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平成十八年五月二日提出質問第二四八号
在沖縄海兵隊司令部のグアム「移転」及び「米軍再編」に伴う財政負担に関する質問主意書
在沖縄海兵隊司令部のグアム「移転」及び「米軍再編」に伴う財政負担に関する質問主意書
額賀防衛庁長官は四月二十三日、ラムズフェルド米国防長官と会談し、在沖縄海兵隊司令部のグアム「移転」に関連する経費として、日本政府が「所要経費一〇二.七億ドル」のうち、「五九%に当たる約六〇.九億ドルを支援」することに合意した。
政府は四半世紀にわたり、「思いやり」と称して、日米地位協定上負担義務のない在日米軍駐留経費の分担に応じてきたが、米国領内の米軍施設の建設に日本の税金を投入するなどという事態は、日本の財政史上はもちろん、国際的にもかつてないことである。基地負担の軽減を求める沖縄県民の声を逆手にとって、米国の新たな戦略拠点づくりに国民の税金を投入するなど、断じて容認できない。
額賀長官は、合意後の記者会見で、「我々は日本の積み上げ方式の下で、負担の割合を考えていった」と強調している。しかし、合意した費用の「積み上げ」がいかなる根拠によるものか、「米軍再編」に伴う日本側の財政負担が一体どれだけになるのか、政府はいまだ何らの説明も行なっていない。
こうした下で、日米両政府は五月一日、日米安全保障協議委員会(「2プラス2」)を開催し、「米軍再編」の実施計画を盛り込むいわゆる「最終報告」(「再編実施のための日米のロードマップ」)を公表した。再編案の「実施における施設整備に要する建設費その他の費用」を「日本国政府が負担する」原則で合意する一方、その負担で何をどこまでつくるのか、日本側の負担規模がどれだけになるのかについては明示しないままである。
ローレス米国防副次官は四月二十五日の記者会見で、グアム「移転」経費を含め、「米軍再編」に伴う日本側の負担が二六〇億ドルに上るとの見通しを示している。国民には相次ぐ負担増と社会保障の切り捨てを押しつけておきながら、米軍のためには湯水のように血税を投入するなど、到底許されない。
以下、質問する。
(1) 「移転」の性格について
1 政府は沖縄に駐留する海兵隊司令部を中心に約八〇〇〇人をグアムに「移転」すると言うが、米国政府が米国領内に米軍部隊を引き揚げるのは通常「移転」ではなく「撤退」と認識されるものと考える。政府はその性格についてどのように認識しているのか。
2 在日米軍が米国領内に「撤退」する場合や在日米軍の施設・区域が返還される場合の日米間の費用負担のあり方について、日米間にはどのような取り決めがあるのか。この際、すべて明らかにしていただきたい。
3 日米安保条約締結以降、在日米軍部隊が「撤退」した主な事例とその際の費用がどのように負担されたかについて明らかにされたい。
4 米国政府は、日本以外の受入国との間に、駐留米軍の「撤退」や施設・区域の返還に要する費用負担のあり方について、どのような取り決めを結んでいるのか。
5 日本以外の受入国から米軍部隊が「撤退」した主な事例とその際の費用がどのように負担されたかについて明らかにされたい。
(2) 「移転」内容について
1 現在沖縄にはどれだけの規模の海兵隊が駐留しているのか、定数及び実員ごとに明らかにされたい。また、その部隊ごと及び施設ごとの内訳について明らかにされたい。
2 「最終報告」は、「約八〇〇〇名の第三海兵機動展開部隊の要員と、その家族約九〇〇〇名は、部隊の一体性を維持するような形で二〇一四年までに沖縄からグアムに移転する」と明記した。「移転する部隊」として「第三海兵機動展開部隊の指揮部隊」「第三海兵師団司令部」「第三海兵後方群(戦務支援群から改称)司令部」「第一海兵航空団司令部」「第一二海兵連隊司令部」を挙げ、「キャンプ・コートニー、キャンプ・ハンセン、普天間飛行場、キャンプ瑞慶覧及び牧港補給地区といった施設から移転する」としている。「移転する部隊」は、それぞれどの施設に何名駐留しているのか。
3 沖縄に残る部隊の名称、規模、駐留施設名について明らかにされたい。
4 「最終報告」は、「普天間飛行場代替施設への移転、普天間飛行場の返還及びグアムへの第三海兵機動展開部隊要員の移転に続いて、沖縄に残る施設・区域が統合され、嘉手納飛行場以南の相当規模の土地の返還が可能となる」と述べているが、グアム「移転」と「嘉手納以南の土地の返還」とは「直接関係ない」という防衛庁の私に対する答弁(三月二十九日衆議院外務委員会、大古防衛局長)との関係について説明されたい。
