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平成二十四年一月三十一日提出
質問第二六号

教科書問題及びILO/ユネスコ『教員の地位に関する勧告』に関する質問主意書

提出者  服部良一




教科書問題及びILO/ユネスコ『教員の地位に関する勧告』に関する質問主意書


 二〇〇一年に「新しい歴史教科書」が検定合格して以来、わが国の中学校歴史教科書問題は国際的にも関心が寄せられている。また、一九六六年、わが国も賛成して採択されたILO/ユネスコ『教員の地位に関する勧告』(以下「勧告」とする)は教員の地位に関する国際基準となっており、教科書の選択等についても、「不可欠な役割を与えられるべき」(「勧告」61項)とされている。
 また、同「勧告」は、教員の社会的地位のみならず「労働条件」等も含むことが「勧告」1項(ロ)に明記されており、我が国の教育行政も、これを遵守することが望まれるところである。
 したがって、次の事項について質問する。

一 「子どもの権利委員会、第五四会期(二〇一〇年五月二五日〜六月一一日) 条約第44条にもとづいて締約国が提出した報告書の検討」の「総括所見:日本」における「7.教育、余暇および文化的活動」の74’75項は以下のようになっている。
 「74.委員会は、日本の歴史教科書においては歴史的出来事に対する日本側の解釈しか記述されていないため、地域の異なる国々出身の子どもの相互理解が増進されていないという情報があることを懸念する。
 75.委員会は、締約国が、検定教科書においてアジア・太平洋地域の歴史的出来事に関するバランスのとれた見方が提示されることを確保するよう勧告する。」
 ここに挙げられている「歴史的出来事に対する日本側の解釈しか記述されていない」「歴史教科書」、「アジア・太平洋地域の歴史的出来事に関するバランスのとれた見方が提示され」ていない「検定教科書」とは、「新しい歴史教科書をつくる会」等が編集した扶桑社歴史教科書、自由社歴史教科書であることが明らかであるが、この勧告に対し、どのように対処されたか、明らかにされたい。
二 前記出版社の二種類の教科書については、従来から数々の誤りが指摘されてきた。一例をあげれば、用語「明治維新」の由来説明として、
 「王政復古の大号令の中では、旧来のものを始め、すべてを新たに始めることを意味する『維(こ)れ新たなり』という言葉が用いられた。そこで幕末から明治維新にいたる一連の変革を明治維新とよぶ」と本文に記述されていた。しかし、王政復古令の中には、このような言葉は用いられていない。やっと二〇一〇年度の検定で「『維(こ)れ新たなり』という言葉は用いておらず、誤りである」と指摘され削除されることになったが、それまで、四回の検定では一冊につき三人ずつの検定官が担当していたので検定官は延べ一二人、審議会委員の歴史学者など有識者たち毎回六人前後の延べ二四人、総計四〇人近い検定担当者が、誰一人として原典の「王政復古の大号令」との照合をしていなかったことになる。
 1 このような杜撰な「検定」を行ったのはなぜか、明らかにされたい。
 2 歴史事実に無いことを有るとするような歴史を偽り造る記載のある教科書について、教員が「これは誤っています。歴史を偽造するもので、このような言葉は王政復古の大号令にはありません。検定済教科書にも誤りがあります」と教えることは正当であり、むしろ、この誤りを見抜けず、そのまま教える教員は誤った歴史を生徒に教えたことになると思われるが、見解を明らかにされたい。
三 教科書採択に当たっては教員の望む教科書を明らかにする、いわゆる学校票といわれるもの等を重視するよう、政府・文部科学省は前記「勧告」61項に基づき、各教育委員会を指導する責任があると思われるが、指導を行ったことがあるか、また、今後、行う予定があるか、明らかにされたい。
四 そもそも、政府・文部科学省においては本「勧告」について、各地の教育委員会に対して周知徹底を図り、これを遵守するよう、研修等、指導を行ったことがあるか、また、今後、行う予定があるか、明らかにされたい。
五 本年一月一六日に最高裁判所は「日の丸・君が代」不起立教員に対する東京都教育委員会の懲戒処分について、停職や減給は裁量権の乱用による違法行為と認定し確定した。「勧告」に明記されている通り、「教員団体は懲戒問題を扱う機関の設置に当たって、協議にあずからなければならない」こと(49項)、及び「教員と使用者との間の紛争を処理するため、適切な合同の機構が設」けられること(84項)が実現していれば、このような誤った違法な処分の乱発はかなり防げると考えられる。よって、特に上記勧告については、早急に実現させることが必要であると思われるが、「勧告」に基づき各地の教育委員会を指導する予定があるか、明らかにされたい。

 右質問する。



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