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令和五年十一月二十日受領
答弁第二二号

  内閣衆質二一二第二二号
  令和五年十一月二十日
内閣総理大臣 岸田文雄

       衆議院議長 額賀福志郎 殿

衆議院議員原口一博君提出東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の処分に係る農林水産省の対応等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員原口一博君提出東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の処分に係る農林水産省の対応等に関する質問に対する答弁書


一について

 御指摘の「海洋放出の決定プロセス」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、令和五年八月二十二日に開催された第六回廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議及び第六回ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議(以下「合同会議」という。)において、農林水産大臣又は経済産業大臣から、御指摘の「漁業者や漁業団体による理解がまだ十分ではない状況についての発言等」はなかった。なお、そもそも、合同会議は、「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」の着実な実行に向けて風評による影響に関する対策等について進捗を確認するための会議であり、御指摘の「漁業者や漁業団体による理解」について議論する場ではない。

二の1及び3について

 お尋ねの「政府において中国による全面禁輸という事態を想定していた具体的な場」の意味するところが必ずしも明らかではないが、合同会議においては、岸田文雄内閣総理大臣、松野博一内閣官房長官、西村康稔経済産業大臣、渡辺博道復興大臣(当時)、林芳正外務大臣(当時)、井上貴博財務副大臣(当時)、永岡桂子文部科学大臣(当時)、本田顕子厚生労働大臣政務官(当時)、野村哲郎農林水産大臣(当時)、斉藤鉄夫国土交通大臣、西村明宏環境大臣(当時)、河野太郎内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)(当時)、太田房江経済産業副大臣(当時)、山中伸介原子力規制委員会委員長、木原誠二内閣官房副長官(当時)、磯崎仁彦内閣官房副長官(当時)、栗生俊一内閣官房副長官、藤井健志内閣官房副長官補、市川恵一内閣官房副長官補、四方敬之内閣広報官、小口正範日本原子力研究開発機構理事長、小早川智明東京電力ホールディングス代表執行役社長及び山名元原子力損害賠償・廃炉等支援機構理事長が出席し、御指摘の「中国による全面禁輸という事態」を含む諸外国による科学的根拠のない輸入規制措置等の可能性についての認識を共有した上で、「ALPS処理水の海洋放出に伴う諸外国による科学的根拠のない輸入規制措置等への対策として、状況に応じて、水産物等の国内消費の拡大、国内生産の維持、新たな輸出先のニーズに応じた加工体制の強化、海外でのプロモーションや商談会の開催等の新たな輸出先の開拓等、臨機応変な対策を講じ万全を期す。」ことを含む「「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」の実行と今後の取組について」を決定したところである。

二の2について

 二の1及び3についてでお答えしたとおり、政府としては、合同会議において、「ALPS処理水の海洋放出に伴う諸外国による科学的根拠のない輸入規制措置等への対策として、状況に応じて、水産物等の国内消費の拡大、国内生産の維持、新たな輸出先のニーズに応じた加工体制の強化、海外でのプロモーションや商談会の開催等の新たな輸出先の開拓等、臨機応変な対策を講じ万全を期す。」ことを含む「「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」の実行と今後の取組について」を決定したところである。
 その上で、農林水産大臣が御指摘の発言に至った要因については、令和五年九月八日の衆議院経済産業委員会、農林水産委員会連合審査会において、野村哲郎農林水産大臣(当時)が、「政府としましては、日本の水産物が全面的に輸入停止になるなど、あらゆる可能性も想定しておりまして・・・それは私が個人的な話をしたところでありまして、政府としては、そういう可能性も想定して、被災地の水産物限定でなく、全国どの地域の水産物についても支援可能な、三百億の基金による風評影響対策を講じてきたところでございます。その際、日本水産物の全面禁輸という事態が確実に起こるとは限らないため、特定国、地域依存からの脱却などの構造転換については、状況に応じて臨機応変に対策を講じることとしておりました。今回、我が国としては・・・科学的根拠に基づく措置を求めてきましたが、日本水産物の全面禁輸が実際に生じたために追加対策を講じたものでありまして、そうした事態が生じたことについての所感を述べさせていただきました。」と述べたとおりである。
 また、「農林水産省において改善を図った組織体制等」とのお尋ねについては、その趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難である。

二の4について

 お尋ねの「想定した具体的なケース」については、御指摘のように「政府としてはあらゆる可能性も想定していた」ところであるが、政府としては、ALPS処理水の海洋放出に伴う諸外国による科学的根拠のない輸入規制措置等の撤廃に向けた働きかけを行っている中で、「想定した具体的なケース」について明らかにすることは、今後当該働きかけに影響を与えるおそれがあることなどから、お答えすることは差し控えたい。
 いずれにせよ、政府としては、二の1及び3についてでお答えした「「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」の実行と今後の取組について」において、「ALPS処理水の海洋放出に伴う諸外国による科学的根拠のない輸入規制措置等への対策として、状況に応じて、水産物等の国内消費の拡大、国内生産の維持、新たな輸出先のニーズに応じた加工体制の強化、海外でのプロモーションや商談会の開催等の新たな輸出先の開拓等、臨機応変な対策を講じ万全を期す。」こととしているところである。

