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平成二十四年五月十六日提出質問第二四六号
いわゆる「公用車談合」の損害賠償請求に関する質問主意書
提出者 柿澤未途
いわゆる「公用車談合」の損害賠償請求に関する質問主意書
平成21年6月23日、公正取引委員会は、国土交通省が発注する公用車の車両管理業務について、談合の疑いを認定し、独占禁止法違反で計10社に排除措置命令と課徴金納付命令等を行なった。
これを受けて国土交通省は、本年4月13日、該当企業である日本道路興運株式会社ほか計9社に対し、1366件の契約について約80億円の損害賠償請求を行なったと発表した。
上記に関し、以下、質問する。
2 損害賠償請求においては損害の発生が認定された日から延滞金が発生するのが判例であり、平成21年の排除措置命令、課徴金納付命令等から2年10ヶ月が経過しており、その間、損害賠償請求を行なわない事で、延滞金を含む企業側の支払金額をいたずらに大きくしたとも考えられるが、なぜこの間、損害賠償請求をしてこなかったのか。
3 独占禁止法第26条2項では、損害賠償請求権は3年間の経過とともに時効消滅すると規定されている。損害額の算定に誤りがあり、実際は損害額をもっと大きく算定すべきであった事が分かった場合、その差額の請求権は時効消滅してしまうのか。
4 損害額の算定は、平成22年1月29日のいわゆる「水門談合事件」の損害賠償請求における損害額の算定と同じ算定方式を用いたものか。違うならば、どこが違うのか、また違う扱いをした理由を明らかにされたい。
5 「水門談合事件」の損害賠償請求では、談合発覚前と談合発覚後の平均落札率の差から損害額を算定している。同じ手法を用いると、平成20年度までの国交省の公用車車両管理業務の発注額は年間180億円から190億円であったとされており、これに発覚以前(95.4%)と発覚後(54.1%)の平均落札率の差を乗じ、国土交通省が国の損害を認定した平成17年度から20年度の4年度分の損害額を単純計算すると、約290億円もの損害額となる。これと比して今回の損害賠償請求額の約80億円は低過ぎるのではないか。なぜこのような請求額になっているのか。
6 そもそも国土交通省は今回の損害賠償請求額の個別の算定表を公表していない。なぜか。今後、「予算執行の情報開示充実に関する指針」(平成22年3月31日内閣官房国家戦略室)に基づき、エクセル形式で算定表の詳細を公表する予定はあるか。
7 地方整備局等が損害額を算定するにあたり、算定方式について、国土交通省本省にて何らかの基本的考え方に基づき、統一された基準を示しているものと思われるが、その基本的考え方や統一された基準を示されたい。
8 問5のように本来、賠償請求すべき額と今回の賠償請求額に乖離があるとして、損害賠償請求そのものが請求権が時効消滅する平成24年6月のわずか2ヶ月前に行なわれており、仮に算定方法に過誤があったとしても、すぐに請求権の消滅を迎えてしまう。算定方法への異議を表面化させないため、意図的に損害賠償請求の時期を時効消滅直前にしたのではないかと疑われるが、見解如何。
9 国土交通省は、平成15年4月15日の「入札契約適正化の徹底のための当面の方策について」の一環として、談合等の不正行為を行った受注者に対して、請負代金の10分の1に相当する金額を違約金として支払わせる違約金条項の創設を表明している。この「談合違約金条項」は、損害賠償請求の対象となった当該車両管理業務の契約には盛り込まれているのか。ないとすれば、その理由は何か。
10 本事案のような車両管理業務は、WTO政府調達協定の対象か対象外か。対象外であるとすればその理由を付記されたい。
11 本年4月13日の「車両管理業務談合事案における入札談合等関与行為による国の損害等に関する調査結果について」によれば、職員は、開発局・開発局の職員団体・北協連絡車管理株式会社の三者会合において、指名競争入札を導入するための「導入スケジュール」と「業者指名の考え方」を教示したとされている。WTO政府調達協定の第10条で「業者指名」が、第11条で「入札の日数」が、厳格に規定されている事から、これらは入札の重要な情報として世界的に認められていると解する事ができる。にもかかわらず、これらの重要な情報を教示した事が「故意または重過失」にあたらず、職員に損害賠償責任はない、としているのは、正当な判断と言えるのか。
12 「水門談合事件」によって生じた国の損害は、談合が受注業者のほか入札参加者、世話役事業者、職員等による共同不法行為と考えられ、かつ賠償責任者間の責任割合を算定する事は困難である事から「不真正連帯債務」であるとされている。今回の損害賠償請求にあたっても、職員を請求対象から外すのではなく、共同不法行為として「不真正連帯債務」とするのが適当ではないか。
右質問する。