衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十五年五月二十七日受領
答弁第四九号

  内閣衆質一五六第四九号
  平成十五年五月二十七日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員北川れん子君提出原子炉の健全性評価尺度(維持基準)に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員北川れん子君提出原子炉の健全性評価尺度(維持基準)に関する質問に対する答弁書



一の(一)について

 発電用原子力設備の耐震性に係る基準については、現在、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第三十九条第一項の規定に基づき制定された発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(昭和四十年通商産業省令第六十二号。以下「省令」という。)第五条において、発電用原子力設備は過去の地震記録に基づく震害の程度等を基礎として求められる地震力による損壊により公衆に放射線障害を及ぼさないように施設しなければならないものと定めており、また、発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和五十六年七月原子力安全委員会決定。以下「耐震設計審査指針」という。)において、発電用原子力設備全体が設計の段階で耐震性の観点から問題のない構造強度を有していることを確認するための具体的基準を提示しているところである。
 これに対し、現在、原子力安全・保安院において導入に向けた検討を進めている第百五十五回臨時国会における改正後の電気事業法(以下「改正電気事業法」という。)第五十五条第三項の規定による使用開始後の発電用原子力設備の健全性の評価(以下「健全性評価」という。)の基準においては、発電用原子力設備が耐震設計審査指針に定められた基準を満たして建設されていることを前提として、使用開始後の発電用原子力設備に発生したひび割れが当該設備全体の構造強度に影響を与えない程度の大きさのものであって、当該ひび割れが地震の発生に際して拡大し設備の損壊に至らないことが確認できれば、耐震性の確保の観点から問題がないとの考え方の下、省令第五条に規定する耐震性の基準を使用開始後の発電用原子力設備において発生したひび割れに適用するための具体的な基準を提示することとしている。
 このように、耐震設計審査指針と健全性評価の基準とは、その性格及び適用される場面が異なっていることから、政府としては、「維持基準では耐震設計審査指針で新設原発に要求される技術基準が満たされる、または、この技術基準を満たさない維持基準は導入しない」といった主張は行っていない。
 なお、健全性評価の基準は、右に述べたように省令第五条の規定の運用を明確化するという性格のものであることから、その導入によって現行の「安全基準」の水準を引き下げることにはならず、また、ひび割れが耐震設計審査指針によって担保される発電用原子力設備全体の耐震性に影響を与えないという前提で適用されるものであることから、その導入によって発電用原子力設備の「安全基準」の水準が新設時と使用開始後とで異なるものとなることはない。

一の(二)から(四)までについて

 「日本機械学会「維持規格(JSME S NA1―2000)」に関する技術評価書(案)」(以下「技術評価書案」という。)は、民間規格である発電用原子力設備規格維持規格JSME S NA1―2000(社団法人日本機械学会。以下「維持規格二〇〇〇」という。)を健全性評価の基準として採用することが適切であるかについて、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子炉安全小委員会(以下「原子炉小委員会」という。)及び原子炉小委員会の下に設置された基準評価ワーキンググループ(以下「基準評価ワーキンググループ」という。)における検討の結果を踏まえつつ、原子力安全・保安院において評価を行い、その結果を取りまとめて作成する技術評価書(以下「技術評価書」という。)の原案である。お尋ねの「耐震設計審査指針の専門家」が何を指すのか必ずしも明らかでないが、原子炉小委員会及び基準評価ワーキンググループの委員の構成は別紙一のとおりであり、耐震工学、原子炉安全工学、地震学等発電用原子力設備の耐震設計に関係する分野の専門家が参加している。
 一の(一)についてで述べたとおり、健全性評価の基準の導入によって現行の「安全基準」の水準を引き下げることにはならず、また、健全性評価の基準は、ひび割れが耐震設計審査指針によって担保される発電用原子力設備全体の耐震性に影響を与えないという前提で適用されるものである。他方、耐震設計審査指針と健全性評価の基準とは、その性格及び適用される場面が異なるため、耐震設計審査指針と維持規格二〇〇〇との整合性については検討していない。また、お尋ねにおいて、一部、耐震設計審査指針に基づき詳細な耐震設計手法を定めた民間規格である原子力発電所耐震設計技術指針(JEAG四六〇一)(社団法人日本電気協会電気技術基準調査委員会。以下「JEAG四六〇一」という。)に定められている基準を耐震設計審査指針の基準として引用しているところがあるが、右と同様の理由から、JEAG四六〇一と維持規格二〇〇〇との整合性についても検討していない。
 お尋ねの「原子力安全委員会との協議」については、法令上これを実施すべき根拠はないが、原子力安全・保安院としては、今後、技術評価書案に対する関係者からの意見等を踏まえつつ技術評価書の最終的な取りまとめを行い、これを原子力安全委員会に報告し、その意見を聴くことを予定している。
 お尋ねの「安全裕度(マージン)を大きくとるべきとの問題提起」については、当該問題提起に対応するとの観点からの検討は行っていないが、原子力安全・保安院において技術評価書案を取りまとめる過程で、維持規格二〇〇〇における許容限界の設定について、適切な安全裕度が設けられていることを確認している。

