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平成十九年四月六日提出
質問第一六二号

若年者の雇用政策と支援に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




若年者の雇用政策と支援に関する質問主意書


 若年者の雇用情勢は、新規学卒者の就職内定状況に回復の兆しが見られるものの、アルバイト、パート、派遣、請負、契約、嘱託といった正社員でない形でフリーターとして働いている者が多数存在している。さらには、若年者の失業者、ニートの数が高止まり傾向にあるなど、若年者の雇用問題は深刻な事態にある。
 学識者、労働関係者の間からは、若年者の失業等は構造的な問題であり、こうした状態が長期に持続するようなことになれば、日本の今後の社会や経済に著しい影響を与えるとの指摘もなされている。若年者の雇用問題は、若者の将来と格差を固定化させない社会をつくる上で放置できない非常に重要な課題であり、とりわけ若年者の雇用政策と支援は喫緊の課題である。
 従って、以下の事項について質問したい。

一 若年者雇用の実態と現状認識について
 1 若年者の失業者は一二七万人、フリーターが一八七万人、ニートについては、六二万人とも八五万人とも言われている。
  現在政府は、若年者(一五歳から三五歳未満の者)のうち失業者、フリーター及びニートの数はどれくらいに達していると把握しているのか。また、バブル崩壊後のいわゆる就職氷河期に不本意な職業につかざるを得なかったフリーターは何人か。さらに、政府は若年者の雇用の現状をどのように把握しているのか、併せて明らかにされたい。
 2 若年者の失業者、フリーター及びニートの数が増加した要因、高止まりしている要因は何にあると認識しているのか、政府の見解を伺いたい。
 3 1で示した政府の狭い定義による統計数字には、就職先がないために大学を留年する者、学卒後とりあえず専門学校等に籍を置きアルバイトをしている者、就職の意思のない家事手伝いや推計五〇万人の「ひきこもり」は含まれていない。
  また、契約社員、フリーライターなどの自由業者、自営業者や家族従業者でもアルバイト程度の収入しかなく、将来の収入保障のない若者もいる。こうした「収入・経済基盤が不安定な若者」、すなわち「フリーター的立場」に置かれている若者を含めると、現在でもその数は五〇〇万人を下らないだろうという指摘がある。
  政府は、収入が不安定で将来の収入保障のないこれら若者の雇用の現状をどのように考えているのか見解を伺いたい。
 4 フリーター及びニートの定義が、内閣府と厚生労働省とで異なっており、それぞれの実態を正確に把握する上でも、問題の本質を理解する上でも統一する必要があると考える。そこで、政府のフリーター及びニートの統一した定義を明確にされたい。
 5 フリーター及びニートの問題については、学者の間には、「景気が回復しても解消しない。産業構造の変化に伴う雇用形態の転換による不安定雇用化という構造的要因として捉える必要がある」との意見が少なくない。このような意見に対して、政府はどのように考えているのか見解を伺いたい。また、政府がこのフリーター及びニート問題の要因は別の構造的要因にあるとの認識を持っているのであれば、その見解を伺いたい。
 6 フリーター及びニートの数が高止まりしている背景には、長期化した不景気だけでなく、企業が、雇用形態を「転換」して「多様化」を推進し、人件費大幅削減のために正規社員のリストラ解雇、正規雇用から非正規雇用への置き換え、賃金切り下げ、新卒採用の抑制、フリーターの活用・拡大をしてきたことなどがある。また政府が、この雇用形態の転換を「労働市場の流動化」「終身雇用の終焉」と称して強力に推進してきたことにあるとの見方がある。このような意見をどう考えるのか、政府の見解を伺いたい。
  また政府は、フリーター、ニートの増加の背景をどのように考えているのか、見解を伺いたい。
二 若年者雇用の「格差」について
 1 若年者の正社員とフリーター、ニートとの雇用「格差」について、どのような現状認識を持っているのか。まず政府の見解を伺いたい。
 2 若年層は、ひとたびフリーターとなれば定職につくことは極めて困難であり、昇給もなく定期収入の見通しも保障もない。初期条件の違いが将来にわたって大きな格差を生み出すことになり、それは収入の格差にとどまらず若者の意識、生活スタイル、活動範囲など生活全般に影響を及ぼす。
  こうした雇用の「格差」は、将来への希望、展望を持てない若者を大量に生み出しているとの指摘がある。政府は、かかる指摘についてどう考えるのか。また、どのような問題をはらんでいると考えているのか見解を伺いたい。
