質問本文情報
平成二十三年七月二十一日提出質問第三四二号
海洋資源生物の保存に対する政府の見解等に関する再質問主意書
提出者 浅野貴博
海洋資源生物の保存に対する政府の見解等に関する再質問主意書
「政府答弁書」(内閣衆質一七七第一八一号)には、「ロシア連邦の法令に違反して行われる水産物の漁獲及び輸出の問題については、ロシア連邦政府が自国の法令に基づく取締りを強化することが重要であるとともに、海洋生物資源の保存等の観点から、我が国としても必要な協力を行っていくことが重要であると考えている。このような考えを踏まえ、これまでロシア側との間で様々な意見及び情報の交換を行ってきている。」との答弁がなされ、海洋生物資源の保存の重要性についての政府の見解が披歴されている。右と「前回答弁書」(内閣衆質一七七第二七五号)を踏まえ、再質問する。
二 一で触れたように、我が国に入港していたロシアの漁船の数が減った分が韓国に向かい、韓国の輸入が増大するのは当然の流れと言える。その結果として、韓国国際貿易協会の統計によると、ロシアから韓国へのカニ輸出量は、平成十三年から十九年までの七年間を見ても、一,八八八トン、一二,〇四五トン、一二,六七八トン、一四,〇二九トン、一二,五〇〇トン、一七,四一三トン、一八,八二五トンと、平成十四年以降極端に増加しているが、右の統計を政府、特に水産庁として把握しているか。
三 二の統計で示したように、PCからGTDへという「外規法」の適用の変化により、ロシアの漁船が韓国に向かうという事態を、政府、特に水産庁として想定していたか。また、ロシアとの種々の協議の中で、このような事態が生じることを検討してきたか。再度質問する。
四 PCからGTDへという「外規法」適用の変化により、ロシア漁船が「外規法」適用の対象外となるか否かを確認する際に使われる書類が、PCからGTDへと変更された。そして政府はGTDの真偽をロシア側に照会している。前回質問主意書で、右は政府として、ロシアからの一方的な情報に基づいて右確認を行っていることに他ならず、法治国家、独立国家が行う行政手続きとしては問題があるのではないのかと問うたところ、「前回答弁書」では「外国人漁業の規制に関する法律施行令(昭和四十二年政令第三百二十五号)第一条に規定する書類(以下「積出証明書」という。)として取り扱っているロシア連邦の貨物税関申告書については、ロシア側とも協力しつつ、その真偽の確認を行っており、今後とも引き続き、外国人漁業の規制に関する法律(昭和四十二年法律第六十号)の適切な運用に努めていく考えである。しかしながら、その具体的な確認方法を明らかにすることは、ロシア側との協力及び同法の適切な運用に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。」との答弁がなされている。政府は右にあるように、明確な答弁を避けているが、GTDは前回質問主意書で質問した通り、ロシアの思惑如何で情報を操作できる書類ではないのか。再度確認を求める。
五 GTDの偽造はロシア国内における犯罪であり、ロシアの犯罪として処理すべき刑事問題である。GTDが偽造されたものなら、船舶に積載されている水産物も密漁されたものである可能性が生まれるが、当然これも犯罪に該当する。右は、我が国としてロシアと協力して国際捜査をするべきことであり、犯罪であるか否かを明確にした上でGTDを判断すべきであると考えるが、政府、特に水産庁の見解如何。
六 またGTDはロシアが作成する、ロシアの書類である。そのGTDの真偽を我が国が判断するのは極めて困難であり、つまりはロシア側からの情報に基づいて判断せざるを得なくなる。我が国の法の適用が、外国からの情報に基づいて行われることは、法治国家、独立国家が行う行政手続きとして大いに問題があると考えるが、政府、特に水産庁の見解を再度問う。
七 二と同様の韓国国際貿易協会の統計によると、平成二十二年のロシアから韓国へのカニ輸出量は五,四六〇トンと激減している。これは、韓国とロシアの間で密漁密輸防止協定(IUU協定)が締結されたことに起因するものと考える。しかし実際には、第三国を経由したロシアから韓国への輸出は多いと言われている。我が国としても、ロシアとIUU協定を結ぶべく、現在協議を続けているものと承知するが、確認を求める。
八 我が国として、ロシアとIUU協定を結ぶにしても、日ロ間のみでなく、幅広く周辺国家を巻き込んだ、各国同一条件で行わなくては、必ずどこかに抜け道ができ、真に密漁、密輸の防止に資する効果は得られないと考えるが、政府、特に水産庁の見解如何。
九 「政府答弁書」にあるように、ロシアにおける密漁、密輸の取り締まりは、一義的にロシアが自国で行うべきものであるものの、海洋資源生物保存の観点から、我が国としてもそれに協力する必要がある旨の見解を政府は示している。「外規法」の無理な適用や、ロシアとのIUU協定の締結等のような経済原理を無視した方法、また極東海域の多国間の状況を考えない力による規制ではなく、ロシア国内の問題を解決するための方法として、同国内の各種法律や行政手続等の漁業規律を、より透明性が高く公平、公正なものとなるよう、協力、援助をしていくべきではないのか。ロシアが自ら行うべきことに、我が国が過度に首を突っ込み、自国の法律の適用を変え、結果的に所期の目標と逆行する結果を生じさせている現状を是正する必要があると考えるが、政府、特に水産庁の見解如何。
右質問する。