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平成十二年十一月十四日受領
答弁第三号

  内閣衆質一五〇第三号
  平成十二年十一月十四日
内閣総理大臣 森   喜  朗

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員中川智子君提出薬害クロイツフェルト・ヤコブ病問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員中川智子君提出薬害クロイツフェルト・ヤコブ病問題に関する質問に対する答弁書



一の1について

 昭和四十八年の輸入承認当時の記録によれば、B・ブラウン社製のヒト乾燥硬膜「ライオデュラ」(以下「ライオデュラ」という。)の輸入承認には六名の厚生省職員がかかわっているが、このうち、審査担当官一名を含む三名は薬学を修めた職員であり、二名は法律学を修めた職員である。また、当該輸入承認に当たっては、ライオデュラの安全性及び有効性を確保する観点から、当時の医学的及び薬学的知見に基づき、承認申請書に記載された規格及び試験方法、滅菌条件等の内容とともに、当該承認申請書に添付された国立衛生試験所が実施した無菌試験の試験検査成績書並びに東京医科歯科大学及び東京医科大学が実施した臨床試験報告書の内容について審査している。

一の2について

 ライオデュラの輸入承認を行った昭和四十八年当時において、クロイツフェルト・ヤコブ病(以下「CJD」という。)の発症原因に関するプリオン仮説は提唱されておらず、ヒト乾燥硬膜によってCJDが伝播するおそれがあることの知見も全くなかったことから、CJDの感染の危険性を前提とした専門家からの意見聴取を行うことはなかったものである。
 したがって、ライオデュラの輸入承認に当たって専門家の意見を聴かなかったことに瑕疵があるものとは考えていない。

一の3について

 ライオデュラ等のヒト乾燥硬膜は、その使用により、脳外科等の手術に際して患者自身の大腿筋膜を採取するという患者の身体的負担が解消され、手術において生じた欠損を直ちに違和感なく補填できることから、その有用性が認められ、我が国だけでなく諸外国においても広く使用されたものと考えている。昭和四十八年の輸入承認以降の我が国のライオデュラの輸入量は、医療現場における需要に応じたものであったと考えている。
 なお、CJDの診断基準は国ごとに異なること等から、我が国と諸外国との間でCJD患者数等を比較することは困難と考えている。

二の1について

 現在、ヒト乾燥硬膜の移植によってCJDを発症したと主張する患者、遺族等から国、製造業者等に対し損害賠償を求める訴訟が大津地方裁判所及び東京地方裁判所に提訴されているところであるが、当該訴訟において被告である製造業者から書証として提出された昭和六十二年五月付けの文書によれば、昭和六十二年三月、米国食品医薬品局(以下「FDA」という。)は英国政府に対して、ヒト乾燥硬膜によるCJDの発症例に関する世界で最初の報告(以下「第一症例報告」という。)に関する文書を通達したとされており、英国政府は少なくともその時点でヒト乾燥硬膜によるCJDの感染の可能性を認識し、英国内の医療機関に対する情報提供等の措置を講じたものと考えている。

二の2及び3について

 御指摘の第二症例に関する記事が米国疾病対策予防センター(CDC)の週報(以下「MMWR」という。)に掲載された当時においても、プリオン仮説は定説化されておらず、CJDの原因因子及び感染機序は明らかでなかったが、ヒト乾燥硬膜の移植歴のあるCJD患者の第二例目の症例報告であったことも踏まえて、その要約を平成元年四月の「病原微生物検出情報」に掲載したものと考えている。
 この掲載を契機とした対策は講じていない。

二の4について

 厚生省において、仮に第一症例報告に関する情報を得ていたとすれば、これに関連する情報の収集に努めることはあり得たものと考えているが、当時の医学的及び薬学的知見、各国政府の対応等を勘案すれば、ヒト乾燥硬膜の輸入及び使用を禁ずべき状況にはなかったものと考えている。

三の1について

 厚生省においては、御指摘のプリオン仮説について直接検討はしていないが、大学医学部等の臨床医学又は基礎医学の研究者を中心に構成された遅発性ウイルス感染調査研究班に対し、特定疾患調査研究費補助金を交付しており、同研究班は、CJD等の疾患の研究を進める中でプリオン仮説も研究対象としていたところである。しかしながら、プリオン仮説が提唱された昭和五十七年から定説化した平成五年までの間の同研究班による研究において、プリオン仮説を裏付けるような実験結果等は得られていない。

