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平成二十一年二月十日提出
質問第一一一号

有明海漁業と干拓地農業の共存・有明海再生に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




有明海漁業と干拓地農業の共存・有明海再生に関する質問主意書


 有明海漁業と干拓農地における営農を真に両立させ、国営諫早湾干拓事業によって、「死の海」と化す危機に瀕している、「宝の海」有明海を再生させるために可及的速やかに潮受堤防の南北の排水門を開門することは喫緊の課題である。
 しかるに、有明海異変の原因を不明のままに終わらせたい農林水産省は、何としても潮受堤防の排水門を開門させまいと様々な口実を挙げているが、その一つとして、開門した場合、潮受堤防の防災機能が発揮できなくなる旨、主張している。
 従って、ここでは防災問題について以下質問したい。

一 農林水産省は潮受堤防の南北の排水門を常時開門した場合、潮受堤防の防災機能が十分に発揮できなくなると考えているようであるが、ここでいう潮受堤防の防災機能の中身を具体的に明らかにされたい。
二 農林水産省は、おそらく、潮受堤防の排水門を常時開門すると調整池の水位を標高マイナス一メートルに保つことが不可能になるため、@諫早市街地の河川洪水防止効果に支障をきたす、A諫早湾周辺低平地(背後地)の常時の自然排水ができなくなるとともに、洪水時の湛水被害も防止することができなくなる、B海水が入るため潮受堤防内側にガタ土が堆積して周辺地域からの排水の支障となり、ちょっとした雨でも一帯が水浸しとなるので、以前のように人力でガタ土を排除しなければならなくなると考えていると思われるが、上記以外に、常時開門により発揮できなくなる防災機能はあるのか。あるとすれば具体的に明らかにされたい。
三 農林水産省は、潮受堤防の排水門を常時開門すると、上記@に挙げたように、諫早市街地の河川洪水防止効果に支障をきたすと主張するが、調整池の水位を標高マイナス一メートルとなるように管理することにより、本明川河口から三.五キロメートル以上上流の諫早市街地における洪水対策としても機能すると考える根拠と理由を明らかにされたい。
四 諫早市役所が発行した『諫早水害誌』では、「河口潮位を色々に変えてQ=一四五〇m3/secを使用し、不等流計算により洪水面を追跡したところ、いずれの場合も大体二キロメートル付近で一定の水位に収斂することが分った」とされている。つまり、本明川河口が満潮でも干潮でも、河口から二キロメートルさかのぼると、洪水の水位は潮位と無関係になるという計算結果が出ているが、農林水産省は、この『諫早水害誌』の記述についてはどのように考えているのか。この計算結果等が正しくないと考えるのであれば、その具体的な根拠と理由を明らかにされたい。
五 国土交通省は、調整池のマイナス一メートル管理には諫早市街地の河川洪水防止効果があると考えているのか。効果があるというのであれば、具体的根拠と理由を明らかにされたい。
 また、効果がないというのであれば、諫早市街地の河川洪水を防止するためには何が必要であると考えているのか明らかにされたい。
六 農林水産省は、潮受堤防の排水門を常時開門すると、上記Aに挙げたように、諫早湾周辺低平地(背後地)の常時の自然排水ができなくなると考えていると思われるが、そのように考える根拠と理由を明らかにされたい。
 常時、つまり降雨が日常的なもの程度であれば、農作物の湛水被害もないはずであるから、これを急いで排水する必要はないと考えられる。常時(平常時)においても背後地のための調整池のマイナス一メートル管理をしなければならないとする具体的根拠と理由を明らかにされたい。
七 農林水産省は、潮受堤防の排水門を常時開門すると、上記Aに挙げたように、諫早湾周辺低平地(背後地)の洪水時の湛水被害も防止することができなくなると主張するが、潮受堤防の閉め切り後も、諫早湾周辺低平地においては以下のような湛水被害が発生している。
