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平成十八年十二月十二日提出
質問第二三五号

諫早湾干拓事業の農地配分と調整池の水質改善に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




諫早湾干拓事業の農地配分と調整池の水質改善に関する質問主意書


 諫早湾干拓事業は、造成する農地を営農者が直接買い上げる買取り方式を基本としてこれまで工事が進められてきた。国や長崎県は用途別土地価格や土地代金の支払方法を示し、営農経営を宣伝してきたところである。昨年になって長崎県は、造成される約七百ヘクタールの農地すべてを国から長崎県農業振興公社にいったん一括して買い上げ営農希望者に貸し付ける、いわゆるリースする方式にすることを明らかにした。長崎県農業振興公社は百%長崎県が出資する団体で、長崎県は公社に対し農地の一括買上げのために五十三億円を全額支出することになる。この実態は長崎県による土地の買上げ事業にほかならない。
 農業用水のために貯留している調整池の水質は、いまだ水質保全目標値を上回り、工事が完了する二〇〇七年度までに改善する見込みは全くない。水質改善対策を追加することによって干拓事業費は二千五百三十三億円に増額したが、効果は上がっていない。無駄に無駄を重ねる結果になっており、抜本的な水質改善のために調整池に海水を導入する必要性はますます高まっている。
 よって、次のとおり質問する。

(一) 買取り方式以外にリース方式も検討中であったといわれているが、基本は営農者による買上げ方式であったはずである。国は「干拓農地の三倍以上の営農希望が寄せられている」と営農に見通しがあることを大々的に宣伝してきた。長崎県農業振興公社が国からいったん農地の配分を受け、それを営農者にリースするという方式を採用せざるをえなくなったのは、当初の干拓事業の目的や計画が破たんしたことを示すものではないか。
(二) 長崎県農業振興公社への農地の一括配分は、国へ配分申込書や使用処分計画が提出されていないので正式に決定していないものと思うが、国と長崎県との調整過程における現時点で、同公社は配分を受ける団体として適格な要件をすべて満たしているか。
(三) 国は買取り方式の場合、農地価格は十アールあたり七十万円台と説明してきたが、「諫早湾干拓公募基準」では貸付料金は明示されていない。十アールあたりの貸付料金は現時点でいくらか。示せないとすればなぜか。
(四) 工事完了後の水質改善対策もしくは水質保全対策は、国が行うのか。あるいは長崎県や地元自治体が行うのか。
(五) 調整池の水質保全目標値の達成時期は、工事完了の二〇〇七年度まで先送りされた。調整池の水質が目標値を上回っている理由について、昨年七月十五日に受領した「諫早湾干拓事業の開門調査と調整池の水質改善対策に関する質問主意書」(内閣衆質一六二第九四号)への答弁書において、「諫早湾干拓調整池水質保全計画(第二期)に盛り込まれた水質保全対策が完了していないことから、調整池の水質は、水質保全目標値を上回る水準となっている」と述べている。調整池の水質が保全目標値を上回っているのは、地元自治体の水質保全対策が未完了だからで、完了しなければ水質の改善は見込めないということか。
(六) 「水質保全計画に盛り込まれた水質保全対策」とは、諫早市とその周辺の下水道事業、農業集落排水事業を含むと考えられる。長崎県が「二〇〇三年一〇月七日付、一五環政号外」で小沢和秋・元衆院議員に提出した「諫早湾干拓調整池水質保全計画(第二期)にかかる生活排水処理施設整備の概要」によれば、「諫早市公共下水道事業」の完了は二〇一〇年度、「高来町特定環境保全公共下水道事業」の完了は二〇〇九年度、「吾妻町特定環境保全公共下水道事業」の完了は二〇〇九年度、「諫早市農業集落排水事業」の完了は二〇〇七年度、「森山町合併処理浄化槽設置整備事業」の完了は二〇一一年度、「吾妻町合併処理浄化槽設置整備事業」の完了は二〇〇九年度となっており、地元自治体の水質保全対策の完了時期は、国が想定している事業完了年度と同じか後である。これらの完了を待っていては、国が想定している事業完了の二〇〇七年度には水質保全目標は達成できないのではないか。
(七) 潮受堤防による諫早湾閉め切りによって現在調整池となっている農林水産省のモニタリング地点「B1」と「B2」の化学的酸素要求量(COD)・全窒素・全燐の数値が、一九九七年の潮受堤防閉め切り以後急激に高まった理由について、前記答弁書では「調整池の水質は、基本的には流入河川の水質を反映しているが、調整池の浅水域で生じる風による底泥の巻上げ等により、流入河川の水質と比較してCODがやや高くなっているものと考えている」と述べている。調整池は河川に近い状況となり、これに巻上げが加わってCOD濃度が高くなったことを主張していると考えられるが、巻上げが生じるのは潮受堤防の閉め切りによって諫早湾のかつての浅海域が淡水化されたためであり、淡水化が続く限り巻上げを減少させることはできないのではないか。
(八) 調整池のCODの数値が高いままなのは、巻上げに加えて植物プランクトンが大増殖して赤潮状態になっていることが関連している。すでに本明川等の流入河川の水質は生活排水等の浄化によって、ある程度改善されていると考えられるが、調整池の赤潮状態はまったく改善されていないのではないか。流入河川の窒素や燐をどれだけ削減すれば調整池が赤潮状態にならないようにできると考えているか。
(九) 調整池内での潜堤工事や覆砂など、水質改善対策のためにどれだけ巨額の予算を投じようとも、一向に水質改善には結びつかないことは、農林水産省が国営農地防災事業として底泥の浚渫等を行っている岡山県児島湖の実例が、すでにはっきりと示している。調整池への海水導入以外には、調整池の水質を抜本的に改善させる方法はないのではないか。
(十) 諫早湾干拓事業の大雨時での洪水被害の軽減を図る機能について、国は「既存堤防の排水樋門の前面でのガタ土の堆積が解消されることによってミオ筋の確保が容易となり、河川などからの排水が速やかに行われる」ことを理由にあげている。排水樋門前面のガタ土堆積を解消する方法を他に確保することができれば、潮受堤防を閉め切って調整池の水位をマイナス一mに保つことは、防災上必要な要件ではないと理解してよいか。
(十一) 中長期開門調査を行わない理由の一つに、農林水産省は背後地での防災機能を確保するために時間と費用がかかることをあげている。しかし、その根拠となる洪水時の解析方法が恣意的ではないかという疑いがある。
 二〇〇三年十二月十九日に中・長期開門調査検討会議に提出した「中・長期開門調査の及ぼす影響と対策について」の中で、農林水産省は一九五七年七月の諫早大水害の降雨条件を前提とした流況解析グラフを掲げている。「洪水時の対策」として、常時開門の場合は「調整池水位に干満が生じることにより、降雨時には調整池水位を標高マイナス一mに管理する場合と比較して排水不良となり、湛水被害が発生する可能性があることから、排水影響相当分を排除するための対策として一五五m3/秒の排水ポンプを設置する」ことが必要と結論づけている。
 解析結果によると十五時から十八時までの間は、調整池に相当の洪水が流入しているが、調整池よりも外海の潮位の方が高く、調整池へ海水が流入しているように見える。洪水時には外海から調整池への海水の流入を防ぐために当然排水門を閉鎖すべきであるが、この流況解析は調整池水位よりも外潮位の方が高い場合でも排水門を閉じない条件で行ったのか。

 右質問する。



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