衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
令和五年十一月十七日提出
質問第五三号

離島の「住民生活に必要な航路」を確保するための「海の交通政策」の在り方に関する質問主意書

提出者  小川淳也




離島の「住民生活に必要な航路」を確保するための「海の交通政策」の在り方に関する質問主意書


 「航路」は、離島の住民の皆さんが日常生活や社会生活を営む上で、重要な役割を果たしている。「航路」は「海の道路」である。「海の道路」である「航路」は、今、さまざまな課題に直面し、休廃止、縮小、再編に追い込まれようとしている。
 例えば、瀬戸内海の小豆島では、基幹「航路」の一つが休止して、二年以上が経過し、この十二月には、もう一つの「航路」の休止が予定されている。
 この二つの「航路」は、ともに「海上運送法」に基づき、「国土交通大臣」が、「関係都道府県知事」の意見を聴き、「住民が日常生活や社会生活を営むために必要な区間」として指定した「航路」(以下「指定区間」と言う。)である。
 「指定区間」でありながら、小豆島の事例のように、休止が二年以上になり、いまだに再開の目途が立たないのでは、「指定区間制度が、その本来の役割を果たせていない」と考える。
 「国土交通省」が中心になり、「関係法律を活用する」ことで、当該「航路を再開することが可能」ではないか。現状は、「関係法律が本来のかたちで活用されていない」のではないか。これから「予想される指定区間の休廃止の増加に、関係法律を積極的に活用すべき」ではないか。「住民生活に必要な航路を確保するため、指定区間制度の在り方の検証と再検討、再構築が求められている」のではないか。
 「国土交通省」は、従前の「運輸省」の「交通政策」の限界を克服し、「建設省」と統合することで、「航路を含む社会資本の整合的な整備や総合的な交通政策を行うために設置」された。
 その期待に応えて、「国土交通省」設置後、「国、地方公共団体、事業者、住民など関係者が連携と協働し、協議を促進することなどによる交通の確保を目的」とする「交通政策基本法」が制定されている。
 また、地方公共団体による「地域公共交通計画」の策定などを規定するいわゆる「地域公共交通活性化再生法」が制定されている。
 この「二つの法律の海の交通政策への積極的な活用が期待される」が、「国土交通省」は、この二つの法律を、「海の交通政策」に、これまで、どのように活用してきたのか。「海の交通政策に、二つの法律の活用が十分に行われていない」のではないか。「関係法律の積極的な活用を図ることが、住民生活に必要な航路を確保するため求められている」のではないか。
 さらに、事業者による公正かつ自由な競争を確保することを目的とするいわゆる「独占禁止法」は、交通事業にも適用される。「事業者間の公正かつ自由な競争を確保する独占禁止法の適切な運用」が求められている。「独占禁止法は、住民に必要な航路を確保する上で、一定の役割を果たしている」ことを忘れてはならない。
 ところで、地方バス事業については、「独占禁止法」第十条の競争制限となる「企業結合禁止」の適用除外が法定化されている。一方、「航路」事業については、そのような法律は制定されていない。
 「交通政策と独占禁止法の関係の整合性が十分にとれていない」のではないか。「国土交通省と公正取引委員会は、独占禁止法第十条をはじめ同法と海上運送法の関係を整理し、海上運送法と独占禁止法の適切な適用を行うことが求められている」のではないか。
 人口減少などから、今後、「航路」の休廃止、縮小、再編が不可避になっている。「住民生活に必要な航路を確保するため、これまで以上に、関係法律の適切な解釈運用と活用が求められている」と考える。