5 「最終報告」では「全面的又は部分的な返還が検討される」「六つの候補施設」を挙げているが、それぞれSACO(沖縄に関する特別行動委員会)最終報告に明記された内容とどのような違いがあるのか。また、海兵隊司令部のグアム「移転」に「直接関係」して返還が検討されるに至った施設があれば明示されたい。
6 「六つの候補施設」の中にキャンプ・コートニー、キャンプ・ハンセンは含まれていないが、これらの施設の返還は検討しないということか。その理由は何か。
7 「返還対象となる施設に所在する機能及び能力で、沖縄に残る部隊が必要とするすべてのものは、沖縄の中で移設される」としているが、どういう「機能及び能力」を指しているのか、具体的に示されたい。
(3) 「移転」経費について
1 防衛庁が提出した「グアム移転経費の内訳」によると、「日本側負担」の「事業内容」として「司令部庁舎」「教場」「隊舎」「学校等生活関連施設」「家族住宅」「基地内インフラ(電力、上下水道等)」、「米国側負担」の「事業内容」として「ヘリ発着場」「通信施設」「訓練支援施設」「整備補給施設」「燃料・弾薬保管施設」「道路」などを挙げている。「事業内容」ごとに目的、施設の内容・規模・建設場所、移設元である沖縄での施設の現状と今後の取扱いについて明らかにされたい。
2 「財政支出(真水)」は「二八億ドル(上限)」など、負担形式の「分類」に則して「負担額」を明記しているが、明記した「負担額」のそれぞれについて、「事業内容」ごとの内訳及び積算根拠を明らかにされたい。
3 合意した日米間の費用の分担は、いかなる考え方に基づくものか。
4 「家族住宅」については「出資」「融資等」、「基地内インフラ(電力、上下水道等)」については「融資等」で対応するとしているが、それぞれ具体的にどのような枠組み・機関を使って行なうのか。「融資等」の「等」とは何か。
5 額賀防衛庁長官は「出資の一五億ドルは日本に最終的には返ってくる」(四月二十三日記者会見)と述べているが、いかなる根拠に基づくものか。日本側が負担する「出資」「融資等」が回収不能になる可能性も指摘されているが、政府はこの点をどう認識しているのか。
6 報道では、「米国側負担」の「道路」とは、「アプラ海軍基地とアンダーセン空軍基地を結ぶ高規格道路」と伝えられているが(〇六年四月二十八日付「沖縄タイムス」)、相違ないか。既設の道路に加え、このような道路を必要とする理由は何か。海軍基地と空軍基地を結ぶ道路の敷設が、海兵隊の「移転」に伴う経費と言えるのか。
二 「米軍再編」に伴う財政負担について
(1) 「米軍再編」に伴う日本側の負担が二六〇億ドルに上るというローレス米国防副次官の見通しについて、政府はどう認識しているのか。
(2) この際、日本側の財政負担が生じることになる再編案をすべて明示し、そのそれぞれについて、建設する施設の内容・規模・予算額を具体的に示されたい。
(3) 普天間飛行場代替施設について、昨年十月の「共同文書」で示した政府の「沿岸案」と四月七日政府が名護市、宜野座村と合意した「滑走路二本案」との間に、施設面積及び予算額においてどのような違いがあるのか。
(4) 「最終報告」には、「在日米陸軍司令部の改編に伴い、戦闘指揮訓練センターその他の支援施設が、米国の資金で相模総合補給廠内に建設される」とあるが、「その他の支援施設」とは何か。「米国の資金」で建設することとした理由は何か。これ以外に「米国の資産」で建設する施設はあるのか。
(5) 「厚木飛行場において、海上自衛隊EP−3、OP−3、UP−3飛行隊等の岩国飛行場からの移駐を受け入れるための必要な施設が整備される」とあるが、「必要な施設」とは何か。また、その予算額についても明らかにされたい。
(6) 「KC−130航空機の展開を支援するため、鹿屋基地において必要な施設が整備される」とあるが、「必要な施設」とは何か。また、その予算額についても明らかにされたい。
(7) 「当分の間、嘉手納飛行場、三沢飛行場及び岩国飛行場の三つの米軍施設からの航空機が、千歳、三沢、百里、小松、築城及び新田原の自衛隊施設から行われる移転訓練」に関連して、「日本国政府は、実地調査を行った上で、必要に応じて、自衛隊施設における訓練移転のためのインフラを改善する」とあるが、どのような施設をどれだけの規模で建設するのか。「日本国政府及び米国政府は、即応性の維持が優先されることに留意しつつ、共同訓練の費用を適切に分担する」とは、具体的にどのような費用をどのように分担するということか。
(8) 「米軍再編」に関連する経費は、「防衛関係費」の枠内で措置していくことになるのか、それとも別枠で取り扱っていくことになるのか。現行「中期防衛力整備計画」は、見直しを行なうことになるのか。
(9) 今後、関係する地方自治体への交付金や振興策などについて、どういう枠組みでどれだけの規模の予算を見込んでいるのか。
右質問する。