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平成二十四年六月十九日提出
質問第三〇一号

使用者の労働委員会救済命令不履行是正に関する質問主意書

提出者  服部良一




使用者の労働委員会救済命令不履行是正に関する質問主意書


 労働委員会の救済命令制度は、「団結権及び団体交渉権の保護を目的」とし、不当労働行為を禁止した「規定の実効性を担保するために設けられたもの」であり、「使用者による組合活動侵害行為によって生じた状態を右命令によって直接是正することにより、正常な労使関係秩序の迅速な回復、確保」を図ろうとするものである(第二鳩タクシー事件、最高裁大法廷一九七七年二月二十三日判決)。
 それ故に、労働委員会の救済命令は行政処分として、命令を受けた使用者は、その命令確定前においても履行の義務を負う。このことは法令に明文の規定があり、政府答弁書(内閣衆質一五六第八六号、平成十五年六月六日)においても、明らかに認められている。
 ところが、この義務に違反して救済命令不履行を続ける使用者が後を絶たない。これは、団結権保障の実効性確保の観点から放置できない問題である。よって、以下、質問する。

一 次の三点につき、最近五年間の状況を各年毎に示されたい。
 1 使用者による労働委員会救済命令不履行件数
 2 裁判所の緊急命令(労働組合法第二十七条の二十)が出されても、使用者が労働委員会命令不履行を続けている事件数
 3 救済命令が確定判決によって支持された場合に、使用者がこれに違反してなお履行しない件数(同法二十八条による罰則対象となるもの)
二 使用者に対して、係争中であっても、労働委員会命令不履行が法令違反であることを周知徹底させるべきであると考えるが、政府の認識を示されたい。また、かつて旧労働省は「労働関係における不当な実力の行使の防止について」(昭和二十九年十一月六日・労働省発労第四一号・各都道府県知事あて労働事務次官通知)、「団結権、団体交渉その他の団体行動権に関する労働教育行政の指針について」(昭和三十二年一月十四日・発労第一号・各都道府県知事あて労働事務次官通知)等を発していたが、「労働委員会命令不履行の防止について」といった通知を発する等の方策を講じるべきでないか。併せて答弁されたい。
三 公益事業(労働関係調整法第八条)である医療事業において労働委員会命令不履行事件が生じた場合、当該不履行は法令違反なのであるから、厚生労働大臣又は都道府県知事は「医療法人の業務若しくは会計が法令……に違反し、又はその運営が著しく適正を欠く」(医療法第六十四条)又はその疑いがある(同第六十三条)場合に該当するものとして、医療法第六十三条又は第六十四条に基づく措置を講じなければならないと理解するが、政府の認識を示されたい。
四 大阪の医療法人南労会では、賃金差別、解雇問題等につき、一九九一年以来二十一年にわたって紛争状態が生じ、使用者による数多くの不当労働行為と救済命令不履行が続いている。差別的な賃金不払いの額は、億円単位に達するという。これは、団結権侵害、労働者の生存権侵害として不当、違法であるのみならず、医療法に定める医療の理念、国の責務に照らしても深刻な事態であり、一医療法人の問題に止まらない重大性を有していると考える。なお、南労会は、救済命令不履行について、「係争中であるから」と弁明しているが、使用者が救済命令を争う場合にも、命令に従った上で争わなければならないことから、このような主張は無意味であり、事態をさらに深刻化させていると考える。そこで、以下、質問する。
 1 政府は当該事案を把握しているものと思うが、このような違法行為に対していかなる対応を行っているのか。
 2 南労会は、緊急命令違反として過料を支払い、さらに、刑罰の対象となる労働組合法第二十八条違反さえ犯している。こうした団結権や生存権の侵害、法秩序の無視という事態を改善するため、政府は医療法に基づく業務の是正等、適切な方策を講ずるべきと考えるが、認識を示されたい。

 右質問する。



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