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令和五年十一月九日提出
質問第二四号

岸田内閣の財政運営規律と増税緊縮路線等に関する質問主意書

提出者  原口一博




岸田内閣の財政運営規律と増税緊縮路線等に関する質問主意書


一 内閣府が経済財政諮問会議に提出した資料によれば、令和元年度末には二・四兆円に過ぎなかった国の基金残高が、令和五年度末時点では十二・七兆円になるとのことである。
 我が国は財政赤字であるから、これらの基金への拠出は国債を財源としていると考えられる。金利上昇が懸念される中で、基金への巨額の拠出は利払いを通じて国民負担を増加させることにつながる懸念はないのか、政府の見解を伺いたい。
二 一の内閣府資料によれば、令和五年度における基金からの支出はGDP比の一%強に相当する七・五兆円が見込まれるとのことである。この支出がデフレギャップ解消に寄与するとしても、急激に積み増した基金から非効率な支出がなされては意味がないと考える。
 以上を踏まえ、残高が積み上がっている基金からの支出の効率化について政府の見解を伺いたい。
三 令和四年度予算においては、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費及びウクライナ情勢経済緊急対応予備費として合計十兆八千六百億円が計上されたが、三兆七千七百八十五億円の残額が生じた。
 令和五年度予算においては、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費とウクライナ情勢経済緊急対応予備費の合計で五兆円が計上されているが、令和五年十月二十六日時点で使用実績はない。また、令和六年度予算概算要求においても、これらの予備費が事項要求されている。
 「令和六年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」(令和五年七月二十五日、閣議了解)では、これらの予備費について、「今後の状況を踏まえ、予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずる。」とされているところであり、どのような検討がなされているのかお示し願いたい。
四 岸田総理は、令和五年九月二十六日の閣議において「成長の成果である税収増を国民に適切に「還元」すべき」との考えを表明した。その後、同年十月二十四日の衆議院本会議において「過去二年のコロナ禍における税収の増収分の一部を分かりやすく国民に「還元」できれば」と答弁している。
 これらに関連して、以下質問する。
 1 岸田総理が発言した、これらのいわゆる「還元」とは、具体的に何をすることを指すのか。政府の見解を示されたい。
 2 鈴木俊一財務大臣は、令和五年五月十九日の衆議院財務金融委員会において、特例公債の発行を最大限抑制した後に、見込み以上に税収が伸びて、結果として決算剰余金に反映された場合には、防衛力強化の財源として活用されることになる旨を述べている。また、政府は、決算剰余金の使途について、その二分の一を財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第六条に基づき公債の償還に充て、残りの二分の一を防衛力強化の財源に充てる方針としている。
  他方で、令和五年十月二十四日の岸田総理の発言からは、税収の増収分の一部を国民に「還元」するものと受け取れる。
  税収や特例公債の増減、歳出の不用の結果により決算剰余金の金額が確定されるが、その際には特例公債は可能な限り発行の抑制に努めることとされており、また、決算剰余金の使途の方針がある中で、「税収の増収分の一部を国民に「還元」する」ための財源をどのように確保することが適当と考えているのか、政府の見解を示されたい。
五 令和五年二月十日の衆議院内閣委員会において、金子俊平財務大臣政務官は消費税について「預り金的な性格でありまして、預かり税ではありません。」と答弁している。この答弁で言う「預り金的な性格」と「預かり税」はどのように違うのか。政府の見解を示されたい。
六 課税事業者が日本国内で仕入れた商品を全て輸出した場合、売上げに係る消費税が免除される一方、仕入れの際に支払った消費税が控除されるため、輸出免税還付金として全額還付される仕組みとなっている。
