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平成二十八年二月九日受領
答弁第一〇五号

  内閣衆質一九〇第一〇五号
  平成二十八年二月九日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員長妻昭君提出日銀のマイナス金利政策をはじめとする金融政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員長妻昭君提出日銀のマイナス金利政策をはじめとする金融政策に関する質問に対する答弁書



 平成二十八年一月二十九日の日本銀行政策委員会・金融政策決定会合において、同行が導入したマイナス金利付き量的・質的金融緩和(以下「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」という。)について、同行は、「日本銀行当座預金金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていく。また、この枠組みは、従来の「量」と「質」に「マイナス金利」を加えた三つの次元で、追加的な緩和が可能なスキームである。日本銀行は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもと、二%の「物価安定の目標」の早期実現を図る」と説明しているものと承知している。
 お尋ねの「「マイナス金利政策」のメリットとデメリット」については、同行の金融政策運営に関するものであり、同行の自主性を尊重する観点から、お答えすることは差し控えたいが、内閣としては、同行が、内外の経済情勢等を丹念に分析し、十分に議論した上で決定したものと考えている。また、マイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入や、それを受けた金利の動向等が金融機関に与える影響は様々であり、一概にお答えすることは困難である。
 お尋ねの「いわゆる異次元緩和の出口」について、平成二十六年七月八日、中曽宏日本銀行副総裁(以下「中曽副総裁」という。)が、御指摘の発言をしたことは承知しているが、内閣としては、中曽副総裁の個別の発言の内容についてお答えすることは差し控えたい。
 また、お尋ねの「出口戦略」に向けた対応について、同行は、その時々の経済・物価情勢や市場の状況などによって変わり得るものであるため、具体的なイメージを持ってお示しすることは困難である旨、説明していると承知している。
 同行の「資金循環統計」によると、平成二十七年九月末時点の「国債・財融債」及び「国庫短期証券」(以下「国債等」という。)の残高に占める同行の保有する国債等の残高の比率は、三〇・三パーセントである。先進主要七箇国(アメリカ合衆国、カナダ、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、フランス共和国、ドイツ連邦共和国、イタリア共和国及び日本国をいう。以下同じ。)との比較に関しては、国ごとに資産買入れ実施の有無及び資産買入れ対象銘柄等の金融政策の内容が異なっており、同様の比率を示すことは困難である。また、お尋ねの「日銀が発行残高の五割を超えて国債を保有すること」については、同行の金融政策運営に関するものであり、同行の自主性を尊重する観点から、お答えすることは差し控えたい。
 内閣としては、黒田東彦日本銀行総裁(以下「黒田総裁」という。)の個別の発言の内容についてお答えすることは差し控えたいが、同年十月三十日に、黒田総裁が、「BOEは、国債発行額の七割ぐらいまで買い進んだと思いますが」との発言を行い、同行が公表する定例記者会見要旨で「BOEの国債買入れ額は、正しくは、国債発行額の約四割でした」との訂正が行われていると承知している。
 平成二十七年度の利付国債の市中発行額に占める同行の国債購入額の割合は、同年度の同行による国債買入れ見込額を同年度国債発行計画における利付国債の市中発行予定額で除すことにより求めると、約八割となる見込みである。先進主要七箇国との比較に関しては、国ごとに資産買入れ実施の有無及び資産買入れ対象銘柄等の金融政策の内容が異なっており、同様の比率を示すことは困難である。
 同行の国債購入額の対GDP比は、同年度の同行による国債買入れ見込額を「平成二十八年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(平成二十八年一月二十二日閣議決定。以下「政治経済見通し」という。)における名目国内総生産の平成二十七年度実績見込みで除すことにより求めると、約二割となる見込みであり、また、御指摘の「累積購入額」の意味するところが必ずしも明らかではないが、同行の国債等保有残高の対GDP比は、同行の「資金循環統計」における同年九月末時点の同行の国債等保有残高を、政府経済見通しにおける名目国内総生産の同年度実績見込みで除すことにより求めると、約六割となる見込みである。先進主要七箇国との比較に関しては、国ごとに資産買入れ実施の有無及び資産買入れ対象銘柄等の金融政策の内容が異なっており、同様の比率を示すことは困難である。
 また、国債金利は、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであり、お尋ねの「長期金利が急上昇する」リスクの程度について一概にお答えすることは困難である。御指摘の「財政ファイナンス」がどのような状況を指すのかについては、様々な議論があるものと承知しているが、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第五条本文においては、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない」とされており、これに抵触する同行による公債の引受け等については、禁じられているものと理解している。現在、同行がマイナス金利付き量的・質的金融緩和の下で行っている国債買入れは、二パーセントの物価安定の目標の実現という金融政策を目的とし、同行が自らの判断で、市場で流通しているものを対象に実施しているものであり、同条に抵触するものではないと考えている。
 同年六月十日の実質実効為替レートについての黒田総裁の御指摘の発言については承知しているが、内閣としては、黒田総裁の個別の発言についてお答えすることは差し控えたい。
