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平成十五年二月七日受領
答弁第三三号

  内閣衆質一五五第三三号
  平成十五年二月七日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員楢崎欣弥君提出東京電力原子力発電所、その他の原子力発電所におけるトラブル隠し等不祥事に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員楢崎欣弥君提出東京電力原子力発電所、その他の原子力発電所におけるトラブル隠し等不祥事に関する再質問に対する答弁書



一の1について

 「原子力発電所における安全確保対策の強化について」(昭和五十二年三月三日付け五二資庁第二三一一号通商産業大臣通達。以下「通達」という。)は、原子力発電所を設置する各事業者に対して、法律に基づく報告義務を遵守することはもとより、運転上その他原子力発電所の工事、維持及び運用に係る軽微な故障についても速やかに報告することを要請したものである。先の答弁書(平成十四年十一月二十六日内閣衆質一五五第三号)別表一において、通達に基づく報告要請に違反していた可能性があるとした事案におけるシュラウドのひび割れ等の発見は、いずれも電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号。以下「電事法」という。)第百六条、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則(昭和五十三年通商産業省令第七十七号)第二十四条等の法令に基づき報告させることとしたものには該当していないため、当該発見を国に報告しなかったこと等はこれらの法令に違反するものではない。しかしながら、当該ひび割れ等は、通達で報告を要請している運転上その他原子力発電所の工事、維持及び運用に係る軽微な故障に該当する可能性があることから、先の答弁書別表一において、通達に基づく報告要請に違反していた可能性がある旨記載したものである。

一の2について

 電事法第百十五条から第百二十三条までの規定又は核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第七十六条の二から第八十三条までの規定に基づき罰則が適用された原子炉等規制法の規制対象となる施設、事案の概要等については、別表のとおりである。

一の3について

 お尋ねは、個別の原子炉の使用される年数についてのものと思われるが、一般的に、原子炉の使用される年数は、その構造、材質、使用条件、使用環境、保全策、技術の進展度合い等により変わり得るものであり、また、個別の原子炉の使用される年数については、原子力発電所を設置する各事業者が、電力の需要の状況や運転に係る費用等を勘案して、原子炉ごとに総合的に判断するものであると考えており、承知していない。
 なお、個別の原子炉が使用可能な状態であるか否かについては、電事法第五十四条に基づき経済産業大臣が行う定期検査等により確認しているところである。

一の4について

 一般に、事業者が自主保安体制や点検方法等について様々な努力や工夫を行うことは必ずしも否定されることではないが、その結果安全水準が低下するようなことがあってはならないと考えている。
 お尋ねの「インセンティブ制度」については、定期検査期間の短縮を優先するあまり、安全性の確保を損なう結果となっていないか、その実態を調査しているところである。

二の1について

 放射線管理手帳制度は、放射線業務従事者等の被ばく線量等の把握を目的として、財団法人放射線影響協会と放射線管理手帳発効機関及び当該制度に参加している事業者(以下「参加事業者」という。)との間で、契約に基づき自主的に運用されているものであると承知している。
 また、放射線管理手帳の取扱い、記入等の事務手続に関しては、財団法人放射線影響協会が作成した「放射線管理手帳運用要領(事業者用)」及び「放射線管理手帳記入要領(事業者用)」(以下「運用・記入要領」という。)に基づいて行われており、放射線管理手帳の保管は原則として参加事業者が行うこととされているが、放射線業務従事者等は、自己の被ばく線量等について参加事業者等に申し出て照会できることとされていると承知している。

二の2並びに5の(1)及び(2)について

 運用・記入要領において、放射線業務従事者等を雇用している参加事業者は、放射線業務従事者等が退職等で離職する場合には、本人に放射線管理手帳を渡さなければならないとされていると承知している。
 また、放射線業務については、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)及び電離放射線障害防止規則(昭和四十七年労働省令第四十一号)により、個々の放射線業務従事者につき被ばく限度を超えないことが事業者に義務付けられ、その遵守が徹底されているところであって、御指摘の健康管理手帳による離職後の健康管理が必要とまでは言えないと考えている。

二の3について

 電離放射線障害防止規則に規定する被ばく限度の水準については、放射線審議会が平成十年六月に行った意見具申において、国際放射線防護委員会(ICRP)の千九百九十年勧告の内容を関係法令等に取り入れる必要があるとされたことを受け、同規則の改正案要綱を平成十一年八月に同審議会に、平成十二年二月に中央労働基準審議会にそれぞれ諮問し、両審議会からの答申を経た上で平成十三年三月に改正し、同年四月から施行しているものであり、十分に安全上の根拠を有しているものと考えている。

