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平成十九年十一月三十日提出
質問第二八〇号

パレスチナ人の子どもの国籍等に関する質問主意書

提出者  保坂展人




パレスチナ人の子どもの国籍等に関する質問主意書


 本年六月に一部の市町村に対し、重国籍の子どもが国籍選択届をしているか否かに関する照会がなされたという情報があること、および本年十月三日の法務省民事局民事第一課長二一二〇号通知により、今後はパレスチナ人父母の子どもに対し日本国籍を付与しないという取扱いに改められたことを踏まえ、以下の点を質問する。

一 国籍選択届の照会について
 (1) 本年は、国籍法の改正により父母両系血統主義が採用されてから二十二年目にあたり、当時国際結婚により生まれた子どもが国籍選択の期限を迎えることになる(国籍法十四条一項)。
  法務省は、自民党のプロジェクト・チームの依頼を受け、このような期限を迎えた子どもが国籍選択届をしたか否かという照会を一部の市町村に対し行ったという情報があるが、調査の目的は何か。
 (2) 調査の対象となった子どもの特定は、どのような手段でなされたのか。
 (3) 調査の対象となった子どもの数、および国籍選択届を行っていた子どもの数は何人か。
 (4) 法務大臣は、期限内に日本国籍の選択をしない重国籍者に対し、書面により、国籍選択をすべきことを催告することができる(国籍法十五条一項)が、平成十五年七月十七日の参議院法務委員会における答弁(会議録二十三号一三頁)によれば、当時までに催告した例はないとされている。
  今回の調査は、新たに催告を行うためのものであるのか。
二 国籍選択の催告について
 (1) 国籍選択の催告を受けた者は、一か月以内に日本国籍を選択しなければ、自動的に日本国籍を失う(国籍法十五条三項)が、政府は、このような国籍の剥奪について、国民の理解が得られると考えるか。
 (2) 日本国内に居住する者が日本国籍を失った場合、在留資格の取得の申請および外国人登録の義務を負い、これらの義務を怠った場合は、刑事罰を科される(出入国管理及び難民認定法二十二条の二、七十条一項八号、外国人登録法三条一項、十八条一項一号)。自動的に日本国籍を失った者は、これらの義務を知らない可能性が大きいが、戦後すぐに在日朝鮮人・台湾人と結婚した日本人女性が外国人登録法違反に問われた例をみても分かるように、今回もまた、刑事罰に問われる危険性は大きいと思われる。
  政府は、それでもなお、国籍の剥奪について国民の理解が得られると考えるか。
 (3) もともと国籍選択制度は、一九七七年の欧州理事会閣僚評議会の決議の勧告を参考にしたものであるが、この勧告に従った国は、イタリアのみであり、しかも一九九二年には、そのイタリアも国籍選択制度を廃止している。さらに一九九七年には、同じ欧州理事会閣僚評議会が「国籍に関するヨーロッパ条約」を採択し、この条約によれば、出生により重国籍となった子どもがその国籍を保持することは、締約国の義務とされている(十四条一項a号)。
  このような状況において、国籍選択の催告を行い、それに従わなかった重国籍者の日本国籍を剥奪することは、国際的な非難を招くことにもなるのではないか。
三 外国居住者への催告について
 (1) 国籍選択の催告は、重国籍者が外国在住などにより所在を知ることができない場合は、官報への掲載によることができるが(国籍法十五条二項)、政府は、このような手段による催告も行うつもりか。
 (2) 官報による催告は、事実上、重国籍者の目に触れないわけであるから、日本国籍を失う危険性が高いが、このような国籍の剥奪は、国民の理解が得られると考えるか。
 (3) 官報による催告の場合に限り、届出による国籍再取得の可能性が認められている(国籍法十七条二項)が、国籍選択届と異なり、法務局を窓口としており(同施行規則一条一項)、面倒な手続が予定されている(昭和五十九年十一月一日民五第五五〇六号民事局長通達第一)。
  官報による催告が事実上重国籍者の目に触れないことを考慮すれば、もっと手続を簡素化すべきではないか。
四 パレスチナ人父母の子どもの国籍について
 (1) 国籍法二条三号は、「日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき」、子どもは日本国民とする。従来、日本でパレスチナ人父母から生まれた子どもは、この規定にもとづき日本国籍を認められてきた。その数は十四人とされている。
  本年十月三日の通知により、この取扱いを変更し、このような子どもに日本国籍を認めないとした理由は何か。
 (2) 本年十月五日の法務大臣の閣議後記者会見によれば、外務省に対する照会の結果として、このような通知が出されたとのことであるが、外務省は、どのような回答を行ったのか。
 (3) 閣議後記者会見によれば、法務大臣は、「本国に帰っても、難民ではありませんから、きちんと住むことができる」と述べているが、問題は、このような子どもが日本にいる間の保護である。
  日本が承認していないにもかかわらず、パレスチナが日本出生の子どもを保護できるとする根拠は何か。
 (4) 閣議後記者会見によれば、法務大臣は、「純粋なパレスチナの血の方が、日本の国籍を取得するというのは、いかにもおかしい」と述べているが、国籍法二条三号の解釈に関する平成七年一月二十七日の最高裁判決は、子どもが生物学的に日本人の血統であるか、それとも外国人の血統であるかを問題としていない。
  法務大臣の発言は、この最高裁判決の趣旨に反するのではないか。
 (5) 本件通知は、国籍法二条三号の適用を否定するのみであるが、外国人登録や戸籍などの実務において、一般的に「パレスチナ国籍」という記載を認めるのか。
 (6) 閣議後記者会見によれば、法務大臣は、パレスチナの旅券が有効とされていることを理由のひとつとして挙げているが、台湾の旅券も同様に有効とされている。
  「パレスチナ国籍」を認めるのであれば、「中華民国国籍」も認めるべきではないのか。

 右質問する。



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