一の(五)について

 設備の固有周期が大きく変化する場合における当該設備に作用する地震力の変化を動的に解析する手法は確立されていないが、発電用原子力設備については、「原子力配管系の多入力振動実験報告書(その二)」(国立防災科学技術センター研究速報第七十九号)及び「機器・配管系の経年変化に伴う耐震安全裕度評価手法の研究報告書」(防災科学技術研究所研究資料第二百二十号)に示されている実験結果により、ひび割れが生じたとしても固有周期への影響はほとんどないことが確認されており、ひび割れが生じた設備についても、ひび割れがない状態の固有周期を前提として、設備に作用する地震力を過小評価することなく耐震性の評価を行うことが可能であると考えている。

二の(一)及び(二)について

 維持規格二〇〇〇は、発電用原子力設備の使用開始後において検査等で発見されたひび割れを対象として評価を行うための手法を定めたものであり、検査装置、検査方法等について定めたものではないことから、維持規格二〇〇〇の適用に当たっては、事業者が行う検査において十分な精度が確保されることが前提となると認識している。このため、技術評価書案において、別紙二のとおり、維持規格二〇〇〇を適用するに当たり検査精度の確保等のため事業者が遵守すべき事項を示したところであり、これらの事項の遵守をどのように確保するのかなどについては、今後、検討を進めてまいりたい。

三の(一)及び(二)について

 改正電気事業法第五十五条第四項の規定に基づき、独立行政法人原子力安全基盤機構(以下「機構」という。)が同条第一項の規定による事業者の定期事業者検査(健全性評価を含む。以下同じ。)の実施に係る組織、検査の方法、工程管理等についての審査を行うこととされており、定期事業者検査を実施する事業者について、当該審査の実施を通じて、検査に係る経営者の責任の明確化、検査部門から独立した監査部門の設置等不正が起きにくい社内体制の整備が実現することとなるよう、平成十五年十月に予定している同条の施行に向けて、現在、関係規定の整備等について検討を進めているところである。また、改正電気事業法第百十七条の二において、定期事業者検査の結果について虚偽の報告をした場合等の罰則が規定されており、これらによって、事業者による定期事業者検査の適切な実施が確保されるものと考えている。

三の(三)について

 経済産業省としては、原子力に係る安全の確保が極めて重要であると認識しており、厳格な安全規制の実施により発電用原子力設備の安全確保に万全を期しているところである。機構については、平成十五年十月に設立される予定であるが、原子力施設の検査等の事務に電気事業者等からの出向者を充てないようにするなど原子力安全規制の被規制者からの独立性及び中立性を確保するための措置を講じていくことを予定している。また、三の(一)及び(二)についてで述べたように、制度的にも定期事業者検査の適切な実施を確保するための仕組みが整えられており、「ずさんな検査体制に拍車がかかるのではないか」、「維持基準が(中略)厳格に運用されない可能性がある」との御指摘は当たらないと考える。


別紙一 1/2


別紙一 2/2


別紙二 1/3


別紙二 2/3


別紙二 3/3


経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.