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昭和四十年三月二十二日提出
質問第一〇号

 国会の国政調査権と検察権との関係に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十年三月二十二日

提出者  山田長司

          衆議院議長 (注)田 中 殿




国会の国政調査権と検察権との関係に関する質問主意書


一 日本国憲法第六十二条の国政調査権は、本来の裁判作用を除き、広く立法、行政、司法の各分野に及ぶものと思うが、政府の見解いかん。
二 前項の国政調査権は、本来の立法上の補充的権能にとどまらず国会は国権の最高機関として各種の行政作用に対する監督権能であると思うが、政府の所見いかん。
三 検察事務の責任者たる法務大臣は内閣の一員であるから検察事務もまた行政作用の一として調査権の対象となり、犯罪の捜査に関してはもとより起訴、不起訴についてもその妥当性の有無を国会は調査することができると思うが、政府の所見いかん。
四 日本国憲法第六十二条衆議院規則第九十四条一項により国会の常任委員会が国政調査権を有することは明らかであるが、その結果常任委員会の構成員たる各委員が検察権の行使が公正に行なわれたかどうかにつき政府に質問することは委員の当然の権利と思うが、政府の所見いかん。
五 わが国の刑事訴訟法は、起訴、不起訴の権限を検事に独占せしめ、しかも起訴の便宜主義という広範な権限を与えている。この公訴権の官僚独占の弊害をコントロールするために検察審査会法が存在し、刑事訴訟法第二百六十一条が存在する。検察審査会法第一条にあるがごとく公訴権の実行に関し民意を反映せしめその適正を図るという趣旨よりするならば、国民の代表である国会議員がその常任委員会において公訴権行使の適正の有無を明らかにするために質問し、政府は捜査の妨害にもならず、個人の名誉を傷つけざる範囲において詳細に納得のいく説明をすることが国会尊重の日本国憲法および前記法律の精神にかなつたものであると思うが、政府の所見いかん。
六 昭和三十九年十二月十七日第四十七国会の衆議院法務委員会において、近江絹糸株式会社元社長丹波秀伯の業務上横領告発事件につき委員の質問に対する政府委員の答弁は、捜査の密行なる原則を極端に固守して事実の真相を明らかにしなかつたうらみがある。
  たとえば、前記丹波が一億二千万円の金を会社から引き出したことは認められるが、丹波は個人の利益のために費消したものではないから犯罪の嫌疑が不十分として不起訴処分にしたと答弁している。
  ある金額が個人のために費消されたものでないということから直ちに犯罪の嫌疑が不十分ということになるであろうか。丹波において自分個人のためではなく、会社のためと思つて費消したとしても、その弁解だけで直ちに犯罪の嫌疑なしとはいえない。本来の会社の目的にあらざる方面に費消された場合においては政治資金規正法違反、あるいは刑法の単純贈賄、あつせん贈賄、背任等の犯罪の嫌疑がおこる。これらの犯罪は親告罪でないからたとえ告発人が業務上横領で告発しても、それ以外の犯罪の容疑があるならば検察官は捜査しなければならない。
  その点についての説明をせずしては不起訴処分が適正であることの釈明にはならないと思うが、政府の所見いかん。
  なお、不起訴処分の理由には、丹波の費消は会社の利益になつたものであるとなつているが、いかなる点が会社の利益になる支出であるか明らかにして欲しい。
七 昭和三十九年二月二十九日、日本社会党の綱紀粛正委員会の山田委員長ほか、坂本、(注)近、野原、坂上、猪俣の五委員が訪阪し、大阪地方検察庁の検事正室において、当事の井嶋検事正、占部特捜部長、志賀刑事部長同席の席上、占部特捜部長から丹波の費消した金のうち政治献金が五千八百万あることを言明されたのである。しかるに前記法務委員会において政府委員は、かかる明白な点についても答弁しないのである。
  その理由として個人の名誉にかかわり、捜査について協力を得られない恐れがある旨の答弁をしている。この理由も誠に珍妙であるが、坂本委員がかさねて個人の名を出さないでいいから一億二千万円がどの方面にどの位費消されたかの点だけでも明らかにせよ、と迫つたに対しても答弁を拒否している。
  結論として検察当局が事件の起訴、不起訴の処分後なお捜査の密行なる原則をたてに本件についていうならばいかなる方面に丹波がいくら金を費消したかを明らかにしないことは、公訴権の行使が適正であるかどうかについての議員の国会における調査に協力しないことを意味し、これは検察行政に対する国会の監督権を無視するものである。特に直接調査にあたつた検察官が国会外において公然言明した事実すらも答弁しないことは、国会軽視の態度といわざるをえないと思うが、政府の所見いかん。

 右質問する。





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