 その一つは、「交通政策基本法」が規定するように、「国土交通省が中心になって、国、地方公共団体、事業者、住民などの関係者が連携と協働し、協議を促進することで、住民生活に必要な航路を確保する」ことである。
 「交通政策は、事業者間の公正かつ自由な競争を基本」としつつも、「交通を社会資本として位置づけ、さまざまな公共関与を強化することで、交通の確保の実現を目指す」ことが「交通政策の大きな流れ」と考える。
 「海の交通政策は、この大きな流れに沿って、住民生活に必要な航路を確保するために、指定区間制度などの在り方を検証し、時代に即した、その在り方を再検討し、再構築する必要がある」と考える。
 以上の立場から、以下、香川県小豆島での二つの「航路」休止の事例について、国の見解を問う。
 「当該航路」については、「交通政策基本法」などに基づき、「国土交通省が中心になって、関係法律を適切に解釈運用し、関係者が、連携と協働し、協議を促進することで、再開の可能性がある」と考えるからである。
 「関係者が、連携と協働し、協議を促進することにより、航路の早期再開を実現できれば、今後、全国で予想される解決困難な事例のモデルになる」と考えるからである。
 また、当該事例が「指定区間制度などの在り方の検証、再検討、再構築のきっかけとなる」ことができれば、「海の交通政策は、真の意味で、国民の期待に応えることができるようになる」と考えるからである。
 なお、「草壁航路」については、「独占禁止法のみならず、海上運送法、交通政策基本法、地域公共交通活性化再生法などの関係法律を適切に解釈運用することで、再開の可能性がある」と考える立場から、「関係法律の解釈運用の在り方と、国土交通省を中心に、国などがとるべきこれからの対応」について、国の見解を問う。
 以下、小豆島での二つの航路の休止事例の概要である。
 香川県高松市の高松港と香川県小豆島町の草壁港を結ぶ「航路」(以下「草壁航路」と言う。)は、「海上運送法」第二条第十一項に基づき、「国土交通大臣が、香川県知事の意見を聴いて、住民が日常生活や社会生活を営むために必要な区間として指定している航路つまり指定区間」である。
 「草壁航路」は、令和三年四月から休止となり、その状況が現在も続いている。その経過は次のとおりである。
 「草壁航路」を営業する内海フェリー株式会社(以下「内海フェリー」と言う。)が経営破綻したため、草壁航路と隣接する、高松港と小豆島町の池田港を結ぶ「航路」(以下「池田航路」と言う。「池田航路」も「指定区間」である。)を営業する国際両備フェリー株式会社(以下「国際両備フェリー」と言う。)が、内海フェリーの株式の譲渡を受けた。
 内海フェリーは、「草壁航路」を休止し、国際両備フェリーは、「海上運送法」に基づき「国土交通大臣」の許可を受け、「池田航路」の増便を行い、現在に至っている。
 「指定区間」である「草壁航路」の再開を願う住民は、署名活動を行うなど、関係方面に「草壁航路」の早期再開を強く要請してきている。
 「草壁航路」の早期再開を求める署名は、「草壁航路」の発着港である小豆島町の旧内海町地区の有権者の過半数を超える。大多数の住民が「草壁航路」の再開を望んでいることがわかる。
 また、住民の有志らは、内海フェリーと国際両備フェリーの企業結合が、「独占禁止法」第十条が禁止する「市場の競争を実質的に制限する企業結合」にあたると考え、「独占禁止法」第四十五条に基づき、「公正取引委員会」に対して、必要な措置を講じるよう求める「報告」を、令和四年十一月二十六日付けで行った。
 住民の有志らの「報告」に対し、令和五年六月三十日付けで「公正取引委員会」から、「これまでの情報では、独占禁止法上の問題とすることは困難であり、措置はとりませんでした」との「通知」があった。
 また、本年十二月から、小豆島大部港と岡山県日生港を結ぶ「航路」の休止が予定されている。この「航路」もまた、「国土交通大臣」が指定した「指定区間」である。

