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平成十五年八月二十九日受領
答弁第一二五号

  内閣衆質一五六第一二五号
  平成十五年八月二十九日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員小沢和秋君外一名提出諫早湾干拓事業の進行に伴う漁業被害と環境破壊拡大への対応に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員小沢和秋君外一名提出諫早湾干拓事業の進行に伴う漁業被害と環境破壊拡大への対応に関する質問に対する答弁書



(一)について

 福岡県、佐賀県、長崎県及び熊本県からの聞き取りによれば、福岡県では粘質状浮遊物による漁業への影響はなく、佐賀県では有明海沿岸の十八漁業協同組合中九漁業協同組合で六日から十五日程度の休漁、長崎県では同沿岸の十二漁業協同組合で四日から十二日程度の休漁、熊本県では同沿岸の十四漁業協同組合中十漁業協同組合で七日から十五日程度一部漁業において操業への支障があったとのことであるが、今回の休漁等が年間の漁獲量等に及ぼす影響は不明であり、漁獲量及び金額でどの程度の被害を受けたかは、把握できないとの報告を受けている。

(二)について

 有明海で発生した粘質状浮遊物については、その実態解明のため、独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所、福岡県水産海洋技術センター、佐賀県有明水産振興センター、長崎県総合水産試験場及び熊本県水産研究センター(以下「関係研究機関」という。)が情報交換を行いつつ原因究明に努めてきたところであるが、本年七月二十二日に関係研究機関が会議を開催し、「有明海において、平成十五年五月六日に発見され、五月二十日頃まで継続が確認された粘質状浮遊物は、介類や底生生物の生殖活動等に伴って海水中に放出された粘質物が、変質しながら海底上や海水中を浮遊する間に、底泥や動・植物プランクトン等が付着したものと考えられた」という取りまとめを行っている。

(三)について

 これまでにも調整池からは御指摘の排水と同程度の排水が行われてきたことから、御指摘の排水が今回の粘質状浮遊物の発生の引き金になったとは考えていない。

(四)から(六)までについて

 御指摘の太田扶桑男氏の調査の詳細については承知していないが、粘質状浮遊物の発生原因については(二)についてで述べたとおりであり、御指摘のように「海藻が有明海の浮泥に付着して浮遊物になった」ものとは考えていない。
 国営諫早湾土地改良事業(以下「本事業」という。)の地盤改良材として使用した生石灰は、平成十一年度二千八百トン、平成十二年度四千五百トン、平成十四年度四千二百トンである。また、一立方メートル当たりの使用量は、改良に必要な地盤強度により異なり、平成十四年度までの実績で二十五キログラムから五十五キログラムである。これを基に試算すると、平成十五年度以降工事完了までの使用量はおおむね一万一千トンとなる。
 施工に当たっては、周辺への生石灰の飛散を防止するための施工条件を設定するとともに、必要に応じ工事に伴う排水を処理する等の対策を講じていることから、この地盤改良により、調整池の水質ひいては諫早湾の水質に影響を与えることはないと考えている。

(七)について

 排水門の操作に当たっては、農林水産省九州農政局諫早湾干拓事務所及び長崎県が、国営諫早湾干拓事業排水門管理規程に基づき、南北両排水門からの排水を基本に、周辺漁業の操業にも配慮する観点から、その周辺の漁業協同組合と調整を図りながら、排水を行ってきたところである。
 このような中で、平成十三年十月二十二日未明、北部排水門から約四キロメートルの地点で流し網漁の操業をしていた漁業者が、北部排水門からの排水の方法について苦情を申し出、長崎県諫早湾干拓堤防管理事務所敷地内に侵入し器物を破損させる事態が生じた。この事態収拾のため、当分の間、排水は可能な限り南部排水門からのみで行うこととし、北部排水門からの排水の方法に関して関係漁業協同組合と調整を図ることとしたものであり、御指摘のような理由で北部排水門からの排水を中断したわけではない。

(八)及び(九)について

 平成十三年九月二十日に農林水産省有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会から発表された「有明海のノリ不作の対策等に関する中間取りまとめ」においては、平成十二年度のノリ不作の主な原因は、かなり異常な気象・海象によって発生した大型珪藻の赤潮によるものであるとされており、平成十三年度のノリ作が良好であったことについては、北部排水門からの排水を止めたことによるものとは考えていない。

(十)について

 潮受堤防の締切り後の調整池の水質は、基本的には流入河川の水質を反映しており、最大の流入河川である本明川下流の水質と比較して、特段汚染しているものではない。

(十一)について

 農林水産省九州農政局が、平成元年度から継続的に実施している環境モニタリングの結果等に基づき、平成十三年八月に実施した「環境影響評価の予測結果に関するレビュー」において、潮位・潮流、海域水質等が、おおむね環境影響評価における予測結果に沿って推移していることを確認しており、潮受堤防の締切り前後で諫早湾の水質に明確な変化がみられていないことからも、調整池からの排水が御指摘のような被害を与えているとは考えていない。

