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平成二十四年三月二十九日提出
質問第一六〇号

八ッ場ダムの検証における治水に関する質問主意書

提出者  塩川鉄也




八ッ場ダムの検証における治水に関する質問主意書


 八ッ場ダム建設事業の検証では治水対策の最有力案として八ッ場ダムが選択されたが、その科学的な根拠が明瞭ではない。先に本年三月一日に「国土交通省の八ッ場ダム治水効果の検証に関する質問主意書」、三月十二日に「国土交通省の八ッ場ダム検証における複数治水対策案に関する質問主意書」を提出し、それぞれ政府から答弁書を得たが、八ッ場ダムの治水の検証の仕組みはいまだに不透明なところがある。国土交通省は、治水の検証に係るデータ及び算定方法を国民に疑問の余地なく示すべきである。以下、治水の検証において、なお不明な点についてあらためて質問する。

一 八ッ場ダム検証で想定したそれぞれのケースにおける各洪水の各地点の最大流量
  先に二つの質問主意書に対する答弁書で流量の計算結果がいくつか示されたが、断片的であるので、治水の検証の全体像が不明なままである。全体像を把握できるよう、次の数字を網羅的にすべて明らかにされたい。
  @八斗島上流の洪水調節施設のうち八ッ場ダムがない場合、A八ッ場ダムを含む案、B河道掘削案、C渡良瀬遊水地案、D新規遊水地案の五ケースについて、検証対象の八洪水のそれぞれにおける利根川・江戸川の各地点の最大流量計算値。
  ここで、検証対象の八洪水は昭和二十二年九月、二十三年九月、二十四年八月、三十三年九月、三十四年八月、五十七年七月、五十七年九月、平成十年九月型の降雨波形で、洪水調節施設がない場合に八斗島地点の流量が毎秒一万七千立方メートルになるようにそれぞれ調整した洪水を言う。
  また、利根川・江戸川の各地点とは、利根川の八斗島地点、渡良瀬川合流地点、江戸川分派地点、芽吹地点、新大利根橋地点、利根川河口地点及び江戸川の流頭地点、江戸川河口地点の八地点を言う。なお、流量はこれらの地点の区間の値ではなく、各地点ごとの値を示されたい。
二 八斗島地点から江戸川分派地点までの洪水流量の低減について
 1 本年三月二十一日の「国土交通省の八ッ場ダム検証における複数治水対策案に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質一八〇第一三五号)の「@及びAについて」を見ると、「八ッ場ダムを含む案」の最大流量は「八斗島地点から渡良瀬川合流地点までの区間」の流量が毎秒約一万四千百八十立方メートル、「渡良瀬川合流地点から江戸川分派地点までの区間」の流量が毎秒約一万四千百立方メートルで、後者が八十立方メートル小さくなっている。両方とも昭和三十四年八月型洪水の計算値である。しかし、流域面積は八斗島地点が五一五〇平方キロメートルで、下流に行くにつれて次第に増加し、江戸川分派地点近傍の栗橋地点の流域面積が八五八八平方キロメートルである。渡良瀬川からの洪水は渡良瀬遊水地で調節するとしても、八斗島地点より江戸川分派地点は洪水流量がそれなりに増加するはずである。実際に、利根川水系河川整備基本方針でも計画高水流量は八斗島地点毎秒一六五〇〇立方メートル、栗橋地点一七五〇〇立方メートルとなっている。「八ッ場ダムを含む案」において「八斗島地点から渡良瀬川合流地点までの区間」より「渡良瀬川合流地点から江戸川分派地点までの区間」の流量が小さくなる理由を説明されたい。
 2 三月二十一日の上記答弁書の「BからDまでについて」を見ると、「(1)河道掘削案」の最大流量は「八斗島地点から渡良瀬川合流地点までの区間」の流量が毎秒約一万五千八百十立方メートル、「渡良瀬川合流地点から江戸川分派地点までの区間」の流量が毎秒約一万四千六百二十立方メートルで、下流側が約千二百立方メートルも減っている。河道掘削では流量が減るはずがなく、「河道掘削案」では八斗島地点より下流で何らかの洪水調節施設が想定されていると考える。その洪水調節施設の内容と規模を明らかにされたい。
三 区間の流量の意味
  上述のとおり、三月二十一日の上記答弁書では「八斗島地点から渡良瀬川合流地点までの区間」というように、二つの地点の区間の流量が示されているが、二つの地点は流域面積が異なるので、流量も違うはずである。この区間の流量はどのように求めたのか、その算出方法を明らかにされたい。
四 八ッ場ダムを含む案の流量
