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平成十九年十一月二十二日提出
質問第二五九号

経済成長を加速する具体的な方法に関する再質問主意書

提出者  滝  実




経済成長を加速する具体的な方法に関する再質問主意書


 前回の質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一六八第一七七号、以下「答弁書」という)は、質問に対する答えになっていない。前回の質問主意書は、我が国の極めて厳しい財政状態を改善するための具体的な方法を示したのであり、その方法に対する政府の見解を求めているのに答弁書にはそれが書かれていない。したがって再度質問する。

一 答弁書の「一について」で述べられたことは、過去の景気対策は、効果はあったことは認めるが、債務残高を増加させたという欠点があったということである。債務残高は、GDPの拡大に伴い増加するのは当然のことである。企業であっても、規模が拡大すれば、債務残高も増大するが、債務残高の増大が必ずしも悪いわけではない。これは国家でも同様である。橋本内閣、森内閣、小泉内閣、安倍内閣など、どの内閣でも債務残高を増大させた。債務残高を増やす経済政策が悪いとするなら、橋本、森、小泉、安倍の四内閣の経済政策も同様に悪かったということになる。福田内閣でも債務残高そのものを減少させるという公約をしていない。平成十九年一月十八日経済財政諮問会議発表の『日本経済の進路と戦略』を見ても、債務残高は常に増大し続けるとなっており、基礎的財政収支の黒字化は目標としていても、債務残高そのものを減らすという目標は聞いたことがない。したがって答弁書の「一について」で、小渕内閣の積極財政は債務残高を増やしたから良くなかったという主張は間違いではないか。
二 前回の質問を、もう一度読んでいただければ、お分かりになることだが、債務残高の増減について問題にしているわけでない。問題にしているのは、債務残高のGDP比であり、それは積極財政により減らすことができると主張しているのである。債務残高のGDP比ではなく、債務残高を減らすのが政府の目的であれば、単にデノミをやればよいだけである。百円を一円とすれば八百兆円は八兆円に減る。それではGDPも減ってしまうので何の意味もないと誰もが知っている。
 この例から分かるように、債務残高そのものを減らすということには何の意味もない。実際に政府が減らしたいと思っているのは、債務残高そのものではなく、債務残高のGDP比ではないのか。
 なお、参考までに書いておくと、平成十八年三月八日の参議院予算委員会で秋元司議員の質問に答えて谷垣財務大臣が債務そのものでなく、債務のGDP比を圧縮していくという意味の発言をされている。
三 答弁書の「二について」では「我が国の極めて厳しい財政状況」「財政の持続可能性に対する疑念」が指摘されている。これは何を意味するのか。新規国債の発行はもう限界に近く、財政は持続可能ではないということか。そうであれば、あと何兆円か発行すると、それ以上国債は発行できなくなり、国自体が「財政再建団体」になるという意味か。具体的にあと何兆円かを示していただきたい。
 あるいは、将来既発国債の償還に応じられなくなる可能性があるというのか。そうであれば、国債を売るときに、「この金融商品の元本は保証できません」と国民に納得してもらってから売らなければならないのではないか。
 そうではなく、国債発行は際限なくでき、国債は百%安全というのであれば、我が国の財政状態が厳しいことを強調せず、財政は持続可能であると宣言すべきではないか。
四 財務省のホームページによれば、現在の財政状態を一ヶ月分の家計に例えた場合、収入が四十万円、ローン利払い十五万円、家計費三十三万円、田舎への仕送り十万円、不足分(借金)十八万円、ローン残高四千六百万円とある。
 そのような例示をするならば、この家庭は、あとどれだけ借金ができるというのか。あるいは、あと何年でこの家庭は自己破産に追い込まれる見込みであるというのか。近く破産する見込みであれば、借金の返済が危ないということを表示すべきである。
 全く危なくないというのであれば、『この家庭は金持ちのスポンサーがいて際限なくローンができる家庭です』という注釈をこのホームページに書いておかないと、国の財政を家計に例えることはできず、国民を騙すことになる。
