衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十四年十月三十日提出
質問第一三号

利根川・江戸川有識者会議に関する質問主意書

提出者  三宅雪子




利根川・江戸川有識者会議に関する質問主意書


 本年九月二十五日、十月四日、十六日と、立て続けに国土交通省関東地方整備局が利根川・江戸川有識者会議を開催した。これらの会議を傍聴した市民が目の当りにしたものは、有識者会議の審議が事務局(国土交通省関東地方整備局)の主導で行われ、有識者会議の主体性が大いに損なわれていることであった。審議会の類いは数多くあるが、今回の有識者会議のように、事務局が委員の意見は聞きおくだけでよいと露骨な姿勢を見せるのは、今までほとんど例がないのではないかというのが傍聴した市民の感想である。そして、実りある審議が疎かにされていることにより、策定が予定されている利根川の河川整備計画の内容は事務局の意向だけのものになり、現在及び未来の利根川流域住民の安全を本当に守る計画がつくられるのか、大いに疑問視されている。また、現在議論されているのは利根川・江戸川という本川関係だけであり、支川を含めた利根川水系の直轄区間全体についての議論はどうなるのか、明らかにされておらず、利根川水系全体の河川整備計画策定の先行きは不透明なままである。
 以下、これらの問題について質問する。

一 有識者会議の役割について
 (一) 関東地方整備局河川部長の発言
  十月四日の利根川・江戸川有識者会議で傍聴者の発言を認めるか否かの採決が行われようとしたとき、事務局の総責任者である泊宏・関東地方整備局河川部長は「そのようなことは、事務局が決める」という趣旨の発言を行い、採決を中止させようとした。しかし、そのような事務局主導の根拠は有識者会議の規約には書かれていない。
  規約第九条(雑則)には次のように記されている。
  「この規約に定めるもののほか、会議の運営に関し必要な事項については、委員総数の2分の1以上の同意を得て行うものとする。」
  傍聴者の発言を認めるか否かという、会議の運営に関する事項は、有識者会議の委員が所定の手順を踏んで決めることになっており、河川部長の上記の発言は明らかに規約を無視している。
  このことについて政府の見解を示されたい。
 (二) 事務局の役割
  有識者会議における事務局の役割は規約7条2項で、「事務局は、会議運営に係る庶務を処理する。」と書かれているように、あくまで会議運営に係る庶務である。有識者会議の指示に基づいて、会議運営が円滑に行われるように庶務を担うのが事務局であり、会議の運営を主導することは規約で定められた事務局の役割を超える行為である。
  このことについて政府の見解を示されたい。
 (三) 利根川・江戸川有識者会議の役割
  十月四日の有識者会議で、河川部長は「有識者会議は委員の意見を聞く場」に過ぎないという趣旨の発言をし、それに呼応して、宮村忠座長は、「有識者会議は事務局が委員の意見を聞く場である。個別に委員の意見を聞いてもよいくらいだ。」という趣旨の発言をした。河川部長および宮村座長の発言は、有識者会議の役割と責任を真っ向から否定するものであり、また、議論することの必要性をも否定する宮村座長の発言は座長としての責任が問われる発言である。
  有識者会議や審議会というものは、各委員が意見を述べ、議論を行って認識を深め、そのうえで一定の方向性を示すものであることは社会常識とも言ってよい。利根川・江戸川有識者会議のみがこの社会常識から離れ、意見を聞きおく場とすることが罷り通ってよいはずがない。
  このことについて政府の見解を示されたい。
 (四) 平成九年の河川法改正に関する国会答弁
  河川整備計画の最終的な決定権が河川管理者、利根川水系の場合は関東地方整備局にあることはいうまでもない。しかし、その策定の過程で、学識経験者及び流域住民の意見を聴かなければならないことが河川法で定められ、さらに、平成九年の河川法改正の国会審議において、意見を聞きっぱなしにするのではなく、極力反映しなければならないことは、次のとおり、当時の河川局長の答弁で言明されていることである。
  衆議院建設委員会 一二号 平成九年五月九日
  「〇尾田政府委員 先生御指摘のとおり、言いっ放し、聞きっ放しというのでは全く意味がないというふうに考えておりまして、具体の河川整備計画の案を策定する段階で、十二分に案を策定するために、案の案、原案の案、そういう意味では原案でございますが、これを御提示をいたしまして、それについて御意見をいただく、その上で必要なものについては修正をするという形で考えておりますので、まさにその河川整備計画に関係住民の皆さん方の意向が反映をしていくというふうに考えております。」
  有識者会議の意見を聞くだけでよいとする河川部長は、河川法改正の本旨及びこの国会答弁を軽視するものである。
  このことについて政府の見解を示されたい。
二 有識者会議の運営について
 (一) 有識者会議の強行日程
  九月二十五日、十月四日、十六日と立て続けに、一〇日に一回のペースで利根川・江戸川有識者会議が開かれてきた。十一月も同様なペースで会議の開催が予定されていると聞く。利根川・江戸川有識者会議は常識を超えた強行日程が組まれている。忙しい各委員が資料を事前に読み込んで、会議に臨むためには、一カ月に一回の開催がぎりぎりのところであり、それ以上の開催には無理がある。一般の審議会などではそのような日程が組まれているが、利根川・江戸川有識者会議は異常な強行日程になっている。
  このことに関して次の五点を質問するので、政府の見解を示されたい。
  ア 利根川・江戸川有識者会議が一〇日に一回という常識を超えたペースで開催するのはなぜか、その理由を明らかにされたい。