 この還付金は、国税収納金整理資金から支払われるところ、政府は、輸出免税還付金の金額について、輸出を原因とした還付金を区分していないため金額を把握し公表することはできない旨の説明をしているが、還付金がいくら支払われているのか明らかにしないことは、納税者である国民に対する説明責任を果たしているとはいえない。
 輸出免税還付金の金額及び還付金全体に占める割合について、区分する仕組みを導入し、数字を公表すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。
七 現在の税法上、消費税の納付税額を計算する際、正社員をはじめとする直接雇用されている社員への給与支払いは仕入税額控除できないが、派遣労働者等の非正規雇用労働者の労働契約に基づく支払いは仕入税額控除できる仕組みとなっている。この仕組みにより、非正規労働者を雇えば雇うほど、その事業者が支払う消費税額が少なくて済むことになる。このような消費税の仕組みは、非正規労働者を増やすことに繋がり、雇用の不安定化を招くこととなる。
 そのような弱い立場の人を余計に追い込む仕組みと言える消費税をもって、社会保障費を賄うことは不適切であると考えるが、政府の見解を示されたい。
八 藤井聡京都大学教授は、平成二十六年の消費税率八%への引上げから、令和元年の同税率十%への引上げまでの五年間で、厚生労働省「毎月勤労統計調査」を基にしたサラリーマンの実質賃金は六%下落しており、消費増税と実質賃金の下落に因果関係が認められると指摘する。
 消費税率の引上げは、実質賃金に負の影響を及ぼしていると考えられるが、この点について、政府の見解を伺いたい。
九 インボイス制度の導入による増収額について、政府は令和五年三月十日の衆議院財務金融委員会において「二千四百五十億円」との試算額を示している。これは免税事業者がインボイス発行事業者へと転換した場合の、課税事業者が増えることによる増収額を指すのか。指すとすれば、インボイス制度の導入は課税転換を強いられる免税事業者にとっては実質増税であると考えるが、政府の認識を示されたい。
十 令和五年五月十五日の衆議院決算行政監視委員会において、里見隆治経済産業大臣政務官は「消費税に限らず、コストが上昇する際に、交渉力の強い事業者と弱い事業者の間では、構造的にその上昇分を転嫁することが難しいという問題があるという認識に変わりはございません。」と答弁している。政府は過去の消費税率引上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(平成二十五年法律第四十一号。以下「価格転嫁特措法」という。)で私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)の規定を適用しないとする措置を施したが、現在、価格転嫁特措法は失効している状態である。
 一方、政府は、新規課税事業者が団結して消費税の転嫁についてのカルテルを形成した場合について、「一般論として、事業者が共同して取引価格を引き上げるというようなことは、独占禁止法上の不当な取引制限として問題となる可能性がある」と答弁している。
 アニメーター、フリーライター等の様々な業種の個人事業主は、個別に取引先と価格交渉しづらいため、団体、組合等を構築して連携せざるを得ず、これは価格転嫁特措法がないとカルテルに該当し独占禁止法違反になるおそれが生じると考えられる。独占禁止法の規定を適用しないとする措置を講じないままでのインボイス制度導入は、立場の弱い側に強い側への対抗措置を与えないこととなるため、政府は適切な措置を講じるべきと考えるが、政府の認識及び対応方針を伺いたい。
十一 令和四年度国際収支統計によれば、第一次所得収支は三十五兆六千二百七十六億円の黒字となっている。また、令和四年度末時点の我が国の対外純資産残高は四百十八兆六千二百八十五億円であり、主要国で最大の債権国である(財務省「令和四年末現在本邦対外資産負債残高の概要」)。そして、世界の外貨準備に占める米ドルの割合は低下傾向にあるが、我が国は引き続き米ドルを買い支えている状況である。
 債権国であるということは、価格下落リスクや相手方の破綻リスクも負っていることになり、仮に米ドル価格が下落すれば、本邦が米ドル建てで保有する資産も大きく棄損することになる。つまり、我が国が米国の財政リスクをも負っているかのような状況にある。
 このようなリスクを踏まえて財政運営を行う必要があると考えるが、政府の見解を伺いたい。

 右質問する。

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