  二で述べたとおり、三月二十一日の上記答弁書の「@及びAについて」では「八ッ場ダムを含む案」の最大流量は「八斗島地点から渡良瀬川合流地点までの区間」の流量が毎秒約一万四千百八十立方メートルである。これは昭和三十四年八月洪水の計算値である。一方、「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書」(平成二十三年十一月)の表四−二−三では、「河道分担流量洪水調節施設全施設完成時」の昭和三十四年八月洪水の計算値は毎秒一万四千百六十立方メートルである。この二つの数字が異なる理由を説明されたい。
五 河口距離と流域面積
  三月二十一日の上記答弁書で計算流量が示された地点のうち、渡良瀬川合流地点、江戸川分派地点、芽吹地点、新大利根橋地点は国土交通省の水文水質データベースにも載っていない地点であるので、それぞれの河口距離と流域面積を示されたい。
六 三月九日の答弁書の「洪水調節量」に関する答弁について
  本年三月九日の「国土交通省の八ッ場ダム治水効果の検証に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質一八〇第一一二号)の「八及び九について」で、「八ッ場ダムを含まない案の検討に当たっては、八洪水のいずれにおいても、御指摘の「「河道分担流量洪水調節施設全施設完成時(B)」に対応する数値から、14000m3/Sを差し引いた数値」を「洪水調節量」とはしていない。」と答えている。しかし、「八ッ場ダムを含まない案」を考えるにあたり、「八ッ場ダムを含まない案」で得られる八洪水の八斗島地点の計算流量から八斗島地点の河道対応可能流量毎秒一四〇〇〇立方メートルを差し引いた値が、八洪水それぞれにおいて八ッ場ダムの代替案で対応が必要な流量であると考えるのが常識的と考える。質問主意書の質問も、そうした意味で、八ッ場ダムの代替案で対応が必要な流量を「洪水調節量」と表現した。この考え方に誤りがあれば、具体的に説明されたい。あわせて、八ッ場ダムの代替案で対応が必要な流量を代替案ごとに、八洪水それぞれに対して、示されたい。
七 「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」での事務局説明について
  昨年十二月一日の国土交通省「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」において事務局から八ッ場ダムによる水位低下量について次の説明があった(議事録十八〜十九ページ)。「ただいまのご質問ですが、江戸川の分派点から上流部分の水位低下量でいきますと、これは河床の形状によってもそれぞれ水面形が変わってきますから一律に何cmということではありませんが、大体の幅で申し上げると一番小さいところで32〜33cm、一番大きいところで65cmぐらいの水位低下量があるという計算結果です。」この水位低下量の計算結果を利根川及び江戸川の地点ごとに示されたい。また、その計算条件を明らかにされたい。
  なお、この計算は昭和三十四年八月洪水の降雨波形の場合であるが、他の七洪水の降雨波形の場合は八ッ場ダムによる水位低下量がどれほどになるのか、その計算結果を明らかにされたい。
八 八ッ場ダムによる水位低下量の計算に用いた流量
  上記七の八ッ場ダムによる水位低下量の計算根拠資料を求めた情報公開請求に対して、関東地方整備局から平成二十四年三月十四日付で国関整総情第5107号−1により開示決定があり、資料が開示された。それによれば、ピーク流量は八ッ場ダムがある場合は毎秒一万四千二百三十七立方メートル、八ッ場ダムがない場合は毎秒一万五千六百九十二立方メートルとなっており、前者は「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書」の表四−二−三の数字一万四千百六十立方メートルと異なっている。開示された上記の数字の計算根拠を明らかにされたい。
九 八ッ場ダム事業の検証において行われた複数治水対策案の比較について、その検証が妥当なものかどうかを検証するためには、そのもとになったデータと算定方式の公表は不可欠な前提である。この前提について質問した二回の質問主意書への答弁で、いくつかのデータが示されたが、それは、これまで公表されていなかったものである。その上、今回の質問主意書で重ねて質問せざるをえないように、そのデータ及び算定方法、算定根拠の開示は、断片的なものにとどまっている。これでは、八ッ場ダム事業の検証で行った複数治水対策案の検証が正しかったかを判断することはできないと考えるが、野田内閣の見解を問う。

 右質問する。



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