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令和六年一月二十六日提出
質問第九号

東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の処分に係る農林水産省の対応等に関する質問主意書

提出者  原口一博




東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の処分に係る農林水産省の対応等に関する質問主意書


 令和五年十一月九日に提出した第二百十二回国会の質問主意書第二二号において、ALPS処理水の処分に係る農林水産省の対応等について質問を行った。これに対する政府の答弁等を踏まえ、以下、質問する。

一 東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の処分について、漁業者や漁業団体から反対の声がある中、政府は、令和五年八月二十二日に開催された第六回廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議及び第六回ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議(以下「合同会議」という。)において、農林水産大臣又は経済産業大臣から、漁業者や漁業団体による理解がまだ十分ではない状況についての発言等はなかったと説明している。さらに、そもそも、合同会議は、「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」(以下「基本方針」という。)の着実な実行に向けた対策等について進捗を確認するための会議であり、漁業者や漁業団体による理解について議論する場ではないと説明している。しかし、基本方針では、例えば2(2)Bにおいて、海洋放出に当たっての対応の方向性について「国民・国際社会の理解醸成に向けた取組に万全を期す必要がある」としている。4(2)@においては、風評影響を最大限抑制するための国民・国際社会の理解の醸成について、「国内の消費者等や風評影響を受け得る様々な事業者の理解を深める取組を徹底する」としている。5@では、今後の海洋放出に伴う、水産業を始めとした関係者における特有の課題を幅広く継続的に確認し、必要な対策を検討するための枠組みとして「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議」(以下「実行会議」という。)を設置するとしている。さらに、6Bでは、「風評影響への対応については、さらに、広く関係者にも参加いただきつつ議論を続け、その不断の見直しを図り、政府一丸となって」対策を講じていくとしている。また、実行会議が設置された際には、主な検討事項として、ALPS処理水の処分による風評影響の実態の把握、基本方針に定めた事項の実施状況の確認及び課題の抽出、追加的な対策の検討等が示されている。以上を踏まえれば、漁業者や漁業団体による理解は、合同会議においても重要な課題であり、当然に議論の対象となるべきだと考える。漁業者等による理解を議論の対象外とした合同会議でのALPS処理水の海洋放出に係る決定は、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないものであり、重大な瑕疵があったのではないか。それにもかかわらず、政府が議論の対象外であると説明した理由を明確に示されたい。その上で、合同会議において両大臣が当該発言等に至らなかった理由について、改めて明らかにされたい。
二 当時の野村農林水産大臣が、令和五年八月二十五日の大臣記者会見において、ALPS処理水の海洋放出を受けた中国による日本産水産物の全面的な輸入禁止について、「全く想定していませんでした」と述べたことに関連して、政府は、農林水産大臣も出席した合同会議において、中国による全面禁輸という事態を含む事態等の可能性についての認識を共有していたと説明している。また、農林水産大臣が当該発言に至った要因については、野村農林水産大臣が、中国による全面禁輸という事態が生じたことについての所感を述べたことによるものであると説明している。
 1 この説明によれば、政府としては合同会議においてあらゆる可能性を想定し、出席閣僚・関係者が認識を共有していたにもかかわらず、野村農林水産大臣が当該発言を行ったということであり、農林水産省としてはもとより、政府全体としても深刻な危機管理上の問題である。このような事態を受けて、農林水産省内において情報共有・危機管理体制の在り方等に係る問題点を分析し、必要な改善を行って然るべきと考えるが、そのような事実の有無について明らかにされたい。また、具体的な改善を行った場合は、その内容についても明らかにされたい。