(十二)について

 調整池の水質保全対策については、本年三月に長崎県により策定された諫早湾干拓調整池水質保全計画(第二期)に沿って、関係機関が連携して対処していくことが重要であり、引き続き、生活排水処理施設の整備等を推進するとともに、水質の監視測定等を行うこととしている。

(十三)について

 中央干拓地の農業用水については、調整池から取水することとしており、その取水口の設置位置は、経済性、管理上の利便性及び工事施工の効率性を考慮して本明川の現河口から約千四百メートルの地点に決定したものであり、御指摘のような理由によるものではない。

(十四)について

 中央干拓地の農業用水は、(十三)についてで述べたとおり、河川水を汲み上げるものではないこと、また、(十)についてで述べたとおり、調整池の水質は、基本的には流入河川の水質を反映し、本明川下流の水質と比較して汚染しているものではないことから、現在計画している地点から農業用水を取水することが調整池の水質の悪化につながるとは考えていない。

(十五)について

 本年五月八日に農林水産省九州農政局が公表した短期開門調査報告書においても、調整池の浮遊物質量が、海水導入によって低下した原因について、「負荷収支等の結果から海水導入による希釈及び凝集効果に伴う現象と考えられる」と記述しているとおり、希釈効果に加えて、凝集効果についても考慮している。

(十六)について

 短期開門調査においては、海水導入によって調整池の化学的酸素要求量(COD)等の濃度は低下したが、一方で、海域への排水量は増加し、海域への負荷量は海水導入前に比べむしろ増加する結果となっており、御指摘のように有明海の環境回復の可能性が示されたとは考えていない。
 本事業に係る中・長期の開門調査(以下「本調査」という。)の取扱いについては、その実施の可否を含め技術面や環境面等から様々な意見があるため、農林水産省においては、本年三月二十八日に中・長期開門調査検討会議を設置し、そこで取りまとめられる本調査に係る必要な論点を踏まえ、これを判断することとしており、このことについては従来から変わりはない。

(十七)及び(十八)について

 短期開門調査前後のアサリ等の生息状況調査等を実施した結果、短期開門調査における濁り及び低塩分水の拡散等による複合的要因の影響と考えられる魚介類の漁獲高の減少が確認されたため、その損失について補償することとし、現在、諫早湾内の小長井町漁業協同組合、瑞穂漁業協同組合、国見町神代漁業協同組合及び国見町土黒漁業協同組合(以下「湾内四漁協」という。)と補償額等の話合いを行っているが、円滑な話合いに支障を来すことから、どの程度漁獲量が減少したかについて明らかにすることはできない。
 なお、短期開門調査の前に、湾内四漁協からの補償の申出はなかった。

(十九)について

 本事業による有明海の環境への影響については、(十一)についてで述べたとおり、おおむね環境影響評価における予測に沿って推移していることを確認しており、「当初計画どおりでは、有明海の環境に悪影響があった」とは考えていない。
 御指摘の導流堤については、平成十三年度に行われた本事業の再評価に当たり、農林水産省九州農政局国営事業管理委員会に設置された第三者委員会の意見を踏まえ、総合的に検討を行った結果、事業実施に伴う環境の変化をできる限り小さくする観点から、調整池からの排水を潮受堤防設置前のミオ筋(流路)の方向に近づけることを目的として事業計画に盛り込むこととしたものである。

(二十)について

 (十)についてで述べたとおり、調整池の水質は、基本的には本明川等の流入河川の水質を反映しており、流入河川と比較して、悪化しているものではない。
 なお、導流堤の設置目的は(十九)についてで述べたとおりであり、有明海への負荷量を変えるものではない。

(二十一)について

 本事業を円滑に実施する観点から、従来から、佐賀県、福岡県及び熊本県の三県については、それぞれの県内の漁業協同組合や漁業者の代表である佐賀県有明海漁業協同組合連合会、福岡県有明海漁業協同組合連合会及び熊本県漁業協同組合連合会で構成される諫早湾干拓事業対策委員会に対して、事業内容等を説明してきたところであり、御指摘の導流堤の設置についても、同委員会に対して説明を行う考えである。
 また、湾内四漁協に対しては、湾内四漁協の組合長、地方公共団体の担当者等で構成されていた諫早湾地域資源等利活用協議会において、導流堤の設置について説明を行ったところである。

(二十二)について

 本年四月十日、水産庁から農林漁業金融公庫及び農林中央金庫並びに全国漁業協同組合連合会を通じて関係の漁業協同組合連合会及び漁業協同組合に対して、有明海におけるノリ養殖の不作により影響を受けた漁業者等に対する経営資金等の融通、既貸付金の償還猶予等について依頼を行ったところである。その内容については、六月二十四日に水産庁から全国漁業協同組合連合会に対して、改めて関係の漁業協同組合等に周知するように口頭で要請を行っている。

(二十三)について

 有明海における漁業の健全な発展を確保するため、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律(平成十四年法律第百二十号)に基づく基本方針に即して、有明海の環境の保全及び改善並びに有明海における水産資源の回復等による漁業の振興を図ることとしており、これにより漁業経営の安定及び発展に努めてまいりたい。



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