質問本文情報
平成二十四年六月二十二日提出質問第三一三号
原子力基本法改正等において「我が国の安全保障に資する」との文言が追加されたことに関する質問主意書
提出者 服部良一
原子力基本法改正等において「我が国の安全保障に資する」との文言が追加されたことに関する質問主意書
原子力規制委員会設置法(以下、「設置法」という。)が本年六月二十日に成立したが、同法の目的及び原子力規制委員会の任務に係り「我が国の安全保障に資する」との文言が盛り込まれるとともに、同法附則において原子力基本法並びに核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下、「炉規法」という。)が改正され、それぞれに「我が国の安全保障に資すること」との文言が追加されたことについて、我が国の非核三原則の放棄及び核武装を意図したものではないのか、あるいは拡大解釈の余地を残し、軍事転用に道を開くものではないのかといった懸念が引き起こされている。報道によれば、日本国内のみならず、韓国等海外からも懸念の声が上がっているとのことである。法案提出者の立法意思及び内閣の解釈は参院環境委員会での審議等において表明されているところであるが、改めて内閣としての解釈及び見解を確認するため、以下、質問する。
二 設置法附則第十二条において原子力基本法が改正され、同法第二条(基本方針)に、第二項「前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。」が追加されたが、ここにおいて「我が国の安全保障に資することを目的と」するとはいかなる意義であるのか、内閣の解釈を示されたい。
2 同法第二条第一項では「原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨と」するとされており、今回新設された同条第二項は前掲の通り「前項の安全の確保については」となっていることから、原子力の平和利用の原則は将来にわたりいささかも揺らぐものではなく、今回の法改正により軍事転用の余地が一寸たりとも開かれたものではないと解釈するが、見解を示されたい。
三 今回疑念が引き起こされているのは、設置法附則において「原子力の憲法」と言われる原子力基本法が改正されたという取扱い、及び設置法案が衆院提出と同日にわずか二時間の環境委員会審議を経て通過し、参院においても衆院通過と同日の本会議質疑及びわずか三日間(かつ連続した三日間)の環境委員会での審議を経て成立に至った経過があるためである。原子力基本法という重要な法律の改正については、より慎重な手続きを踏むべきであったのではないか。内閣としても拙速な改正を慎むよう公式、非公式に要請をすべきであったと考えるが、その反省を含め見解を示されたい。
2 今回の原子力基本法改正等が疑念を招いていることを踏まえ、速やかに又は設置法附則第五条(原子力利用における安全の確保に係る事務を所掌する行政組織に関する検討)に基づき改正を行い、原子力平和利用の原則及び非核三原則の堅持を内外に改めて表明する必要があると考えるが、見解はいかがか。
四 設置法第一条においては、法律の目的として「我が国の安全保障に資すること」が挙げられ、同第三条では、原子力規制委員会の任務として「……我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ること」が掲げられている。また、同法附則第五条(原子力利用における安全の確保に係る事務を所掌する行政組織に関する検討)においては、「放射性物質の防護を含む原子力利用における安全の確保に係る事務が我が国の安全保障に関わるものであること等を考慮」するものとされている。ついては、「我が国の安全保障に資する」こと又は「我が国の安全保障に関わるものであること」を掲げたこれらの条文の意義及び解釈を、その根拠とともに示されたい。
五 炉規法第一条の改正により、同法の目的は「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること」となったが、炉規法が「我が国の安全保障に資すること」を目的とすることの意義及び解釈を、その根拠とともに示されたい。また、改正炉規法第一条についても、条文構成上、質問二の2と同様の解釈が成立すると考えるが、あわせて見解を示されたい。
2 同法改正については、軍事転用の懸念に加えて、使用済み核燃料の再処理路線の維持を図ったものではないかとの声も聞かれる。実際、報道によれば、経済産業省幹部が、外国の使用済み核燃料を日本が引き取り再処理することで、岐路に差し掛かっている再処理路線を維持する根拠ができたという旨の発言をしたとも言われている。仮にそのような意図が明示されることなきままに設置法案に潜り込み、又は都合よく解釈される余地が残されているのであれば大きな問題であるが、認識を示されたい。
右質問する。