  イ 常識を超えたペースで開催する理由が利根川の河川整備計画の早期策定にあるならば、その策定の予定時期を明らかにされたい。
  ウ 利根川の河川整備計画の策定までに関東地方整備局が考える手続きの実施予定時期、すなわち、有識者会議の審議終了時期、公聴会の実施時期、パブリックコメントの実施時期を明らかにされたい。
  エ 通常の審議会では前回の会議の議事録を各委員に配付して、各委員が前回の会議の情報を共有した上で会議に臨めるようにしているが、利根川・江戸川有識者会議ではなぜ、委員に対してそのような配慮をしないのか、その理由を明らかにされたい。
  オ 利根川・江戸川有識者会議は常識を超えた強行日程が組まれているため、上述のとおり、各委員が資料を検討する間もなく、会議に臨まざるを得ず、実りある審議を行う上で明らかに支障となっている。利根川・江戸川有識者会議の開催間隔をあけて、実りある審議が行われるように改善する考えはないのか。
 (二) 会議開催の公表時期
  利根川・江戸川有識者会議の開催の期日と場所は、直前まで公表されない。二〜四日前の夕方にようやく開催が公表されるような状態である。
  有識者会議の審議の動向には一般市民も強い関心を持っているのであるから、一般市民が傍聴に極力参加できるように、有識者会議の日程をなるべく早く公表しなければならないはずであるが、関東地方整備局には一般市民は眼中にないようである。
  一般市民が傍聴に極力参加できるように、会議開催の公表時期を現状より早める考えはないのか、政府の見解を示されたい。
 (三) 有識者会議委員への資料送付
  有識者会議の委員には、各委員が会議の配付資料を事前に検討できるように、配付資料を早めに送付するのはごく当然のことである。ところが、九月二十五日の会議では午前の会議であるにもかかわらず、その配付資料を関東地方整備局が委員に発送したのは、二十三日の夕方だということであった。事前に配付資料に目を通すことなく、会議に臨まざるを得なかった委員も多かったと見られる。
  有識者会議委員への資料配付の時期を現状より早める考えはないのか、政府の見解を示されたい。
三 利根川水系全体の河川整備計画の策定について
 (一) 利根川水系における四ブロックの有識者会議の開始時期
  利根川には大きな支川がいくつもあり、それらの支川も含めて、河川整備計画を策定しなければならない。支川と本川は相互に関係しているから、河川整備計画は一体的に策定すべきものである。特に支川の状況が本川に影響するから、本川の河川整備計画を支川のそれより先に策定することは、科学的見地から見てあってはならないことである。
  ところが、現在、開催されているのは利根川と江戸川という本川関係を審議する利根川・江戸川有識者会議のみである。平成八年十一月〜十年五月に行われた利根川水系河川整備計画の策定作業では、利根川水系を利根川・江戸川、鬼怒川・小貝川、霞ケ浦、渡良瀬川、中川・綾瀬川の五つのブロックに分け、本川だけでなく、支川それぞれにも有識者会議を設置した。今回、利根川・江戸川有識者会議以外の四ブロックの有識者会議をそれぞれ、いつ開催するのか、その予定時期を明らかにされたい。
 (二) 全国の一級河川直轄区間の河川整備計画について
  ア 全国の一級河川の直轄区間で河川整備計画が策定されてきている。一級河川の直轄区間で今までに河川整備計画が策定された水系の数、及びそのうち、水系一体ではなく、水系を支川と本川に分離して河川整備計画を策定した河川についてその水系名を明らかにされたい。
  イ 支川と本川に分離して直轄区間の河川整備計画を策定した河川について、各支川、本川のそれぞれの策定時期を明らかにされたい。
  ウ 上記イの答弁を踏まえて、本川の河川整備計画を支川のそれより先に策定した例が一級河川の直轄区間で今まであったかどうかを明らかにされたい。
四 官房長官裁定の条件について
 平成二十三年十二月二十二日、八ッ場ダム本体工事費の予算案計上について民主党が反対の意思を示したことにより、藤村修官房長官は前田武志国交大臣と前原誠司民主党政調会長に対して、本体工事費の予算計上に関して、
 「1 現在作業中の利根川水系に関わる「河川整備計画」を早急に策定し、これに基づき基準点(八斗島)における「河川整備計画相当目標量」を検証する。
  2 ダム検証によって建設中止の判断があったことを踏まえ、ダム建設予定だった地域に対する生活再建の法律を、川辺川ダム建設予定地を一つのモデルとしてとりまとめ、次期通常国会への提出を目指す。」の二条件の遵守と、これらを踏まえて判断することを求める裁定を下した。
  このうち、2の条件については「ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法案」が三月十三日に国会に提出されたが、利根川水系河川整備計画の策定という1の条件が残されている。この条件がクリアされない限り、八ッ場ダム本体工事の着工はなく、実際に平成二十四年度の八ッ場ダム事業の当初予算は本体工事費約一七億円を除く約一一八億円にとどめられている。
  官房長官の裁定が求めているのは、あくまで「利根川水系に関わる河川整備計画」、すなわち、利根川水系全体の直轄区間の河川整備計画の策定である。ところが、現在、開催されているのは上述のとおり、利根川と江戸川という本川関係を審議する利根川・江戸川有識者会議のみである。利根川・江戸川という本川だけの河川整備計画を策定するのでは、官房長官裁定の条件をクリアしたことにならないことは言うまでもない。
  官房長官の裁定に沿って、利根川水系全体の直轄区間の河川整備計画をいつ策定する予定なのか、政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.