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平成十三年二月二十八日提出
質問第三三号

弁護士法第二三条の二に基づく照会に関する質問主意書

提出者  佐々木秀典




弁護士法第二三条の二に基づく照会に関する質問主意書


 弁護士法第二三条の二第一項は、弁護士は、受任している事件について所属弁護士会に対し公務所等に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる旨規定し、同条第二項は、弁護士会は、前項の規定による申出に基づき、公務所等に照会して必要な事項の報告を求めることができる旨を規定している。
 この制度は、司法における真実の発見と公正な判断に寄与するもので、弁護士が、依頼者の人権を守るための弁護活動において必要欠くべからざる手段であり、この制度が機能しなければ、国民の人権が不当に侵害されようとしても、弁護活動による救済を得られないおそれが生ずるため、同条による照会を受けた公務所等は、正当な理由がない限り照会事項に対して報告をすべきである、とされている。
 ところが、近時いくつかの地方自治体が、弁護士会からの照会に対し、その照会の内容が公務所にとって守秘義務を負う事項であり、この照会に応ずることは地方公務員法第三四条、あるいは地方税法第二二条に規定する守秘義務違反となるとの理由で回答を拒否する事例が続出している。
 例えば、富山県弁護士会は、弁護士法第二三条の二に基づく弁護士会長による照会をもって富山県婦負郡婦中町長あて平成一一年一一月三〇日付にて死亡者の印鑑(改印)登録手続の申請人と印鑑証明書交付申請の申請人の氏名の開示と申請書の写しの送付方を求めたところ、同町長は、同年一二月一六日付をもって照会に対する回答を拒否している。
 右照会にかかる事案は、相続人が、被相続人の生前中にその所有不動産が他人名義に移転登記されていることを発見したため、他人が被相続人の実印を無断で改印して印鑑登録した上その印鑑証明書の交付を受けて登記に及んだ可能性があるとして、右登記の抹消を請求しようとする事件で、印鑑登録者が死亡しているため、印鑑登録者と右印鑑(改印)登録手続の申請人及び印鑑証明書交付申請の申請人との同一性を知ることが事案の解明につき不可欠でありかつ唯一の手段であることから、富山県弁護士会より右照会に及んだものであった。
 これら回答を拒否する地方自治体は、いずれもが昭和三八年三月一五日付自治省税務局長あて内閣法制局第一部長回答(内閣法制意見年報第一〇巻一七頁中)に、弁護士会の照会は、結局は照会を申し出た弁護士の依頼者の利益のためのものであるから、他人の私人の秘密を犠牲にすべきではない、との趣旨の記載のあることを根拠としている。
 しかし、この第一部長回答の趣旨は「公務所が守秘義務を負う事項に関する照会に回答することはすべて法に定める守秘義務違反となる旨を述べたのではなく、個々の具体的事案毎に、守秘義務により守られるべき公益と回答を受けることにより得られるべき利益とを比較衡量し、その結果回答を受けることによって得られるべき利益の方が勝る場合には、公務所は回答をすべき義務を負うものであること、そのような場合に回答を行っても、秘密漏洩の罪を負うこととはならない」(堀籠幸男「法制意見百選」六九三頁 昭和六一年株式会社ぎょうせい刊)、というものであり、地方自治体は、右第一部長回答の本来の趣旨を理解しないまま一律に回答を拒否しているものと思われる。
 よって次の質問を行う。

一 地方自治体が、照会の内容を吟味しないまま右内閣法制局第一部長回答を根拠に守秘義務を負う事項であるとして回答を拒絶することは、弁護士法第二三条の二に違反し、同制度の趣旨を没却するものであり、本来公務所が守秘義務を負う事項に関する照会に回答することはすべて法に定める守秘義務違反となるのではなく、個々の具体的事案毎に、守秘義務により守られるべき公益と回答を受けることにより得られるべき利益とを比較衡量し、その結果回答を受けることによって得られるべき利益の方が勝る場合には、公務所は回答をすべき義務を負うものであること、かつそのような場合に回答を行っても、秘密漏洩の罪を負うこととはならないものと思われるが、内閣法制局長官としてはどのように考えるか。
二 総務大臣としては、このような誤った処理を行っている地方自治体に対しこれを改善する方策、例えばこの処理が誤りであることを周知徹底させる対策を検討すべきではないか。

 右質問する。



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