覚から乖離し、社会通念上妥当性を欠いているのではないか。
 1 前妻の子に遺族基礎年金の受給権はあるが、再婚相手に子がいようとなかろうと、前妻に扶養されている限り支給停止
 2 前妻の子には遺族厚生年金の受給権もあり、前妻に扶養されていても支給されるが、再婚相手に子がいる限り支給停止
 3 前妻の子は前妻が亡くなったとしても、再婚相手に子がいる限り、遺族基礎年金も、遺族厚生年金も支給停止のまま
九 遺族厚生年金は、歴史的経緯として基本的に配偶者のためにあると承知しているが、昭和六十年改正で厚生年金保険法第六十六条に第二項が加わり、子のない配偶者より、子が優先されることになった一方で、生計を同じくする父または母がいる子に遺族基礎年金が支給停止されるままになっていることは、遺族基礎年金と遺族厚生年金の趣旨・制度にねじれを生じさせているのではないか。

 右質問する。

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