衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
令和五年十一月二十日受領
答弁第一九号

  内閣衆質二一二第一九号
  令和五年十一月二十日
内閣総理大臣 岸田文雄

       衆議院議長 額賀福志郎 殿

衆議院議員原口一博君提出ALPS処理水の海洋放出に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員原口一博君提出ALPS処理水の海洋放出に関する質問に対する答弁書


一の1について

 御指摘の「三タンク群」に貯蔵されているALPS処理水について、お尋ねの@「処理した」「時点」及びA「採取場所」をタンク群又はタンクごとにお示しすると、それぞれ次のとおりである。
 K四タンク群 @平成二十八年度 A炭素十四についてはタンクの中層、その他の核種についてはタンクの上層、中層及び下層
 J一−Cタンク @令和二年 A多核種除去設備(以下「ALPS」という。)の出口の後段に設置されたサンプルタンクの中層
 J一−Gタンク @令和二年 AALPSの出口の後段に設置されたサンプルタンクの中層

一の2について

 お尋ねについては、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)において、原子力規制委員会に認可された実施計画に基づき、ALPS処理水の海洋放出を行う前に、その都度、当該海洋放出の対象となるALPS処理水に含まれる放射性物質を分析することとしている。まず、東京電力において、当該海洋放出が原子力規制委員会の定める規制基準を満たしていることを確認するための測定及び評価に当たってその対象とする放射性物質として、保守的に検討を行った上で、トリチウム以外の二十九核種を選定し、この選定の考え方をALPS処理水の海洋放出に係る実施計画に記載し同委員会に提出し、これについて、国際原子力機関の確認も経て、同委員会の認可を受けており、加えて、風評による影響を防止する観点から、当該二十九核種とトリチウムに限らず、御指摘の「六十四核種」を含む合計六十九核種を分析しており、また、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構においても、「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」(令和三年四月十三日廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議決定。以下「基本方針」という。)に基づき、当該六十九核種を分析している。このように、海洋放出の対象となるALPS処理水に含まれる放射性物質の測定及び評価を徹底してきており、第一回目の海洋放出の実施前に、御指摘のように「福島第一原発敷地内に保管しているタンク」「内のALPS処理水等に含まれる放射性物質の全容を把握」することは必要なかったと認識している。なお、御指摘の「六十四核種の詳細な測定」については、一の1で御指摘の「三タンク群」以外にも、年に一回、ALPSの出口で採取した水で行っているが、その際に当該測定の対象となる水をタンク単位で採取していないため、お尋ねの「六十四核種の詳細な測定を行っているのは福島第一原発敷地内に保管しているタンクの水全体のうちどの程度か」については把握していない。

二について

 お尋ねについては、東京電力において、これまで、日本海溝外縁の隆起帯付近で発生する地震による津波に対応する防潮堤を平成二十三年六月に、千島海溝付近で発生する地震による津波に対応する防潮堤を令和二年九月に、それぞれ設置し、また、日本海溝付近で発生する地震による津波に対応する防潮堤の新規設置工事を令和三年六月に開始し、同工事の完成を令和五年度下期に予定しているものと承知している。

三について

 お尋ねの「ALPS処理水に含まれている放射性物質が生物濃縮するのかどうか」及び御指摘の「人間が海産物を食べた場合の内部被曝」を含め、ALPS処理水の海洋放出による人や環境への放射線影響については、東京電力において、これらの影響を評価し、取りまとめた「多核種除去設備等処理水(ALPS処理水)の海洋放出に係る放射線環境影響評価報告書(設計段階・改訂版)」を原子力規制委員会に提出し、令和五年五月十日の同委員会の審査書において「人と環境に対しての影響が十分に小さいこと」の確認を受けるとともに、国際原子力機関が公表した二千二十三年七月四日の包括報告書において「人及び環境に対し、無視できるほどの放射線影響となる」と結論付けられているものと承知している。

四について

 お尋ねについては、東京電力において、平成二十七年四月から、東京電力のウェブサイト上でALPS処理水に含まれる放射性物質の濃度に関するデータの全数公開を開始し、その中で、放射性セシウムや放射性ストロンチウムといった、トリチウム以外の放射性物質については、数値データの形で公表してきており、「ALPS処理水の中には、処理が十分でないために、トリチウム以外の放射性物質が除去しきれず基準値を超えるものが存在しているという事実を公表していなかった」との御指摘は当たらないと考えている。また、トリチウム以外の放射性物質については、規制基準を満たすことを、東京電力に加え、基本方針に基づき国立研究開発法人日本原子力研究開発機構も確認をしており、トリチウムについても、東京電力において、海洋放出に先立って規制基準を満たすように海水で大幅に希釈しており、これらの取組を通じ国際基準に基づいて定められた規制基準を確実に遵守し、安全に万全を期した上で、ALPS処理水の海洋放出を実施しているものと承知している。さらに、国際原子力機関の専門家が、複数回来日し、科学的かつ客観的なレビューを行っており、当該レビューの結果を総括した同機関の包括報告書において「ALPS処理水の放出は、人及び環境に対し、無視できるほどの放射線影響となる」と結論付けられているところであり、また、二千二十三年十月に行われた同機関の専門家によるレビューにおいてもALPS処理水の海洋放出は計画どおりに技術的な懸念なく進んでいると評価されているものと承知している。加えて、ALPS処理水の海洋放出の開始以降については、「総合モニタリング計画」(平成二十三年八月二日モニタリング調整会議決定、令和五年三月十六日改定)に基づき、関係府省庁等が連携して、東京電力福島第一原子力発電所の周辺の海水や魚のトリチウム濃度を迅速に分析して公表しているところであるが、これまで、同分析の結果により、これらが安全であることが確認されている。このように、政府としては、科学的根拠に基づく対応を行っているところである。

五について

 「中国に加えロシアも日本産の海産物の禁輸の開始を発表した・・・状況をALPS処理水の海洋放出前に想定していたのか」とのお尋ねについては、令和五年九月八日の衆議院経済産業委員会、農林水産委員会連合審査会において、野村農林水産大臣(当時)が、「政府としましては、日本の水産物が全面的に輸入停止になるなど、あらゆる可能性も想定しておりまして(中略)風評影響対策を講じてきたところでございます。」と答弁したとおりである。
 また、「海洋放出前に十分にその影響を検討・精査していたのか、放出前に風評が生じないよう十分な対策がとられていたのか」とのお尋ねについては、「「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」の実行と今後の取組について」(令和五年八月二十二日廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議・ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議決定。以下「会議決定」という。)において、様々な媒体を活用して国内外に対する情報発信を継続するとともに、経済産業省、復興庁及び農林水産省が運営する「魅力発見!三陸・常磐ものネットワーク」を通じた水産物の継続的な消費拡大、一時的な買取り及び保管への支援等のための三百億円の基金の措置や、漁業者支援のための五百億円の基金の措置等をそれまでに行ってきたことを確認し、それでもなお損害が発生した場合には、地域や業種を限定しない個別の事情に応じた適切な賠償を行うよう、東京電力を指導することとしたところである。こうした取組を踏まえ、会議決定においては、「現時点で準備できる万全の安全確保、風評対策・なりわい継続支援策を講じて」いるとし、また、「ALPS処理水の海洋放出に伴う諸外国による科学的根拠のない輸入規制措置等への対策として・・・臨機応変な対策を講じ万全を期す」としたところである。
 これまで、御指摘の「日本産の海産物の禁輸」に対しては、会議決定等に基づき、臨機応変に対応を進めてきており、「場当たり的な対応になっていないか」との御指摘は当たらないと考えている。

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.