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平成二十四年六月五日提出
質問第二八〇号

指揮権発動に係る法務大臣の発言等に関する質問主意書

提出者  浅野貴博




指揮権発動に係る法務大臣の発言等に関する質問主意書


 本年六月四日、退任記者会見に臨んだ小川敏夫前法務大臣は、概ね以下のような発言をしていると承知する。
《質問 印象に残ったことは?
答 急いで対応しなくてはいけないと思う事は、やはり検察の信頼回復の点だ。郵便不正の村木さんの事件に続き、内容虚偽の捜査報告書が作成されたという事で、検察に対する国民の信頼が大変大きく傷ついている。やはり国民の信頼を取り戻して、検察が本来の職責を果たすということのためには、虚偽捜査報告書問題も、これまで再三話してきたが、国民の理解を得られる対応が必要と考えていた。これについて、具体的な決着を見ないままと言うのは大変残念に思っている。
質問 虚偽の捜査報告書問題。任期中にやり残した課題があれば。
答 案件が多かった。国会が続いているが、法曹養成制度はそれほど急にと言うわけでもないが、やはり人権委員会の設置、ハーグ条約の関連法案の成立などがあった。ただ、やはり一番は検察の信頼回復が強いと思う。やはり、村木さんの事件と虚偽捜査報告書事件が立て続いて起きて、本当に検察に対する信頼が損なわれている時に、検察が身内に甘い、あるいは適当な形で幕引きをしてしまうことがあれば、国民の信頼の回復は得られないのではないかということを非常に心配をした。そういう中で、私自身は指揮権の発動も決定したんでありますが、総理の了承も得られなかったので大変残念に思っている。
質問 小川大臣は指揮権の発動を考えて総理に相談した?
答 はい。そうです。
質問 いつ頃、どのように相談したのか?
答 具体的詳細は内部のやり取りなのであれだが、五月の下旬です。
質問 田代検事問題の捜査について指揮権を発動したいと?
答 そうですね。捜査ではない部分については、人事上のことについては法相の権限であるので、指揮権はあくまで捜査に関してだ。
質問 野田総理は何と?
答 それについては、承知して戴けなかったということです。
質問 それは現行の田代検事の捜査について、大臣として不満だったということ?
答 不満とかではなくて、国民の理解を得られる対応をしなければ、国民からの信頼回復は得られないだろうと考えた。そうした国民の理解を得られる対応をすべきであるという観点でございます。
質問 かねて「重大な関心を持っている」と繰り返してきた指揮権発動を相談した時はどんな問題意識からだったのか?
答 きちんとした形で対応しなければ、国民の信頼は回復できない。いい加減な形で幕引きする事がある。あるいは、そのように国民から受け取られてしまえば、国民からの信頼回復は遠のいてしまう。そういう意味で私はやはり、検察の信頼回復を何としても実現したいという思いであった。
質問 「不起訴」との報道がある事についての考えは?
答 客観的な資料を見ればわかることだが、捜査報告書の中身、捜査状況の録音を詳細に見てみれば、記憶違いではないというふうに誰しもが思うのではないかと思う。逆に、捜査報告書と録音を、インターネットで流出しているようなので、それを見れば判断できると思う。
質問 大臣ご自身が見てチェックした?
答 はい。捜査資料という事は捜査に干渉するので入手しなかったが、流出した資料があったので、流出した資料をもとに比較対照すれば、そういう結論になる。
質問 それを受けて指揮権発動を考えた?
答 それを含めて総合的判断ですね。
質問 指揮権発動は政治の介入という点で慎重に扱われてきた。指揮権発動の在り方についてどう考えるか?
答 五十年前に国民の不評を買う指揮権が発動されて以来指揮権と言うものがかなり抑制的だったと思うが、私自身は今回のように、検察内部の案件について検察が消極的であるというような場合、今回のケースは逆に言えば、一般論として、指揮権を発動するという典型的なケースではないかと思う。
質問 典型的なケースとは?
答 つまり検察が、検察内部のことについて消極的であると言う場合に、これを積極的にならしめるということについては、やはり国民から選ばれた法務大臣の本来の姿ではないかと思う。その意味で私は、指揮権の発動というものは非常に似合ったケース、ふさわしいケースだったと思う。》
 右発言(以下、「小川発言」とする。)の中で触れられている指揮権に関して、鈴木宗男前衆議院議員が提出した質問主意書に対する政府答弁書(内閣衆質一六六第二九一号。以下、「政府答弁書」とする。)では、「一般に、『指揮権』とは、命令をし、これに従わせる権限をいうものと承知している。」、「検察庁法(昭和二十二年法律第六十一号)第十四条の規定により、個別具体的な事件に関する取調べについて、法務大臣は、検事総長以外の個々の検察官を直接指揮することはできず、検事総長のみを指揮することができる。これに対し、個別具体的な事件に関する取調べについて、内閣総理大臣が検察官を直接指揮することができる旨を定めた法令の規定はなく、内閣総理大臣が検察官を直接指揮することはできないと考えている。」とされていることを踏まえ、質問する。