 2 政府としてあらゆる可能性を想定したとする具体的なケースについて、政府は、輸入規制措置等の撤廃に向けた働きかけを行っている中で、それを明らかにすることは、今後当該働きかけに影響を与えるおそれがあることなどから、回答を差し控えると説明している。ここで説明している「当該働きかけに影響を与えるおそれ」について、具体的にどのような影響を与えると考えているのか明らかにされたい。
 3 令和五年十月中旬にロシアが中国の措置に追随する方向で日本産水産物の輸入規制措置を強化することを決定し、今後、同様に輸入規制措置を強化する国が世界各国に広がっていくことが強く懸念されることについて、政府は、あらゆる機会を通じて、科学的根拠のない輸入規制措置の即時撤廃を強く求めていくとともに、ALPS処理水の安全性について高い透明性を持って国際社会に発信していくと説明している。昨年十一月以降、政府が実際にこれらの取組を行った具体的な場及び発信内容並びにその成果について明らかにされたい。
三 政府が策定した総額一千七億円の「『水産業を守る』政策パッケージ」(以下「政策パッケージ」という。)は、@国内消費拡大・生産持続対策、A風評影響に対する内外での対応、B輸出先の転換対策、C国内加工の体制の強化対策、D東京電力株式会社による迅速かつ丁寧な賠償の五本柱からなるとされているが、政府は、Dを除く各柱に見込む経費について、総額一千七億円の内訳等を明らかにしていない。
 1 例えば、@の国内消費拡大・生産持続対策について、総額一千七億円のうちどれほどの経費が見込まれているのか。また、同対策の中で「産地段階における一時買取・保管や漁業者団体・加工/流通業者等による販路拡大等への支援」を行うとされているが、その支援に係る経費の具体的な積算根拠について、例えば、一時買取・保管に係る単価、漁業者団体・加工/流通業者等の数、販路拡大等の具体的内容及び単価等について、どのように見込んでいるのか明らかにされたい。AからCの柱についても、対策等に見込む経費及び積算根拠について、同様に明らかにされたい。
 2 農林水産省による「#食べるぜニッポン」キャンペーンに関連して、当時の宮下農林水産大臣が令和五年九月二十九日の大臣記者会見において、ホタテガイの令和四年の国民一人当たりの国内消費量が約七粒であり、追加で五粒、年間合計十二粒を食べることで、中国向けの輸出をそっくり国内消費できると発言したことに係る積算根拠について、政府は、住民基本台帳に基づく人口等による推定値であると説明している。住民基本台帳に基づく人口について、新生児等も含めた総人口である場合、国民一人当たりの単純平均を基にした宮下農林水産大臣の当該発言は実態に即したものではなく、年間合計十二粒という目安はかえって国民の誤解を招くものであったと考えるが、政府の認識を明らかにされたい。併せて、「#食べるぜニッポン」キャンペーンのこれまでの実績について明らかにされたい。
 3 政府は、今般の中国、香港をはじめとする各国・地域の輸入規制の強化により想定される全体的な影響及び被害額について、水産物の生産から流通までの各段階で影響が生ずるなどその対象が多岐にわたることから、網羅的な回答は困難であるが、政策パッケージにおいて、我が国の水産業支援に万全を期すべく、対策を実施すると説明している。昨年九月に政策パッケージを策定して以降、一部の国・地域の輸入規制強化により実際に発生した影響及び被害額並びにこれまで政策パッケージにより支援を行ってきた具体的な内容及び支援に要した経費について、明らかにされたい。
四 ALPS処理水の海洋放出に関して、政府は、合同会議における当時の西村経済産業大臣の発言を踏まえて、漁業者やその他事業者、地方公共団体からの一定の理解は得られていると認識しており、「国内外において十分な理解が得られていない状況」には当たらないと説明している。
 1 しかし、国内においては、福島県漁業協同組合連合会及び全国漁業協同組合連合会から明確に「ALPS処理水の海洋放出には反対である」との会長コメント等が示されている。また、国外においては、中国、香港、ロシアをはじめとする各国・地域による輸入規制措置の強化が継続されている。このような状況にあって、政府の当該説明は、「一定の理解」が得られたことをもって「十分な理解」が得られたものとすり替えているのではないか。「十分な理解」とは具体的にどの程度の割合の理解が得られている状況だと考えているのか明らかにされたい。
 2 現状を打開するため、海洋放出を一時停止し、漁業関係者の理解を大前提として国内外の諸課題を解決した上で、海洋放出の再開時期等について改めて検討すべきとの指摘に対し、政府は、海洋放出を一時停止する予定等はないと答弁している。しかし、中国等による輸入規制措置が長期化することも見込まれる中、海洋放出の一時停止等も含めて輸入規制措置の撤廃に向けた外交交渉を精力的に行い、ALPS処理水の海洋放出に係る諸問題の全面的な解決を図るべきであると考えるが、改めて政府の認識を明らかにされたい。

 右質問する。

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