三の2について

 一般的には、特定の疾患の具体的な原因因子及び当該原因因子と医療用具等との関連性が明確になれば、その時点における医学的及び薬学的知見に基づき、個別具体的に、原因因子の特性を踏まえた有効な感染防止措置を講ずることになる。
 しかしながら、CJDの原因因子及び感染機序が不明であって、ヒト乾燥硬膜とCJDとを結び付ける症例報告が皆無又は極めて少数であり、疫学的な評価もできなかった時点においては、ヒト乾燥硬膜によるCJDの感染の危険性を前提とした対策を講ずべき状況にはなかったものである。

三の3について

 平成八年に英国で発生したいわゆる狂牛病問題を契機として、我が国における近年のCJD患者数の動向、狂牛病との関連性が疑われる新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(以下「新変異型CJD」という。)患者の有無等を把握するため、クロイツフェルト・ヤコブ病等に関する緊急全国調査研究班(以下「緊急全国調査研究班」という。)による緊急全国調査(以下「緊急全国調査」という。)が行われ、平成九年三月に報告書が取りまとめられた。その結果、我が国のCJD患者の中にヒト乾燥硬膜の移植歴のある患者が四十三名確認された。さらに、同年二月、公衆衛生審議会成人病難病対策部会にクロイツフェルト・ヤコブ病等専門委員会を設置し、引き続きCJD及びその類縁疾患の発生状況を調査しているところである。

三の4について

 MMWRに掲載された第一症例報告は、ヒト乾燥硬膜の移植の十九か月後にCJDを発症した患者がCJDを発症する既知の要因等を有しなかったことをもって、ヒト乾燥硬膜の移植によりCJDの病原体が伝播されたことが示唆されるとしたものである。その後、米国政府は、当該ヒト乾燥硬膜の原料である硬膜の提供者がCJD患者であったかどうかをその製造業者であるB・ブラウン社に照会するとともに、第一症例報告と同一のロット番号二千百五番のライオデュラが輸出された五か国に連絡し、また、MMWRを通じて国内の医療機関に対しヒト乾燥硬膜の移植を受けたCJD患者の症例について州保健局を通じて報告するよう呼び掛け、第一症例報告と同様の症例報告の有無を確認しようとした。しかしながら、第一症例報告に係る硬膜の提供者は特定できず、CJD患者であってヒト乾燥硬膜の移植歴のあるものの症例報告は第一症例報告以外には確認されなかったものと承知している。
 御指摘のFDAの廃棄勧告は、このように不確実な情報しかなかった段階ではあるが、米国内の医療機関がFDAの輸入承認なしにライオデュラを直接輸入していたという事態も踏まえ、米国内の医療機関に対してロット番号二千番台及びロット番号不明のライオデュラの廃棄を勧告したものであると理解している。
 なお、当時、我が国と同様にライオデュラの輸入又は製造を承認していた英国、ドイツ等の政府は、製造業者から説明を聴取し、CJDの原因因子を不活化するために製造業者が水酸化ナトリウム処理工程等を導入したことを確認したが、FDAが廃棄を勧告したロット番号のライオデュラについて、輸入又は販売を禁ずる措置は講じていなかったものと承知している。

四について

 緊急全国調査は、英国で発生したいわゆる狂牛病問題を契機として、我が国における近年のCJD患者数の動向、狂牛病との関連性が疑われる新変異型CJD患者の有無等を把握するために行われたものである。その際に、緊急全国調査研究班において、CJD患者に関する情報を幅広く把握する観点から、家族歴及び海外居住の有無と並んで、国内外の文献等においてCJDの感染との関連が言及されている手術等の治療歴を調査項目に加えたものであり、角膜移植手術、ホルモン製剤投与、輸血、てんかん等のほか、硬膜使用手術についても調査したものである。

五について

 医薬品副作用被害救済制度は、医薬品には有効性とともに副作用が不可避であることから、すべての医薬品製造業者等からの拠出により医薬品の副作用による健康被害を救済するために設けられた制度であり、医薬品による健康被害であっても病原体が混入したことによる感染によるものは、救済の対象とはしていないところである。
 医療用具による健康被害については、その大半は医療用具そのものの欠陥又は使用方法の誤りによるものと考えられ、また、医療用具の種類は広範にわたり、器具器械ごとの健康被害の危険性の格差は極めて大きいと考えられ、医薬品の副作用による健康被害とは事情が大きく異なることから、医薬品副作用被害救済制度の対象とはしていないものである。
 なお、ヒトの細胞又は組織に由来する医薬品及び医療用具については、今後も開発が進展すると見込まれているが、感染症を伝播するおそれが否定しきれないことから、これらの製品に対して十分な規制を行う必要があると考えている。これらの製品に対して新たな規制を行った上でなお感染による健康被害が不可避的に生じるとした場合に、当該健康被害は通常の感染による健康被害とは異なる面もあることから、新たな規制の在り方を踏まえつつ、今後、その救済の必要性の有無等を含め、その対応について幅広く研究していく必要があると考えている。



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