 平成二十五年一月二十二日に政府及び同行が共同で公表した「内閣府、財務省、日本銀行「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」」(以下「共同声明」という。)においては、同行は、「物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で二%とする」、「上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す」としている。内閣もこの方針を共有しており、これに変更はない。
 また、黒田総裁が、平成二十七年十月三十日の記者会見において、「日本銀行は二%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することにコミットしています。「二年程度」という表現は、物価安定目標の実現に関するこのコミットメントにおいて、「できるだけ早期に」という際に念頭に置いている期間を示したものです」と説明していることは承知している。内閣としては、共同声明にもあるとおり、できるだけ早期に物価安定の目標を実現していただくことを期待している。
 共同声明での物価安定の目標における消費者物価は、消費者物価指数の総合指数であると承知しており、その同年十二月時点での前年比上昇率は〇・二パーセントである。同行は、同行が平成二十八年一月二十九日に公表した「経済・物価情勢の展望」(以下「経済・物価情勢の展望」という。)において、消費者物価の前年比上昇率が二パーセント程度に達する時期は、平成二十九年度前半頃と予想しているものと承知している。
 物価安定の目標の実現のため、お尋ねの「金融政策以外ではどのような政策が重要であると考えるか」及び「「格差を是正する」という政策は有効であると考えるか否か」については、一概にお答えすることは困難であるが、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向け、内閣としては、機動的なマクロ経済政策運営に努めるとともに、革新的研究開発への集中投入、イノベーション基盤の強化、大胆な規制・制度改革、税制の活用など思い切った政策を総動員し、経済構造の変革を図るなど、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取組を具体化し、これを強力に推進すること、また、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進することが重要であると考えている。なお、内閣は、デフレ脱却・経済再生に取り組む中で、格差が固定化しないよう、三年連続で最低賃金の大幅な引上げを実施し、パートタイム労働者と正社員との均等・均衡待遇を推進するなど、様々な取組を行っている。また、お尋ねの「少子化は「二%の物価目標」にどのような影響を与えると考えるか」については、例えば、生産年齢人口の変化率と物価上昇率との関係についても様々な議論があること等から、一概にお答えすることは困難である。
 経済協力開発機構が「Trends in Income Inequality and its Impact on Economic Growth」と称する報告書を平成二十六年十二月九日に公表したことは承知している。格差と経済成長の関係については、同報告書を含め様々な議論があり、一概に申し上げられないが、格差については、これが固定化されず、人々の許容の範囲を超えたものではないことが重要である。
 共同声明における「金融面での不均衡の蓄積」とは、不動産をはじめとする資産価格の過熱や過剰融資等の金融面での不均衡の蓄積に当たる事象を指すものと考えている。お尋ねの「リスク要因」については、経済・物価情勢の展望において、同行は、「経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因」として、経済情勢に関して「海外経済の動向」、「消費税率引き上げの影響」、「企業や家計の中長期的な成長期待」及び「財政の中長期的な持続可能性」を、物価情勢に関して「企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向」、「マクロ的な需給バランス」、「物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度」及び「輸入物価の動向」を挙げているものと承知している。また、共同声明は現在においても有効である。
 経済企画庁(当時)が平成五年七月二十七日の閣議に配布した「平成五年度年次経済報告」では、バブルが発生したのは、資産価格の上昇が続く中で、次第に更に価格が上昇するだろうという価格上昇期待が高まり、それが投機的な需要を膨張させ、現実に価格が上昇するという形で、価格上昇期待が自己増殖的に膨張していったためだと考えられる旨を記述している。バブル経済における内閣と同行の対策としては、同経済報告においては、土地基本法(平成元年法律第八十四号)以降の税制面の見直しや金利の引上げ、土地関連融資の総量規制の導入などが挙げられているが、これにより資産価格が下落基調に転じ、資産価格の値上がり期待を前提とした投機的需要は急速に剥落し、一挙に需給バランスが崩れ、資産価格は更に下落したと分析されている。
 お尋ねの「資産バブル」がどのような状況を指すのかについては、様々な議論があるものと承知しているが、現段階において、お尋ねの「一九八〇年代後半のようなバブル経済」が発生しているとは考えていない。また、黒田総裁の個別の見解についてお答えすることは差し控えたい。
 日本銀行政策委員会・金融政策決定会合の議事録については、日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第二十条第二項において、政策委員会が適当と認めて定める相当期間経過後に公表しなければならないとされている。米国連邦準備制度理事会においては五年後、イングランド銀行においては八年後、欧州中央銀行においては三十年後、カナダ中央銀行においては非公表との扱いとなっていると承知しているが、内閣としては、同委員会が議事録公開までの期間を適切に定めているものと考えている。


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