一 「独占禁止法」第四十五条の「報告」制度への「公正取引委員会」の対応には、問題があり、「報告制度のより積極的な活用が必要」である。
 「独占禁止法」第四十五条に基づく、「草壁航路」について「公正取引委員会」の措置を求める「報告」にあたり、住民の有志らは、「独占禁止法」を専門とする弁護士の詳細な意見書、また、「草壁航路」の再開を望む住民の行動の記録、事業者の説明、事業者と住民のやりとりなどを記した詳細な報告書などを添付していた。
 また、弁護士の意見書は、市場の範囲のとり方、実質的な競争制限にあたる行為の考え方などについて、詳細な法的検討をしたものであり、説得力のある意見書であったにもかかわらず、「公正取引委員会」は、弁護士・住民らの指摘事項について、具体的な理由を何ら示すことなく、「これまでの情報では、独占禁止法上の問題とすることが困難である」とのみ記した見解を「通知」で示した。
 このように、詳細な「報告」に対し、結論のみを記した簡易な「通知」を「公正取引委員」として行うだけでは、「報告を行った住民らの理解を得ることができない」ばかりでなく、「独占禁止法第四十五条の報告制度は、形骸化し、意味をなさない」と考える。
 これでは、「公正取引委員会への国民の信頼が損なわれる」ことを懸念する。「独占禁止法」第四十五条による「報告」に対しての運用の実態は、どのようなものであるか。「独占禁止法」第四十五条の運用は、どうであるべきと考えているのか。独占禁止法第四十五条の運用を、どのように行うことが、独占禁止法の目的である競争政策の徹底に活かすことになると公正取引委員会は考えているのか。
 「独占禁止法」第四十五条による「報告」に対する運用の状況を問う。また、「独占禁止法」第四十五条の運用に対する上記の意見に対する公正取引委員会の見解を問う。
二 本件について、「報告」に示された弁護士意見書の見解や住民の有志等の指摘事項では、「独占禁止法の問題とすることが困難」と、「公正取引委員会」として判断した具体的な理由を明らかにされたい。
三 詳細な法的な論点、事実関係が示された「独占禁止法」第四十五条に基づく、住民らの「報告」に対しては、「公正取引委員会」として、「独占禁止法」の問題がないか、その「報告」のみで判断することが困難であれば、「公正取引委員会として、公正取引委員会が設置されている趣旨に則り、必要な調査を行うべき」と考える。
 今回の事例では、このような「調査」は行われたのか。「調査」が行われなかったとしたら、その理由は何か。「調査」を行うことで、「独占禁止法」上の問題とすべき事実が明らかになるのではないか。「必要な調査を行い、新たな事実などが判明すれば、独占禁止法上の問題があると判断できる」と考える。「公正取引委員会」の見解を問う。
四 「独占禁止法」が禁止する企業結合については、事前審査を、「公正取引委員会」が行うことが基本であると承知している。本件のような企業結合後の「独占禁止法」違反の認定、適用の例は、稀であると考える。
 本件のように、企業結合後にも、「独占禁止法」第十条の企業結合禁止の適用はあり得ると考えなければ、法律の趣旨が形骸化する。企業結合後であっても、同法同条は、適用されると考える。「公正取引委員会」の見解を問う。
五 「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる」と考えられる事例について、「公正取引委員会」が何の措置も採らないのであれば、結果的に、今後、「独占禁止法違反を奨励することにつながる」ことを懸念する。また、「公正取引委員会」の存在意義にも関わり、「独占禁止法の趣旨である競争政策の徹底がなされなくなる」おそれもある。
 現に今回の内海フェリー及び国際両備フェリーの企業結合事例は、「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる」と考えられるにもかかわらず、公正取引委員会が何の措置も採らない事例に該当すると考えるが、「公正取引委員会」の見解を問う。
六 「独占禁止法」の適用に当たっての「国の関係者間の連携・調整が不十分」である。
 「草壁航路」の事例が問題とされた時期は、国が、地方バス事業などについて、「独占禁止法」第十条の適用をしない旨を定める特別の法律の国会提出に向けて検討していた時期と重なる。
 したがって、「航路事業について、独占禁止法第十条が適用される」ことは明らかであり、「国土交通省は、そのことを当然知っていた、あるいは、知り得る立場であった」にもかかわらず、「国土交通大臣」は、「海上運送法」に基づき、「池田航路」増便許可等を行う際、「独占禁止法第十条違反の可能性について、公正取引委員会の意見を聴くなど、必要な対応をせず、また、関係の事業者、地方公共団体に対して、そのような法的な論点があることを指摘しなかった」のはなぜか。その理由及び事実関係を明らかにされたい。
七 バス事業について、「独占禁止法」第十条を適用しない法律を、特別に制定したにもかかわらず、「航路事業については、その法律の対象とせず、独占禁止法の適用除外にしていない」のはなぜか。国の見解を問う。
