衆議院

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昭和四十年三月三十日受領
答弁第一〇号
(質問の 一〇)

  内閣衆質四八第一〇号
    昭和四十年三月三十日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 (注)田 中 殿

衆議院議員山田長司君提出国会の国政調査権と検察権との関係に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員山田長司君提出国会の国政調査権と検察権との関係に関する質問に対する答弁書



一 国会の衆・参両議院がそれぞれ国政に関する調査を行ない、その調査のため証人の出頭及び証言並びに記録の提出を求めることができることは、憲法第六十二条に規定するところであり、その権限は広く立法、行政、司法の各分野に及ぶものではあるが、そこには、後述するようなこの権限が認められている趣旨及び三権分立の大原則から生ずる一定の限界が存するものと考える。

二 右の国政調査権は、立法権、行政監督権、予算審議権、条約承認権等憲法によつて認められた国会の権限を有効適切に行使するための補充的権限であるから、その限度においてこれを行使しうるものと考える。

三 検察権は行政権の一部であるから、検察行政事務についてはもとより、検察事務についても、国政調査の対象となることは、質問のとおりであり、指摘にかかる犯罪の捜査及び起訴、不起訴の決定が検察事務に属することは、いうまでもない。
  しかしながら、検察権は司法権と特殊緊密な関係にあり、準司法的な性格を持つものである。三権分立を原則とする現行憲法のもとにおいて、司法権の独立を確保すべきことは、いうまでもないが、司法が公正に行なわれるためには、まずもつて、その前提をなす検察権が適正公平に行使されることが強く要請せられる。しこうして、検察権を適正に行使するためには、その秘密は、厳重に保持せられる必要がある。検察官は、いかなる犯罪についても、捜査をし、刑事について公訴を行ない、裁判所に法の正当な適用を請求することをもつて最も重要な職務の一つとしている。そして、犯罪を捜査するため、必要とするあらゆる取調べをすることが許されており、場合によつては、令状を得て被疑者を逮捕し、また、被疑者あるいは被疑者以外の物又は住居について捜索をし、証拠物の差押をするなどの強制処分を行なうことができる。かような強い権限に基づいて犯罪の捜査を遂行するのであるから、人の秘密にわたる事項に触れるのはもとより、取調べの内容についても、秘匿を要すべきものがあるとともに、他面、捜査の遂行上、捜査の方針、技術、方法など秘密とすべき事項の含まれることも当然といわなければならない。すなわち、検察が具体的事件の捜査の内容を秘匿しなければならないのは、他人の名誉を保護せんとするにとどまらず、最も大切なことは、捜査の内容自体を秘匿しなければ、その職務の遂行そのものに支障をきたし、現在及び将来にわたる検察の運営に重大な障害をもたらすおそれがあるからである。したがつて、検察権を適正に行使し、司法の公正な運営を確保するためには、刑事訴訟法上にもその旨の規定がおかれているように、捜査の秘密は、厳重に保持せられる必要があるのである。
  議院が国政調査権に基づいて、公益上必要ありとして調査を行なう場合において、政府がこれに協力すべきことは当然であるが、右に述べたような観点から、捜査の内容等の秘密であつて現在及び将来の検察運営に重大な支障をきたすおそれのある事項については、国の重大な利益に悪影響を及ぼすおそれのあるものとして、これを明らかにしないこともやむを得ないところと考えるのであり、このような意味において国政調査権に一定の限界の存することは、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律第五条の規定に徴しても明らかである。

四 憲法第六十二条、衆議院規則第九十四条第一項の規定により議院の常任委員会が検察権の行使に関する調査を行なう場合においては、委員は、国政調査権の範囲内において、これに関する質疑を行ないうるものと考える。

五 検察審査会は、検察審査会法の規定するところにより、具体的事件について、検察官のした公訴を提起しない処分の当否を審査する機関である。一方、議院の国政調査権は、二において述べたような権限であるから、検察審査会の具体的事件に関する権限とは、おのずからその目的、行使の方法等において異なるものがあり、議院が国政調査権として検察審査会と同様の権限を行使しうるものとは考えない。

六 指摘にかかる衆議院法務委員会における政府委員の答弁は、三において述べた見地から妥当と認められる範囲において説明を行なつたものである。

七 議院の国政調査権は、十分尊重されるべきものであり、この権限に基づく調査に対しては、政府としてもできる限り協力する考えであるが、本件については、捜査の秘密にわたる部分があつたため、これに関する質問に対し答弁を差し控えたのである。それは、既に述べたとおり、このような捜査の秘密を厳に保持することが、将来にわたる検察権の公正な行使、ひいては刑事司法の公正妥当な運営を期するうえに不可欠であると考えられたためにほかならない。

 右答弁する。


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