 この家庭が金持ちのスポンサーはいない一般の家庭なのであれば、自己破産寸前であり、債権が危なくなっていますよ(国債は危ないですよ)と国の内外にアピールしなければならないはずだ。
 要するに、国債を国民に売りつけるときは、この国債は絶対安全ですと言い、一方、増税・歳出削減を国民に押しつけようとするときは、財政が危ないから国債が危ないと言う。これを二枚舌というのではないか。「我が国の極めて厳しい財政状況」という意味を、国民誰もが分かるように説明していただきたい。
五 答弁書の「二について」では、質問した事に対する答弁を全く行っていない。引用された基本方針二〇〇七においては、歳出削減と増税のことが書かれているだけで、そのようなデフレ下での緊縮財政では債務のGDP比は増加せざるを得ないから、決して財政健全化はできない。しかし、もし積極財政に転じれば、GDPが増加し債務のGDP比が減少し、財政が改善するのではないかということを前回の質問主意書でお訊ねした。この質問に対する明確な答弁を頂きたい。
六 答弁書の「四及び五について」で、日本銀行の長期国債保有のあり方は、日本銀行がその資産及び負債の状況等を踏まえて決定すべき事柄であるとあるが、平成十九年二月二十三日の答弁書(内閣衆質一六六第六二号)で述べられたように、日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第三条第一項において、自主性は尊重されなければならない旨が規定されているとともに、同法第四条において、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」と規定されている。したがって、政府と日銀が一体となって、デフレを克服するために協力するのは当然である。
 日銀が長期国債保有を増やすべきだというのは、バーナンキ氏、サミュエルソン氏、クライン氏等の世界を代表する経済学者の意見であり、そうすることなしに財政健全化はあり得ない。
 景気がよくなれば、長期金利は五%程度まで上昇するし、その程度上昇しないと本格的な景気回復とは言えない。単純計算では八百兆円の国の債務に対する五%の利払いは四十兆円になり国税の大半は利払いで消えることになる。そういう事態を避けるという目的で、長期金利を上げないようにするため景気を悪くしたままにしておくのであれば、それは本末転倒である。そういう事態を避けるためには、前述海外の識者のアドバイスに従って、日銀の国債保有を増やすしかない。昭和恐慌の際に、それで成功したように、政府は日銀の国債保有増加の方向に舵を取るべきではないのか。
七 十一月三日に額賀財務大臣が早大で消費税増税を訴えたとのことである。質疑応答では、社会保障水準を維持するには消費税換算で最大十七%へ引き上げる必要があると述べたように報道されている。額賀大臣の発言が事実としたら、大臣は内閣府の試算を誤解しておられるのではないか。
 平成十九年十月十七日に経済財政諮問会議に提出された「有識者議員提出資料」には、試算Uの十一.四兆円削減、給付維持・負担上昇、制約ケースの場合の増税必要額三十一.〇兆円を示しているので、消費税一%を二.五兆円と仮定し単純計算して十七%の消費税だとしたものと推測される。しかし、二〇二五年度には、名目GDPは二〇〇六年度の一.五倍近くになっており、消費税一%は三.七兆円程度になっているはずである。この値を使って計算すると十三%となり、財務大臣の発言した数字は間違いではないのか。
 また「有識者議員提出資料」には、増税必要額は最大で三十一.〇兆円、最小で八.二兆円となっているが、この増税必要額の算出には到底受け入れ難い仮定がなされている。例えば、後記@ABで述べるような仮定のもとに計算するのが自然であるが、これによれば増税必要額の符合がマイナスとなり、逆に減税が可能となるのではないか。
 @ 短期金利を若干低めに誘導する
 A 不自然に低い乗数を、過去のデータが再現できるようなものに置き換える(内閣府の現在のモデルで使われるような乗数では小渕内閣の積極財政による結果が説明できない)
 B 日銀の国債保有残高を増やし、利払いを国庫に還流させる
  さらに、三十一兆円もの大増税をすれば、日本経済は致命的な大打撃を受け、企業倒産が相次ぎ、国は貧乏になってしまうのは明らかであり、敢えてこのような数字を示すことは政府の統治能力が失われていることを宣言するに等しく適切ではないのではないか。

 右質問する。



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