一 小沢一郎元民主党代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、収支報告書に虚偽の記載があったとして、石川知裕衆議院議員はじめ元秘書三名が逮捕された。小沢元代表自身も、それに関わったとし、東京第五検察審査会により強制起訴をされたが、本年四月二十六日、東京地裁より無罪判決が出されている。このいわゆる陸山会事件並びに小沢元代表の裁判に関連し、元東京地検特捜部の田代政弘検事が、石川議員を取り調べた際、石川議員が「『選挙民を裏切ることになる』と検事に言われたことが効いた」等と述べたとする内容を捜査報告書に記入し、東京第五検察審査会に提出しているが、後にその内容は全くの虚偽であったことが判明している。右の件(以下、「虚偽記載」とする。)に関し、「小川発言」には、小川前大臣として指揮権を発動して捜査をすべきとの意向を野田佳彦内閣総理大臣に伝えたところ、野田総理は了承しなかったとのことであるが、右は事実か。
二 野田総理として、小川前大臣による指揮権発動の意向を了承しなかった理由は何か。
三 「政府答弁書」では、前文で触れたように「検察庁法(昭和二十二年法律第六十一号)第十四条の規定により、個別具体的な事件に関する取調べについて、法務大臣は、検事総長以外の個々の検察官を直接指揮することはできず、検事総長のみを指揮することができる。これに対し、個別具体的な事件に関する取調べについて、内閣総理大臣が検察官を直接指揮することができる旨を定めた法令の規定はなく、内閣総理大臣が検察官を直接指揮することはできないと考えている。」との答弁がなされている。内閣総理大臣が検察官を直接指揮することはできない、つまり総理は指揮権を有しておらず、法務大臣のみが右権限を有しているという意味であると理解するが、法務大臣が指揮権を発動することを総理が抑止することは法令上認められるか。
四 「小川発言」の中でも、「虚偽記載」に関し、田代検事が不起訴処分とされる報道が本年五月はじめになされていたことが触れられている。本年六月一日に閣議決定された政府答弁書(内閣衆質一八〇第二六〇号)では「お尋ねは、いずれも、先の答弁書(平成二十四年五月十五日内閣衆質一八〇第二二七号)三から六までについてで述べたとおり、現在継続中の捜査の具体的内容に関わる事柄であるので、答弁を差し控えたい。」との答弁がなされているだけであり、明確な答弁は何もない。「虚偽記載」に関し、田代検事が起訴されるか否かについて、現時点で決定はなされているのか。確認を求める。
五 「小川発言」には、小川前大臣が「虚偽記載」を行った田代検事への処分方針について、法務省、検察庁の担当部署に直接または間接に確認をし、それを受けて野田総理に指揮権発動の是非について相談に行ったとある。法務省、検察庁として、「虚偽記載」を行った田代検事の処分方針について、小川前大臣に説明を行ったという事実はあるか。
六 「小川発言」には、田代検事が「虚偽記載」を行った理由として記憶違いをしたと釈明していることについて、捜査報告書の中身、捜査状況の録音を詳細に見ればそれは違うと誰もが思う旨述べているが、右に対する法務省、検察庁の見解如何。
七 「小川発言」にあるように、「虚偽記載」のみならず、厚生労働省の村木厚子元局長の事件等の発生もあり、検察官、検察庁という組織に対する国民の信頼は地に落ちていると考える。法務省、検察庁として、自身に対する国民の信頼を取り戻すべく、「小川発言」を受け、今後どのような努力をしていくのか説明されたい。
八 滝実新法務大臣として、指揮権を発動し、田代検事を逮捕、起訴し、「虚偽記載」に関して徹底した捜査を行い、事実関係を明らかにして、検察庁への国民の信頼回復に努める考えはあるか。
九 八で、あるのなら、野田総理としてそれを了承する考えはあるか。

 右質問する。



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