 「独占禁止法と交通政策との関係について、国の関係者間の連携・調整が不十分」ではないか。そのことが、本件の反省点の一つとして考えられる。今後「関係機関間の連携・調整」をどうするのか。国の見解を問う。
八 「交通政策基本法」に基づき、「国土交通省が中心になって、関係者が連携と協働し、関係者の協議を促進し、航路再開に当たっての課題と問題点の整理が必要」である。
 草壁航路について、「高松港発着時間枠などが確保できるなら、草壁航路への進出を考えてもよい」とする事業者が存在すると承知している。「草壁航路」についての「独占禁止法」第四十五条に基づく「公正取引委員会」への住民有志らの「報告」は、「関係機関が、関係法律に基づき、その趣旨に沿って、積極的に対処してくれない」ので、やむを得ず、行われたものである。
 「交通政策基本法」は、「国民生活に必要な交通を確保」するため、「国、地方公共団体、事業者、住民などのそれぞれの責務を規定」し、同法第二十七条は、「国は、交通の確保のために、関係者と連携と協働し、協議を促進する」旨規定している。
 「交通政策基本法」に基づく、「関係者の連携と協働による協議の場」を設けることを、住民らは、何度も、関係方面に提案したが、現時点まで実現できていない。この「協議の場ができれば、事業者の意見、住民の意見を聴くこともでき、本件の解決に資することができる」と考える。
 「交通政策基本法」第二十七条の規定に基づき、「国土交通省が中心になって、関係者が連携と協働し、協議を促進し、草壁航路再開を行う上での問題点と課題を整理し、本件の解決を目指すべきである」と考える。国の見解を問う。
九 「海上運送法」に基づく「指定区間制度は、制度の趣旨と運用の間に乖離」がある。「指定区間制度の問題点と課題を検証し、その在り方を再検討、再構築することが必要」である。
 「海上運送法」に基づく「指定区間である草壁航路が、長期間にわたり、休止のままであることは、指定区間制度の趣旨に反する」と考える。また、本年十二月から、小豆島大部港と岡山県日生港を結ぶ「航路」が休止する。当該航路も「指定区間」である。
 これまで、このように長期にわたり、「指定区間」の休止が続いた例があったのかどうか。「指定区間は、住民生活に必要な航路であると、国土交通大臣と関係都道府県知事が指定しているのだから、指定区間の航路の早期再開を図ることは、国土交通大臣の法的な責務」と理解する。「どうすることで指定区間の航路の早期再開が可能になると考えているのか」、国の見解を問う。
十 「海上運送法」の「指定区間」制度は、「事業者間の競争を強化することにより国民経済と社会の向上を目指す小渕内閣の規制改革」の一環で法制化されたと承知する。しかし、「海上運送法」の規定は、条文の内容から、「指定区間を社会資本として位置づけたもの」と理解する。「海上運送法の指定区間制度は、そもそも、どのようなことをきっかけに、何を目的として、導入されたものか」、国の見解を問う。
十一 「指定区間」制度導入後も、その実際の解釈運用は、「草壁航路」休止への対応でわかるように、「指定区間の解釈運用は、従前どおりに、事業者の競争を制限する既存事業者保護の視点で行なわれている」と懸念する。
 「指定区間」制度は、この制度の導入に伴い廃止された「需給調整規制」とは、どのような点が異なるのか、明らかにされたい。
 今後、「増加が予想される指定区間の休廃止、縮小、再編の増加に適切に対応し、住民生活に必要な航路を確保するため、指定区間制度の在り方について検証し、再検討、再構築を行うことが必要」と考える。国の見解を問う。
十二 本件への取組みをきっかけにして、「海の交通政策全般の在り方について、検証し、再検討、再構築することが必要」である。
 以上のように、草壁航路の休止問題が、今も混乱していて解決できないでいるのは、「折角の関係法律の趣旨が関係者に十分に理解されず、活用されていない」ことに、その理由の一つがある。
 国においては、「国土交通省」設置後、先駆的な「交通政策基本法」「地域公共交通活性化再生法」などの「関係法律」を整備し、「国土交通省が中心になって、国、地方公共団体、事業者、住民など、関係者が連携と協働し、協議を促進することなどで、必要な交通を確保し、問題の解決につなげる道筋を示している」のだから、本件について、その趣旨に沿って、「関係法律を活用し、問題解決につなげるモデルケースとする」ことを強く望む。
 あわせて、人口減少などにより、「今後、住民生活に必要な航路の確保が、ますます困難になる」ことが想定される。
 「新たな助成制度」の創設を含む新たな法的制度の導入の検討も必要と考える。「離島振興法」などによる現行の離島航路への助成は、「各離島一航路」に限られており、小豆島のように島外の多地域とつながる複数の航路のある離島への対応に限界がある。「航路への助成制度の充実強化も、住民生活に必要な航路を確保するために必要になる」と考える。
 国におかれては、「海の交通政策の関係法律のすべてを含めて、海の交通政策全般の在り方について、検証し、再検討、再構築することで、住民生活に必要な航路を確保する」ことを強く望むとともに、これらの政策全般の在り方についての国の見解を問う。

 右質問する。

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.