 具体的には、一九九七年五月(浸水面積は一五七ヘクタール)、同年六月(九八ヘクタール)、同年七月(一二〇〇ヘクタール)、同年八月(五六〇ヘクタール)、同年一一月(一一三ヘクタール)、一九九九年六月(五〇ヘクタール)、同年七月(四三五ヘクタール)、同年八月(二二ヘクタール)、同年九月(一一五九ヘクタール)、同年九月(七三ヘクタール)、二〇〇一年七月(一一三一ヘクタール)、二〇〇四年五月(四一ヘクタール)、二〇〇五年九月(六ヘクタール)、二〇〇六年四月(一〇四ヘクタール)、同年六月(五九九ヘクタール)、同年八月(一ヘクタール)、二〇〇七年七月(二五〇ヘクタール)という状況である。
 農林水産省は、この事実について把握しているのか。
八 潮受堤防の閉め切り前の一九八二年から一九九六年の一五年間の湛水被害は七回であったにもかかわらず、潮受堤防の閉め切り後の一九九七年と一九九九年には各々五回の湛水被害が発生し、実に一一年間に一七回の湛水被害が発生している。
 農林水産省は、潮受堤防閉め切り後に、これだけの湛水被害が生じたのは何が原因であると考えているのか。
九 諫早湾周辺低平地(背後地)において、現在、排水機場はどのくらい設置されているのか。各排水機場が設置された時期、場所(設置箇所)、排水能力について明らかにされたい。
十 現在のように、調整池のマイナス一メートルを管理する場合、農林水産省は、常時(平常時)には、背後地の排水のために全く排水ポンプは必要ないと考えているのか。もし、その場合でも排水ポンプは必要であるとすれば、どの程度のポンプ容量の排水ポンプが必要であると考えているのか、具体的な根拠を示して答えられたい。
十一 潮受堤防の排水門を常時開門した場合、農林水産省は、常時排水のために、どの程度のポンプ容量の排水ポンプが新たに必要になると考えているのか、具体的な根拠を示して答えられたい。
十二 現在のように、調整池のマイナス一メートル管理をする場合、農林水産省は、非常時(諫早大水害級の降雨量を前提とした場合)の背後地の湛水被害を防止するために、今後、背後地に排水機場を設置する予定はあるのか。あるとすれば、どの場所(設置箇所)に、どのくらいの排水能力を備えた排水機場を何台くらい設置する予定であるのか、また、どのような根拠に基づいて、そのような算定をしたのか具体的に明らかにされたい。
十三 潮受堤防の排水門を常時開門した場合、農林水産省は、非常時(諫早大水害級の降雨量を前提とした場合)における背後地の湛水被害を防止するために、どの程度のポンプ容量の排水ポンプが新たに必要になると考えているのか。普段、調整池のマイナス一メートル管理をする場合(十二項の場合)と比較して、排水ポンプ容量を増やさなければならないと考えているのか。そのように考えているのであれば、その具体的な根拠を示して答えられたい。
十四 潮受堤防閉め切り前の一五年間には七回だった湛水被害が、潮受堤防閉め切り後には、一一年間に一七回も湛水被害が発生したことからすると、潮受堤防の存在(開門したとしても南北排水門からしか排水できない)が、背後地の常時排水不良対策としてはマイナスに作用したとも考えられる。最近こそ湛水被害は少なくなったが、それは排水路の整備や排水ポンプの増設の効果であると考えられることから、結局、潮受堤防の存在を前提とした背後地の湛水被害対策としては、豪雨が調整池に流れ込んでいて、かつ、満潮に向かって海側の潮位が調整池よりも高くなると予想される場合は閉門するなど開門操作をしつつ、排水機場を増設して強制排水するほかないのではないか、つまり、前述したような一定の例外的場合以外は、潮受堤防を常時開門しても何ら支障はないと考えられるがどうか。
 このような考えに対して、農林水産省の見解を伺いたい。この考えに異論があるとすれば、その根拠を明確に示して答えられたい。
十五 農林水産省は、潮受堤防を常時開門すると、上記Bに挙げたように、潮受堤防内側にガタ土が堆積して周辺地域からの排水の支障になると主張するが、佐賀県を始めとして全国どこでも行なわれているように、定期的に重機によって排除すれば容易に解決すると考える。このような考えに対して、農林水産省の見解を伺いたい。この考えに異論があるとすれば、具体的な根拠を明確に示して答えられたい。

 右質問する。



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