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令和五年十一月九日提出
質問第二八号

米国による広島、長崎への原爆投下及び「非核の傘」に関する質問主意書

提出者  原口一博




米国による広島、長崎への原爆投下及び「非核の傘」に関する質問主意書


 北東アジア非核兵器地帯議員連盟は私が日本側の代表を務めている国際議員連盟である。誤った情報で戦争が起こり核兵器国の誤解やコミュニケーション不足で核が使用されるおそれがある中で、核抑止という核の傘ではなく核兵器を使わないと規定する非核兵器地帯、「非核の傘」をつくるべきである。以下、米国による広島、長崎への原爆投下及び「非核の傘」について政府の姿勢を質したい。

一 米国による広島、長崎への原爆投下について
 1 米国においては、未だに、原爆は戦争を終わらせ、結果的に五十万人の米兵の命を救ったものであり、やむを得ないものであったという言説がある。そこで、以下について質問する。
  (一) 米国により我が国の広島、長崎に原爆が投下された当時においても、無辜の市民、非戦闘員の殺害は、戦争の違法化と並んで、禁止されていたのではないか。米国による原爆投下は国際法違反と考えるが、政府の見解を求める。
  (二) 奈良大学の高橋博子教授の資料により、昭和二十年八月十日に、大日本帝国が米国に対して、新型爆弾投下について抗議をしたという資料は当方で確認できているが、それ以外の事例を承知していない。そこで以下について明らかにされたい。
   ア 昭和二十年八月十日の事例以外に日本政府が米国に対して新型爆弾投下について抗議をした事例はあるか。
   イ 戦後、日本政府として一度も原爆投下について米国に抗議した事例を承知していないが、仮に一度も米国に抗議していないのであれば、それはサンフランシスコ平和条約を受け入れているからか。
 2 昭和二十年九月に、マンハッタン計画の副指揮官であるファーレル准将は「残留放射能の危険を取り除くため、原爆は相当の高度で爆発させたので、広島には原爆放射能が存在し得」ないと言った。原爆被害の初期調査には、そうした米国のマンハッタン管区調査団等による被爆調査や、トルーマン大統領指令に基づき設置された原爆傷害調査委員会(ABCC)による調査がある。以下これらについて質問する。
  (一) 日本政府は原爆を投下した米国によるこれらの調査結果について、当時の広島、長崎の現状、あるいは日本の「原子爆弾災害調査研究特別委員会」の調査結果である「原子爆弾災害調査報告集」等を踏まえ、米国に対し、何らかのコメント、意見、あるいは見解を申し述べたことがあるか。
  (二) ABCCの調査結果が、我が国の被爆者の内部被爆や残留放射線による被爆の推定に与えた影響について、政府はどう認識しているか。
  (三) 放射線物質が人体に与える影響の基準として、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告があるが、放射線の安全基準がどれだけ厳しくなったとしても、この勧告の骨格に原爆を投下した国の調査結果であるABCCのデータが用いられているというのであれば、現在の被爆診断に対する不信のみならず、放射線被爆の危険性を軽視する考えを増長させることになると思われるが、政府の見解を問う。
二 「非核の傘」について
 1 日本の周りには、米国や中国、ロシア、北朝鮮など核兵器を保有する国があり、我が国ほど核に囲まれた国はほかに存在しない。そのような環境に置かれた我が国にとって必要な安全保障・外交の姿勢は、善隣友好であり、核廃絶であると考えるが、なぜ我が国は、核兵器禁止条約に参加しないのか。
 2 政府は、「核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め」るとしているが、具体的にどのような行動をとっているのか。
 3 「核兵器国と非核兵器国の橋渡し」などと唯一の戦争被爆国がいうことは、倫理的及び論理的に破綻していると考える。世界には七つの非核兵器地帯がある一方で、現在日本は米国の核の傘の下にいる。そうであれば、日本の位置する北東アジアにこそ非核の白い傘をさすことが大切であり、日本政府はそのための努力を傾注するべきではないか。政府の見解如何。
三 拡大核抑止について
 1 被爆地・広島で「拡大核抑止」を説くことは許されざることだと考えるが、政府の言う「核抑止」、「拡大核抑止」とは、一体何を意味し、何を抑止するものなのか。
 2 長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)の鈴木達治郎教授らが行った調査(どのようないきさつで核兵器が使用されうるかを検討)の結果によれば、深刻なケースとして、誤解やコミュニケーション不足、つまり相手が核を使用したとの誤解に基づく報復があるという。それにより、当事者の意図や想定を上回る核報復の危険性がありうることを考慮すれば、我が国がすべきことは、核廃絶である。政府が提唱する「核兵器国と非核兵器国を橋渡し」することは絵空事であり、互いに核で脅し合っていれば、十分なコミュニケーションなどは存在せず、「拡大核抑止」には意味がないのではないか。現に本年四月十三日、政府は、北朝鮮から発射されたミサイルが北海道に着弾すると発表したが、それは誤りであった。もし、この時、我が国が反撃能力によって、北朝鮮のミサイルに対して報復をしていたら、まさに鈴木教授のいうところの「誤解やコミュニケーションの不足」による核戦争につながった可能性もある。核を保持しない我が国における「拡大核抑止」の今後の展望についてどのように考えているか、政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。

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