二の4について

 平成五年に労働基準監督署が原子力発電所に対して監督を行った結果については、御指摘のとおりである。
 また、都道府県労働局及び労働基準監督署では、随時、原子力発電所等に対して監督を実施しており、その際には、労働者の安全と健康が確保されているか否かを確認するため、管理区域等の作業場の状況を確認するほか、放射線業務従事者等の被ばく線量及び管理区域内の放射線量の測定、健康診断及び安全衛生教育の実施状況の調査等を行い、当該監督の結果に基づき、必要に応じて指導等を行っている。

二の5の(3)について

 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七条)第一条に規定する被爆者に対する健康診断は、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊な被害であることにかんがみ行われているものであり、労働安全衛生法及び電離放射線障害防止規則の適用を受ける放射線業務従事者と比較することは適当ではない。

二の5の(4)について

 労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)に基づく保険給付については、必要な調査及び検討を行い、業務と疾病との間に相当因果関係が認められ、当該疾病が業務上の事由によるものと認められる場合に、保険給付の支給を決定するものであり、放射線業務従事者等について健康診断で異常が発見されたことのみをもって、保険給付の支給を決定することは適切ではない。

二の6について

 御指摘の「電離放射線に係る疾病の業務上外の認定基準について」(昭和五十一年十一月八日付け基発第八百十号労働基準局長通達。以下「認定基準」という。)においては、放射線業務従事者等が電離放射線に起因して発症すると考えられる疾病の種類及び当該疾病のうち、急性放射線症、急性放射線皮膚障害、慢性放射線皮膚障害、放射線造血器障害、白血病及び白内障について、業務上の事由によって生じたものであるか否かを判断するための具体的基準を定めているが、これらの疾病の種類及び基準については、医学専門家の意見を聴いた上で定めたものであり、現段階では新しい医学的知見がないことからこれを改正する必要はないと考えている。
 なお、認定基準においては、放射線業務従事者等が電離放射線に起因して発症すると考えられる疾病として甲状腺がんを定めており、また、急性放射線症及び放射線造血器障害については、白血球の減少等が基準の一つとされているところである。

三の1について

 原子炉等規制法の規制対象となる施設での作業に従事していた労働者の死亡に関して、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付を支給するに当たり、放射線に係る疾病を認定した事例は、先の答弁書三についてで明らかにした原子力発電施設での作業に従事していた労働者の死亡に関する三件のほかに、原子力発電施設以外での作業に従事していた労働者の死亡に関する二件がある。これらの労働者は、硝酸ウラニル溶液の製造に従事し、臨界事故により被ばくしたものである。
 また、これらの施設での作業に従事していた労働者が死亡したことにより、同法に基づく遺族補償給付の請求がされたものの、放射線に係る疾病とは認定しなかった事例は、現在までに二件あり、これらの労働者が主として行っていた作業は、それぞれ制御棒駆動装置等の点検及び補修の作業並びにクレーン等の運転の作業である。
 なお、同法に基づく遺族補償給付の請求がされていない場合における、これらの施設での作業に従事していた労働者であって被ばくが原因で死亡した者については、把握していない。

三の2について

 先の答弁書三についてで、「当該従業員の氏名、死亡時の年齢及び住所については、個人に関する情報であるため答弁を差し控えたい」とお答えしたのは、プライバシーの保護に配慮したためであり、お答えした事例を隠ぺいするためではない。

四について

 御指摘の「原発関連二法の改正」については、原子力発電所の自主点検作業に係る不正な記載等、これまでの原子力の安全確保に対する国民の信頼を大きく損なう事案が発生したことに伴い所要の措置を講ずる必要があることから、政府として電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案を第百五十五回臨時国会に提出し、可決されたものであり、政府としては当該一部改正法の施行を確実かつ速やかに実施する等適切な対応を図ることにより原子力の安全確保に対する国民の信頼を回復していく必要があると考えている。
 また、御指摘の「原発被ばく労働者の安全」については、労働安全衛生法その他の関係法令に基づき、原子力発電所で働く労働者の安全の確保を図っているところである。
 なお、先の答弁書は質問に対して可能な限りの回答を行ったと考えている。


別表


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