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平成二十二年三月十九日提出
質問第二九二号

地球温暖化対策基本法案に関する質問主意書

提出者  近藤三津枝




地球温暖化対策基本法案に関する質問主意書


 昨年九月二十四日の第六十四回国連総会において、鳩山内閣総理大臣は、「新しい日本政府は、温室効果ガスの削減目標として、一九九〇年比で言えば二〇二〇年までに二十五%削減を目指すという非常に高い目標を掲げました」と言明した。これは鳩山内閣の「国際公約」であり、この中期的な目標の達成に向けて、我が国は世界に対して重い責任を負ったものである。
 これに対し、先般、政府が国会に提出した「地球温暖化対策基本法案」(以下単に「法案」という。)は、表面上は「国際公約」の実現に邁進するかのような外観を装いつつ、一方で万一その実現が不可能となった事態においても政府の責任を免れようとするからくりが幾重にも仕掛けられているようにみえる。
 また、我が国が世界に対して公約した最重要事項を実行するか否かの判断について、国権の最高機関であり国の唯一の立法機関として、国民を代表するべき立場にある国会の意向を一切かえりみないかのような規定がある。
 この法案には他にも問題が山積しているが、この温室効果ガス削減の中期目標の設定の仕方ひとつとっても、多くの疑念があることから、以下質問する。

一 法案第十条第二項について
 法案第十条第一項では、「……平成三十二年(二〇二〇年)までに達成を目指すべき我が国における一年間の温室効果ガスの排出量……は、平成二年(一九九〇年)……における温室効果ガスの排出量からこれに二十五パーセントの割合を乗じて計算した量を削減した量とする」と規定した上で、同条第二項において「前項に規定する目標は、すべての主要な国が、公平なかつ実効性が確保された地球温暖化の防止のための国際的な枠組みを構築するとともに、温室効果ガスの排出量に関する意欲的な目標について合意をしたと認められる場合に設定されるものとし、……」と定めている。要するに、温室効果ガスの排出量に関する中期目標は二〇二〇年までに一九九〇年比で二十五%削減とするが、この値を目標値として設定するには、第二項に掲げる三つの前提条件(「すべての主要な国が参加」し、「公平なかつ実効性が確保された地球温暖化の防止のための国際的な枠組みを構築する」とともに、「温室効果ガスの排出量に関する意欲的な目標について合意をした」と認められる場合のことをいう。以下単に「三つの前提条件」と略称する。)の成就とその認定が必要とされているのである。まず、このような理解でよいか、伺いたい。
 次に、以下、この三つの前提条件(目標設定のための要件)のそれぞれについて、質問する。
 1 まず、同項の「すべての主要な国」とは、具体的にどの国を指しているか。すべての国名を挙げられたい。
 2 次に、同項の「公平なかつ実効性が確保された地球温暖化の防止のための国際的な枠組み」とは、具体的に何を指すか。それが「国際的な枠組み」であり、かつ、「公平なかつ実効性が確保された」ものであるかどうかを判断する際の具体的な基準はどのようなものか、明らかにされたい。
 3 さらに、同項の「温室効果ガスの排出量に関する意欲的な目標について合意をした」とは、具体的にどのような状態を指すか。それが「意欲的な目標」であり、かつ、「合意をした」と判断する際の具体的な基準はどのようなものか、明らかにされたい。
 4 右の1から3までの要件を満たすかどうかを判断する主体は誰か。その判断主体が「国会」でない場合、どうしてこの判断に「国会」が関与することとしなかったのか、その理由を示されたい。
二 法案附則第一条について
 法案附則第一条では、そのただし書において、右の法案第十条第二項を受ける形で「第十条第一項……の規定は、すべての主要な国が、公平なかつ実効性が確保された地球温暖化の防止のための国際的な枠組みを構築するとともに、温室効果ガスの排出量に関する意欲的な目標について合意をしたと認められる日以後の政令で定める日から施行する」と定めている。すなわち、二〇二〇年における一九九〇年比二十五%削減という中期目標に係る規定の施行期日は、第十条第二項に定める三つの前提条件の成就が認定された日以後の政令で定める日としているのである。まず、このような理解でよいか、伺いたい。
 次に、この条項に関し、以下の各事項について、質問する。
 1 そもそも法律の施行期日は、当該法律の制定によって、国民の権利・義務に影響を与えるものであり、また、経済活動に規制をかける場合もあることから、基本的に、法律で自己完結的に定めるべきものである。換言すれば、法律の施行期日の定めは、日本国憲法第四十一条に定める「国会は……国の唯一の立法機関」との規定を根拠にした、典型的な「法律事項」ということができる。したがって、これを政令に委ねる場合においても、その上限を確定日付あるいは「公布後〇年(月)を超えない範囲内において」等と明記した上で、政令に委任するのが通例であると認識している。
  それにもかかわらず、法案附則第一条ただし書では、法案の最重要事項である第十条第一項の規定の施行期日を、国際情勢の進展状況に関する「政府」の判断、すなわち「政令」に委任することとしているが、このような立法例(=施行期日の定めを、その上限を限定せずに、かつ、一定の判断が必要な条件を附した上で、政令に委任した立法例)は過去にあるか、あるとすれば,その立法例をすべて挙げられたい。
 2 次に、このように、第十条第一項の規定の施行期日を、「法律」ではなく「政令」で定めることとした理由を明らかにされたい。また、「法律」以外に国会が関与する法形式(例えば、三つの前提条件の成就の認定に関して、国会の判断(承認など)を求めた上で、政令や告示等で施行期日を定める方式等)について検討されたのかどうか、検討された場合、どうしてそのような法形式が採られなかったのかも明らかにされたい。
 3 なお、附則第一条ただし書においては、第十条第二項に定める三つの前提条件の成就に関する認定がなければ、そもそも法案第十条第一項の規定は「施行されない」こととされているのであるが、一方では、同条項が未施行の状態であるにもかかわらず、これを引用しながら「前項に規定する目標」(法案第十条第二項)とか、「第一項……に規定する目標」(同条第四項)、「前条第一項……に規定する目標」(法案第十一条)といった定めをしている規定も散見される。
  この点に関し、以下について、それぞれ明らかにされたい。
  @ 第十条第一項が施行されていない段階において、これらの規定は、その文字どおりに読むことができるのか。
  A 特に、第十一条(再生可能エネルギーの供給量に関する中期的な目標)については、第十条第二項の三つの前提条件の成就が認定されることをもって、はじめて同条と連動した形で実効性を有する規定となると考えられるので、この第十一条の規定も附則第一条ただし書の施行期日になるのではないか。
  B さらに、第十条第二項にいう「前項の規定する目標は、……(三つの前提条件の成就が認定された場合に)設定されるものとし、……」にいう「設定」とはいかなることを意味するのか。もし、「施行」を意味するのであれば、附則第一条ただし書と重複するし、それ以外の行為であるとすれば、新たな「設定」というような行為があるものなのか。

 右質問する。



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