 3 フリーターの増加は、@フリーターの七割以上の者が、正社員を希望していると言われているが、その希望がかなえられないために、若者の不利益や不安感を著しく増大させているA正社員と収入や雇用が不安定なフリーターとの格差が広がり、社会秩序への影響が増大するBフリーターは、「定型的」、「補助的」な仕事に従事している者が多く、職業訓練の場も保障されないために中長期的には、経済活動にも著しい影響を与えることになるC世帯形成期になっても、安定した収入、経済的基盤がないために結婚や子育ての制約となり、晩婚化、少子化に拍車をかけることになるとの指摘がある。
  このような指摘に対し、政府はどのように考えているのか。
 4 フリーター、ニートの増加が経済、社会にもたらす影響や問題点について、政府はどのような認識を持っているのか。
三 若年者雇用政策と対策について
 1 安倍総理は、施政方針演説で「さまざまな事情や困難を抱える人たちも含め、挑戦する意欲を持つ人が就職や学習に積極的にチャレンジできるよう、今般取りまとめた「再チャレンジ支援総合プラン」に基づき、全力を挙げて取り組みます」と表明された。
  総理のいう「再チャレンジ」の考え方について、詳細かつ明確に伺いたい。
 2 「再チャレンジ支援総合プラン」の「基本的認識」では、「「勝ち組、負け組」を固定させない社会、また、働き方、学び方、暮らし方が多様で複線化した社会の仕組が必要である」と述べている。それはどのような社会の仕組を考えているのか具体的に説明されたい。
 3 「再チャレンジ支援総合プラン」は、激しい市場競争で、そこからはじき出された者、すなわち会社をリストラされた者、障害者、高齢者までひとくくりにして、こうした人たちの中で、再挑戦しようとする姿勢のある者に対して、事後的に「再チャレンジ」の機会を提供するというものであると理解してよいか。
 4 「再チャレンジ支援総合プラン」における「再チャレンジ」とは、フリーター等を生じさせないために安定した雇用機会をどう確保するのか、障害者や高齢者に対して雇用機会をどう保障するのかという政策ではなく、フリーターや障害者、高齢者も含めて「チャレンジ」に成功しなければ、事実上「切り捨てる」というものか。
 5 フリーター等は、初期条件の不利によって、非正規で低賃金、不安定な生活という立場に置かれている。仮に若者が「再チャレンジ」して万が一うまくいったとしても、そこで待ち構えているのは「ワーキングプア」だったとしたら、若者は意欲と将来の希望をどのように持てばいいのか。「再チャレンジ支援総合プラン」では、これらのことについてどのように考えているのか、政府の見解を伺いたい。
 6 昨年、日本経団連が実施した調査結果によれば、企業五六〇社のうちフリーターを積極的に正社員に採用したいと答えたのは、わずかに一・六パーセントである。
  安倍総理は、各経済団体に「再チャレンジ支援策」に対する協力要請をしたようであるが、日本経団連の御手洗会長は「(正社員への採用について)性急に実現しようとすると企業経営に衝撃を与えかねない」という趣旨のことを述べた模様である。
  「再チャレンジ支援総合プラン」を強力に推進するといっても、企業がこのような姿勢では、その実効性は極めて乏しいのではないのか。経済団体の協力が必要と考えられるが、政府の見解を伺いたい。
 7 「再チャレンジ支援総合プラン」の「再チャレンジ支援における重点課題」では、「いわゆる「就職氷河期」に直面した若者、特にフリーターの常用雇用化やニートの職業的自立を促進する」としている。そのためにどのような具体的な対策等を講じるのか、明らかにされたい。
 8 「再チャレンジ支援策」は、「フリーター二五万人常用雇用化プランを推進し、二〇一〇年までにフリーターをピーク時の八割に減らす」としているが、そのためのどのような実効性のある対策を講じるつもりか。
 9 政府の言うように、若者が「再チャレンジ」によって安定した雇用機会を確保できるためには、低額の教育・職業的訓練の機会、その後の雇用の見通しが確実に保障されている体制がなければならない。そうでなければ「再チャレンジ」は、政府の責任を問わずに、いわゆる「負け」の原因を個人の努力や意欲のなさといった「自己責任」に帰すことにならざるを得ない。「再チャレンジ」構想は単なる「尻たたき」という厳しい指摘もある。政府の見解如何。
 10 「再チャレンジ支援策」は、正規社員と非正規社員の「均衡待遇」を掲げている。企業は、非正規社員の処遇を向上させるのではなく、「均衡待遇」を理由に、人件費削減から正社員の「雇用保障」「賃金」といった処遇の低下で対応することが考えられる。
  政府の見解を問う。

 右質問する。



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