二の5について

 お尋ねについて、我が国の水産物に対して中国及びロシアが御指摘のように「輸入規制措置を強化することを決定した」ことは極めて遺憾であり、政府一丸となって、あらゆる機会を通じて、科学的根拠のない輸入規制措置の即時撤廃を強く求めていくとともに、御指摘の「今後、同様に輸入規制措置を強化する国が世界各国に広がっていくこと」がないよう、あらゆる機会を捉えて、ALPS処理水の安全性について高い透明性をもって国際社会に発信してまいりたい。

三の1について

 お尋ねの「対策事業別の内訳」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、令和五年九月四日に取りまとめた「「水産業を守る」政策パッケージ」における総額千七億円の予算額は、令和三年度補正予算において措置された「ALPS処理水の海洋放出に伴う需要対策事業」の三百億円、令和四年度補正予算において措置された「ALPS処理水の海洋放出に伴う影響を乗り越えるための漁業者支援事業」の五百億円及び令和五年度予備費において措置された「ALPS処理水関連の輸入規制強化を踏まえた水産業の特定国・地域依存を分散するための緊急支援事業」の約二百七億円の予算額を合算したものである。
 また、積算根拠については、「ALPS処理水の海洋放出に伴う需要対策事業」では、ALPS処理水の海洋放出に伴う水産物の需要の減少等の風評による影響が生じた場合に漁業者が安心して漁業を続けていくため、漁業者団体による水産物の販路拡大の取組への支援等に要する経費、「ALPS処理水の海洋放出に伴う影響を乗り越えるための漁業者支援事業」では、持続可能な漁業継続を実現するため、省エネ活動等を通じたコスト削減に向けた取組等への支援に要する経費、「ALPS処理水関連の輸入規制強化を踏まえた水産業の特定国・地域依存を分散するための緊急支援事業」では、水産物の新たな需給構造の構築を支援するため、漁業者団体等によるホタテ等の輸出の減少が顕著な品目の海外を含む新たな需要の開拓等への支援に要する経費である。

三の2について

 お尋ねについては、御指摘の「令和四年の国民一人当たりの国内消費量が約七粒」は、ホタテ一枚当たりの重さを二百五十グラムと仮定した上で、農林水産省の「海面漁業生産統計調査」における令和四年のホタテの国内生産量から財務省の「貿易統計」における同年のホタテの輸出量を原魚換算(処理又は加工された魚介類の重量を、当該処理又は加工される以前の元の重量に換算することをいう。)した推定値を差し引いて算出した同年のホタテの国内消費量の推定値である約二十二万千トンを令和五年一月一日現在の住民基本台帳に基づく人口及び当該ホタテ一枚当たりの重さで除した推定値であり、御指摘の「追加で五粒」は、令和四年の中国及び香港向けのホタテの輸出量の約十七万九千トンを当該人口及び当該ホタテ一枚当たりの重さで除した推定値である。

三の3について

 お尋ねの「全体的な影響及び被害額」については、御指摘の「各国・地域の輸入規制の強化」により、水産物の生産から流通までの各段階で影響が生ずるなどその対象が多岐にわたることから、網羅的にお答えすることは困難であるが、令和四年における我が国からの水産物の輸出額が第一位の中国及び第二位の香港が我が国の水産物に対する輸入規制措置を強化したことなどを踏まえ、令和五年九月四日に取りまとめた「「水産業を守る」政策パッケージ」において、我が国の水産業支援に万全を期すべく、「国内消費拡大・生産持続対策」、「輸出先の転換対策」、「国内加工体制の強化対策」等の対策を実施することとしている。

三の4について

 御指摘の「中国等による輸入規制措置が長期化する場合等」の影響について、あらかじめ具体的に想定することは困難であるため、現時点でお尋ねにお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、全国の水産業支援に万全を期すべく、必要に応じて機動的に予算を確保してまいりたい。

四について

 御指摘の「国益を損なう判断」の意味するところが必ずしも明らかではないが、合同会議において、西村経済産業大臣から、「漁業者の方々からは、IAEAの包括報告書や安全性の説明を通じて、安全性についての理解は深まった、また、廃炉となりわい継続は、漁業者の思いであり、政府の漁業者のなりわい継続に寄り添った姿勢と安全性を含めた対応について、我々の理解は進んできている、との声もいただきました。また、自治体、その他事業者への説明・意見交換において、処分の必要性や安全性、事業内容を説明してきている中で、こうした内容を理解したとの声もいただいております。こうした声も踏まえまして、関係者の一定の理解を得たと判断しております。」との発言があったとおり、漁業者やその他事業者、地方公共団体からの一定の理解は得られていると認識しているため、ALPS処理水の海洋放出に関して、御指摘の「国内外において十分な理解が得られていない状況」には当たらないと考えている。
 また、御指摘の「国内外の諸課題」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、一部の国・地域による輸入規制強化に対して、科学的根拠のない措置の即時撤廃を強く求めるとともに、総額千七億円の「「水産業を守る」政策パッケージ」を取りまとめたところである。今後とも、早急に対策を実行し、全国の水産業支援に万全を期すこととしており、御指摘のように「海洋放出を一時停止」する予定や「海洋放出の再開時期等について改めて検討」する予定はない。

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